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転生ショタ魔王、世界平和の為に家出する〜チートを持ったお人好しによる世直し旅〜  作者: 青 王(あおきんぐ)
第五章 ブリジア ギガンテス編

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70話 聖女の奇跡


 リリィのペットとして俺達の旅に同行する事となったふにゃ丸。

 俺は新たな悩みの種が増えた事に頭を抱えつつも、スカーレットを叩き起こしみんなで街へと戻る事に。


 道中、スカーレットに諸々の事情を説明したが、『本当に大丈夫なんでしょうか?』と怪訝な表情を浮かべていたが、根気強く説明して何とか理解してくれたようだ。


 ――ていうか、何で俺がふにゃ丸の為にここまでしなくちゃならんのだ?

 ふにゃ丸が自分で説明すればいいだろうが。


 とまぁ心の中でそんな悪態をついていると、気が付けば街まで戻って来ていた。


 ◇


 俺達が街へ到着すると、騒ぎは少し落ち着いてはきていたが、まだ完全に元通りとはなっていない様子だった。


 それもそのはず、温泉を綺麗に戻した事で新しく被害に遭う人は出なくなるが、既に何らかの症状が発症してしまった人達には何の意味も無い。


 そしてどうやらこの世界。

 医療が発達していないのか、症状が出ている人達が道端のあちらこちらで横になっている。


 ――病院とかないのか……?

 このまま外にずっといたら治るものも治らないんじゃ……?


「これは中々酷い状況ね。興奮してきたわ……!」


 ――セリーヌ、やめなさい?

 ドSも行き過ぎると反感買うからな?

 これを機に少しは自重する事を覚えて欲しいものだ。

 

「こんなにも沢山苦しんでいる人がいるなんて。おい、ふにゃ丸! 君の親のせいなんだからな……!!」


 ――ユーリよ、残念ながらこれは親ではなくふにゃ丸のせいなんだ。

 騙してすまない……。


「オレは知らないクリン! ねー? リリィー?」


「そうだよ……。ふにゃちゃんは何も悪くない……!」


 ――お前ら……。

 この二人が結束すると中々面倒くさそうだな。


「あぁ……! あんな小さな子供まで……! 可哀想に……」


 ――お前ほんと良い奴だなボンズ……!

 ボンズだけはずっとそのままで――――あ、この間新しい扉を開けたばかりだったか。


「ですがこの状況……。さすがに何とかしないといけませんね。このままでは貴重な労働りょ――――コホン。尊い人間の命が持ちませんよ」


 ――言い直した?

 今、言い直したよね!?

 何かサラッと怖い事言おうとしてなかった!?

 労働が何とかって何を言おうとしたの!?


 ※ スカーレットはエルの真の目的は『人間を捕虜とし、魔族の為に働く労働力として使うつもり。だから人間を無闇に殺したりしない』と曲解している。

 そしてエルもスカーレットは自分の真意に気付いてくれていると勘違いしている。


「スカーレットの言う通りだよ! このままじゃみんな死んじゃうよ……!」

 

「そうね。エルきゅんの言う通り、あまり悠長な事は言っていられないわね。じゃあ私が人肌脱ぎますか……!」


 ――おぉ! 珍しくスカーレットが頼まれもせずに人を回復しようとしている……!

 どういう風の吹き回しだ?

 そして人肌脱ぐってなんかエロいよね、響きが。


「さすがは勇者パーティーのヒーラーだな! 頼むぜ、セリーヌ!」


「任せなさい! ――――あ、そこのあなた。回復してあげましょうか?」


 ユーリの声に威勢よく返事をしたセリーヌは、早速道端に倒れて苦しそうにしている男性に声を掛けた。

 

「う……うぅ……あ……ぁあ」


 男性は苦しそうに悶えながらも、必死に何かを訴えようとしている。


「ハッキリ喋りなさいっ!」


 そしてセリーヌはそう言うと、そんな男性の頬を強めに平手打ちした。


 ――今、ビンタした!?

 何を考えているだ、あのドS聖女は!?

 苦しそうに悶える人に向かって何たる仕打ちか……。

 恐ろしい女め……。もはやコイツが魔王なのではないか……?


「せ、セリーヌさん……? さすがに平手打ちはどうかと……。この人、だいぶ苦しんでいる様ですし……」


「ボンズは黙ってなさい! ここは回復術師の管轄よ!」


 ――あんなビンタをお見舞いしておきながら、何故セリーヌはあそこまでプロ意識を持てるんだ……?

 ダメだ……全くもって理解出来ない。


「それでどうなのよ!? 回復して欲しいの!? して欲しくないの!? ハッキリしなさい!!」


「うぅ……し……て……くれ……」


「はぁ……?」


 ――はぁ……? じゃねぇわ!!

 頑張って声を出したんだから、さっさと回復してやれよ!


「セリーヌ。ふざけてないで早くしてあげなよ」


「……そうね。わかったわ。【キュアヒール】!」


 俺の心の声が届いたのか、はたまたセリーヌの自重しない癖に怒りを覚えたのか、ユーリはいつになく真剣な表情で彼女にそう言った。


 セリーヌはそんなユーリの表情を見て我に返ったのか、大人しく状態異常を治す【キュアヒール】をかけた。


 すると先まで苦しんでいた男性の顔色はみるみる良くなり、遂には自らの足で立ち上がって見せた。


「ありがとうございます……! あなたのお陰で身体が楽になりました!」


「ど、どういたしましてですわ……! さぁ! 次の患者の元へ行くわよ!」


 照れ隠しなのか何なのか、セリーヌはそう言い残し颯爽と次の患者の元へ駆け出して行った。


「へへ。何だかんだでセリーヌは良い奴だな。よし、俺達もセリーヌの手伝いをするぞ!」


 果たして本当にそうだろうか。

 そんな事を考えていた俺の性格は酷く歪んでいるのかもしれない。


 そしてユーリとボンズはセリーヌの後を追い、患者の汗を拭いてやる等の手伝いを始めた。


「リリィも手伝いに行った方がいい……?」


「うーん。でもリリィはユーリ達みたいに力もないし、セリーヌみたいに回復魔法も使えないからなぁ。まぁ僕もなんだけど……」


「リリィは回復魔法、使えるクリンよ!」


「「へ……?」」


 ふにゃ丸は突然妙な事を言い始めた。


 ――そんなはずはない。

 アイリスとの修行でリリィが使える魔法の属性は、聖と闇を除いた六属性のはず。

 それに聖属性の魔法はユーリの様な勇者や、セリーヌの様な特殊な訓練を積んだヒーラーにしか使えないと前にスカーレットから聞かされた。

 ふにゃ丸は一体、何を根拠にそんな事を言っているんだ……?


「ふにゃちゃん……? リリィが回復魔法を使えるってどういう事……? リリィは聖属性の適性は無いよ……?」


「リリィにはオレがいるクリン! オレは全属性使えるクリン! リリィの魔力量とオレの適性があれば無敵クリン! ――――お、リリィはいい杖を持ってるクリンね! ちょっと借りるクリン!」


 そう言うとふにゃ丸は徐にリリィの杖の先端についている丸い玉に飛び移った。


「何するの……?」


「リリィ、そのまま杖に魔力を流し込むクリン!」


「……? わかった……」


 そしてリリィは言われるがまま、杖に魔力を流し込む。

 するとふにゃ丸は杖の丸い玉に身体を飲み込ませてしまった。


「ふ、ふにゃちゃん!?」


『大丈夫クリン。杖と一体化しただけクリン。後でちゃんと戻れるから心配いらないクリン。――さぁリリィ、特大威力で【キュアヒール】を唱えるクリン!』


「わかった……! 【キュアヒール】……!!」


 リリィが【キュアヒール】を唱えると、杖の先端から緑色の光が空高く放たれ、その後、まるで結界のような膜で街全体を覆った。


 すると街の中にいる人達の症状がみるみる内に緩和されていき、遂には毒の効果を全て打ち消した。


「な? オレとリリィが組めば無敵クリン!」


「す、すごい……。今の全部リリィが……?」


「そうクリン! でも今のは内緒にしておいた方がいいクリン! 全属性魔法が使える人間なんて聞いた事ないクリンから、バレたら大変な事になるかもしれないクリン」


「わ、わかった……! リリィ、黙ってる……!」


 ――これはとんでもないな、おい。

 なるほど、つまりはこういう事か。

 ふにゃ丸がリリィの杖に乗り移る事でリリィの半端ない魔力量とふにゃ丸の魔法適正を合わせる事が出来るって事か。


 それにしてもえげつない二人を繋げてしまったかもそらないな。

 今回は回復魔法だったから良いものの、これが攻撃魔法ならとんでもない事になるんじゃ……。


 

 その後、リリィとふにゃ丸のおかげで街の人達の毒による症状はきれいさっぱり無くなり街に平和が戻った。

 しかしリリィ達はその功績を自分のものにしなかった為、街の人達は聖女セリーヌによる奇跡だと曲解した。


 そしてそれから数日の間、セリーヌは街の人達から"街を救った聖女"として崇められ、それから数年後ブリジアの中心に彼女の銅像が建てられる事になるのだが、それもまた別のお話――――




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