76話 巨人族の里〈ギガンテス〉
コロクックの案内により、巨人族の里〈ギガンテス〉に向かっていた。
道中、襲い来る魔物の群れに対し、コロクックがタンクであるボンズよりも前に立ち魔物達の攻撃を一身に受け、盛大に"くっころ"を披露していた事は言うまでもない。
加えてそんなコロクックの横にボンズが並び立ち、攻撃を受けつつ感謝を述べていた事も言うまでもない。
そんなこんながありつつも、俺達は数日を掛けてゴラムに破壊されたチミニチ村に到着した。
「これは酷い……」
ユーリが思わず、そう口にしてしまう程の惨状。
そこに広がっていたのは、屋根ごと上から叩き潰されたような家々。
原型を留めていない惨たらしい死体の山。
これらを見ただけで、ゴラムへの怒りと憎しみが湧き上がって来るのを感じる。
それ程までに破壊された村は凄惨な光景だった。
「何でこんな事するの……? この人達が何かしたの……? ねぇ、セリーヌ。回復魔法で何とかならないの……?」
「ごめんね、リリィ。もう既に亡くなってしまった方を蘇生するのは、私の回復魔法でも出来ないのよ……」
セリーヌはそう言うと申し訳なさそうにして、肩を落とした。
リリィは怒りと悲しみを抱いた表情で、ただ黙ってその惨状を見つめている。
「このチミニチ村にはオイラやコロちゃんがお世話になっていた人も沢山いました……。皆さん、優しくて素敵な人達ばかりだったのに……」
「ボンちゃん……」
ボンズは涙を浮かべ俯いた。
コロクックはそんなボンズを見て悲しそうな表情で遠くから彼の名を呟いた。
そして俺自身もこんな事をやらかしたゴラムに対して、ふつふつと怒りが湧き出していた。
――ここの人達が俺にとって直接的に関係が無かっまにしても、これは余りに酷い。
しかもゴラムにとってこれは、自らの身勝手な欲望に任せた結果だというのだから尚更だ。
セリーヌが言った通り、亡くなった方達を蘇生する術が俺達に無い以上、俺がゴラムにどんな制裁を与えようが、誰も喜ばないし意味が無いかもしれない。
それでもゴラムがやった事は許される事ではないし、俺も許すつもりはない。
人の命は尊いもの。それを奪った報いをゴラムにはしっかり受けてもらうつもりだ。
それにしてもこの空気は少し良くないな。
仲間や身内、知り合いがやられたからと、頭に血が上って敵に突貫するのはさすがに死亡フラグが過ぎる。
そのフラグを今、全員が立ててしまいそうな勢いだ。
何とか場を和ませないと……。
「ねぇーえ。僕ちょっと疲れちゃったぁー。誰か抱っこしてぇー?」
「なっ……!? エル様……!?」
(か、可愛すぎる……!!)
「エルきゅん!? 抱っこ!? 抱っこなの!? 今抱っこって言ったわよね!?」
(ここはスカーレットにも譲らないわよ……!!)
――よしよし、スカーレットとセリーヌは食い付いた。
あとはユーリとボンズ、リリィとコロクックだな。
「うーん。スカーレットとセリーヌは大好きだけど、ちょっと飽きちゃったんだよねー」
「がーーーーん……」
(そんな……! 飽きたなんて、あんまりよエルきゅん……!)
「あ……あぁ……!」
(エル様が今、私の事を大好きと……!? 嬉しい……! 今日は祝杯ね……!)
「アハハハ! 二人とも珍しく断られてやんの! よし! じゃあ今日は俺がおぶってあげよう!」
「いや、ユーリはいいや」
「何でだよ!? 今の流れは俺に決まるやつじゃん!!」
「そんな決まりはないよ?」
「ぐっ…………」
「ユーリさんも断られてるじゃないですか。じゃあオイラが――」
「あぁ、ボンズも大丈夫。気持ちだけ貰っておくよ」
「そ、そんなぁ……」
ユーリとボンズは断られたショックで肩を落とす。
が、先までの雰囲気に比べたらみんな、全然マシな顔付きになった。
すると今度はリリィが近付いて来て、俺の身体をギュッと抱きしめると力一杯持ち上げようと頑張り始めた。
「ふんっ……! はぁ……。ふんっ……! はぁ……。ダメだぁ……リリィにはエルを抱っこ出来ない……」
「大丈夫だよ、リリィ! ありがとう!」
「うん……」
俺がそう声を掛けるとリリィは頷いてしょんぼりしてしまった。可愛い。
そして俺はコロクックに目を向けて口を開いた。
「今日はコロクックに抱っこしてもらいたいなぁー!」
「わ、私か……!? ま、まぁ構わんが……」
そう言うとコロクックはしゃがみこみ、両手を広げて俺を迎え入れた。
コロクックの優しさと、いい香りに包まれて良い気持ち――――だと思ったが、彼女は騎士の様な格好をしているせいか鎧は厚く、そして固い。
女性特有の柔らかみに触れることはなく、ただ冷たく無機質な硬さを感じるのみだった。
「どうだ? 私の抱っこはお気に召したか?」
「いや、最低だよ。硬いし冷たい。ヤダこれ!」
「ぐはぁっ……! くっ……殺せ……!」
コロクックから、漸くくっころが出たところで俺は彼女から離れひとりでに歩き出した。
「やっぱり僕、一人で歩くよ!」
「何だよそれー! エルー!?」
「エル様……! お待ちください!」
「エルきゅん……! 私の事、飽きたなんて言わないでぇ!」
「ふにゃちゃんに力を借りれば、リリィにもエルを抱っこ出来る……?」
「オレがいたらリリィは何でも出来るクリン!」
「何でオイラには特別な理由がないのー!? エル君ー?」
「ふふ。ボンちゃんの仲間は皆変わった奴らだなぁ。面白い」
先までのどんよりとした空気から一転し、みんなは明るい声で俺を呼び後を追って来る。
一瞬にして場の空気を変えてしまうのだから、やはり子供の持つ力は偉大だ。
「可愛いは正義!!」
「…………っ!!」
(きゅん♡)
「…………っ!!」
(何それやだ、可愛い……)
先を歩く俺にいち早く追い付いたスカーレットとセリーヌは俺の言葉を聞き、口に手を当て悶えていた。
その後、他の面々も追い付き改めて全員でギガンテスへと向かった。
◇
ギガンテスへと到着した俺達は、真っ先に目に入った粉々に破壊された大きな門に驚愕する。
「これ……もしかして大きな門だったりする?」
「はい、ここには以前、巨人族でもくぐれる程の大きな門がありました……」
ユーリの問い掛けにボンズは唖然としながら答えた。
「それが壊されてるって訳ね……」
「魔法を使った形跡は無いから素手で壊したってことだね……」
そしてセリーヌは落ちている破片を拾い見つめながら、そう呟いた。
リリィは落ちている破片から魔力を感じない事から、この門は素手で破壊されたと結論付ける。
「いやはや、ここまでとは……。里の皆は無事なのか……?」
コロクックはそう言いながら里の中心部へと目を向ける。
するとそこへドシンドシンと音を立て、一人の巨人族の年老いた男が姿を現した。
「おーおー。誰かと思えばコロクックとボンズじゃねぇべかぁ」
「「じっちゃん!!」」
ボンズとコロクックの二人はその老人を見るやいなや、声を揃えてそう言った。
「何じゃあ? 二人揃って帰って来おって? 何かあったのかの?」
「え……? いや、私達は里が魔族に襲われてるって聞いたから……!」
「そうだよ! オイラすごく心配したんだよ!? 自慢の門もこんなになっちゃってるし……!」
「あぁーあー。その事か。確かに数日前、魔族の男が一人里へ訪ねて来たのう」
ボンズとコロクックが慌てた様子で心配していた事を伝えると、老人はまるではるか昔の事のようにのんびりとした雰囲気でそう話す。
――何だ? ゴラムが襲いに来たにしてはかなり呑気な爺さんだな?
門もこんなにされているのに、怒るどころか慌てた様子もない。
ここで一体何があった……?
「何でそんなに呑気な事、言ってるのさ!? 魔人が襲って来たんでしょう!?」
「うーん、でものう、ボンズ。この、のんびりした空気感がワシら巨人族の里のペースじゃからのう」
「そうではなくて……じっちゃん。その襲ってきた魔人。そいつは一体どうなったのだ!?」
「ほっほっほう。あんなチビ助など、ウチの若い衆が一捻りじゃわい。今頃再戦の為にその辺の山で修行しとるんじゃないか?」
「「は……?」」
何とも拍子抜け。
ゴラムは一度、巨人族に敗れ、山で修行中とのこと。
耳をよくすませば、遠くの山の方から落雷にも似た大きな音が聞こえる。
これが老人の言う、ゴラムの修行の音なのだろう。
その話を聞きユーリ達はホッと胸を撫で下ろし、その場に座り込んだ。
俺は五芒星の一角ゴラムを、巨人族達が一度倒したという事実に若干引いていた。
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