69話 ペット
俺がふにゃ丸に旅の同行を許可すると、そのぷにぷには、柔らかボディを揺らして大いに喜んでいた。
「して、ふにゃ丸よ。旅に同行するならいくつか条件がある」
「クリン? 条件とは何だクリン?」
俺はふにゃ丸の前に指を二本立てて出し、説明を始めた。
「まず一つ。俺の事は魔王ではなくエルと呼べ」
「何でだクリン? オレがせっかく認めてやったのに何でそれを拒むクリン?」
「貴様に認められずとも俺は魔王なのだが、そんな事より。そっちの方が都合が良いからだ」
「そうかクリン! わかったクリン! エルクリン!」
――エルクリンって何だよ。
あるかどうかわからないけど、そのままネット検索したら出てきそうな名前だな……。
掃除系の何かで……。
「うぬ。では次。――――人間に危害を加えるな」
「そんな事かクリン。全然問題ないクリン!」
――何ともまぁあっさりと。
お前さっきまで人間に危害を加えまくってたじゃねーか……。
ユーリ達は何の為に傷付いたんだか。
「わかっているのなら良い。ならばこの二つは必ず守れよ? もしこの約束を反故すれば、貴様を薄く伸ばして細く刻んでラーメンにしてやるからな」
「ら、らーめん……? 何だそれクリン?」
「ラーメンを知らんとは人生半分以上損しておるな。ワーッハハハ!」
「興味無いクリン。オレはそもそもスライムだから人生じゃないし、オレのスライム生の半分なら3000年以上は無駄にしている事になるクリン。そんなわけないクリン」
俺が高笑いをするとふにゃ丸は冷たい視線を向けながら声色を一定に保ち、淡々と言い返してきた。
「ふんっ。ラーメンを知らんからと言って負け惜しみを言いよって。まぁ俺は何度も食った事があるがな!」
――あーやべぇ。ラーメン食いたくなって来た。
今度ユーリに作ってもらおう。
てかこの世界にあるものでラーメンって作れるのか?
「クリン……!? ら、らーめんとは食い物なのかクリン!?」
「何を今更。まぁ貴様はラーメンに興味がないようだし、この話はこのくらいにしておこうか」
「嘘です、嘘だクリン! エル! オレもラーメン食いたいクリン!!」
「ワーッハハハ! 駄目だ」
ぷにゅぷにゅと体を揺らすふにゃ丸に対し、大人気なく意地悪を言ってやる俺。
日頃のストレスがここで少し晴れたような気がする。
ありがとう、ふにゃ丸。悪いとは思っていない。
「さて、そんな事より。貴様、クリーンスライムキングに進化した事で全属性の魔力適正が覚醒したようだが、回復魔法は使えるか?」
「うぅ……多分使えるけどクリン?」
「そうか。ならユーリ達を回復してやってくれ。スカーレットには聖属性ではなく別の方法で頼む」
「わかったクリン……」
そう言うとふにゃ丸は少ししょんぼりしながらもユーリ達に回復魔法をかけた。
そしてスカーレットには闇属性の回復魔法、所謂魔族用をかけた。
「これでいいのかクリン?」
「あぁご苦労。今度そこのユーリにラーメンを作ってもらおうな」
「…………っ!! ラーメンクリン!?」
――だからラーメンクリンとは何ぞや。
語尾のせいで言葉の意味がおかしくなってくるぞ。
絶対にマジックの後にはつけるなよ、ややこしい事になるから。
そうこうしていると、ユーリ達がゆっくりと目を覚まし始めた。
「ん……。ここは……?」
――馬鹿が。そこは『知らない天井だ……』だろうが。
気絶して目を覚ました時はソレを言っていれば良いんだよ。
「うぅん……。私、いつの間にか気絶しちゃってたみたい……」
――やけに色っぽく起きるなセリーヌは。
俺じゃなかったら危なかったぞ……。
何がだよってツッコミはいらんからな。
「ふわぁ……。みんなおはよう……。あれぇ、リリィの傷が治ってる……?」
リリィはそう言いながら自分の身体をぺたぺたと触る。
するとユーリとセリーヌもそれに気付き、自分の身体を確認し始めた。
「本当だ……! 傷がない! セリーヌがしてくれたのか?」
「私じゃないわ! 私もあの爆発を――――って、あっ!! そうよ、私達。あの大きなスライムと戦闘中だったじゃない……!!」
セリーヌがそう言うと三人は飛び起きて戦闘態勢をとった。
しかし目の前にいたのは、無色透明でとても愛くるしいスライムと俺だった。
そしてボンズは未だ眠ったままだったが、セリーヌがいつから履いていたのか、先が尖ったヒールで彼を蹴飛ばした。
「いつまで寝てるの!? 早く起きなさいボンズ!!」
「わわっ……!! ありがとうございまーーす!!!」
ボンズは感謝の言葉を叫びながら飛び起きた。
――ボンズよ……。女性に蹴られてお礼を言ったらもうそれは、そっち側の世界の住人だぞ……。
「それよりあのデカいスライムはどこだ!? 何かぼんぼん言うヤツ!」
「確かに見当たらないわね……? スカーレットが倒したのかしら……?」
「え、でもスカーレットはまだ気絶してるよ……?」
リリィはそう言いながらスカーレットを指さした。
「ん〜エル様〜、そこはダメですぅ〜……」
――どんな夢見てんだよ!?
頼むからその夢、俺にも"三人称視点"で見せてくれ……!!
「スライムといえば……そこの小さいのはスライムじゃないの?」
俺の妄想をお構い無しにボンズは目の前にいるふにゃ丸を指さした。
「おい、そこのデカいの!! 小さいのとは何だ! 失礼クリンなー!」
ふにゃ丸は小さいのと言われたのが余程ムカついたのだろう。
怒りを露にして身体をポムポム跳ねさせている。
――おいおい、とうとうクリーナーとか言い出したぞ。
語尾だけじゃなかったのかよ?
やめろよ、マジで、アレだけは……。
「え、すいません……。じゃああなたがさっきの……?」
――謝るなよボンズ……。
相手は魔物、しかも旧四天王で、お前は勇者パーティーの一員なんだから。
そんな事してると終い目に人類滅ぶぞバカタレ。
するとふにゃ丸はしおらしい態度になったボンズに気分が良くなったのか、少しだけ身体が大きくなった。
それを見ていたユーリはすぐさま口を開く。
「……っ? 今一瞬、身体が大きくならなかったか!?」
「え、まさか……!? そんなわけ……。だ、だって語尾が――色も見た目も全然違うじゃない!?」
ユーリの言葉に信じられないと言った様子で返すセリーヌ。
「……クリン?」
ユーリとセリーヌの反応など意にも介さず、ふにゃ丸はつぶらな瞳でリリィを見つめた。
「へへへ……。可愛い……。リリィ、この子をペットにする……」
リリィはそんなふにゃ丸にデレデレだった。
このままではリリィがふにゃ丸をお持ち帰りぃー! しそうな勢いだったが、それをセリーヌが一旦制止する。
「ちょっと待ってリリィ……! 相手は私達を一瞬で倒した、あの大きなスライムかもしれないのよ!?」
「そんなのどうでもいい……。可愛いからペットにするの……!」
「リリィ? どうでも良くはないと思うな? オイラはあんな化け物が近くにいたら流石に怖いんだけど……」
「大丈夫……。リリィがちゃんと躾するし、お世話もするもん……!」
リリィはかなり強情だった。
セリーヌとボンズの話に一切聞く耳を持たず、ふにゃ丸をペットにするの一点張りである。
「ねぇスライムさん。もう一度さっきみたいに身体を大きくして見せてよ……」
「いいぞクリン! 見てろクリン!」
そう言うとふにゃ丸はぐんぐん身体を膨らませていき、一瞬で三メートル程の大きさになった。
「「「あ……あぁ……!」」」
先の恐怖を思い出したのか、ユーリとセリーヌとボンズの三人は口を大きく開けて固まってしまった。
「すごーい……! ねね、どうやってやったの?」
しかしリリィは何故か物凄く嬉しそうな表情を浮かべ興奮していた。
「ふふんっ。それは――――」
ふにゃ丸は褒められたからか、さぞ得意気な顔で口を開いた。
――まずいっ!!
この流れはアレを言うかもしれない……!
やめるんだ、ふにゃ丸……!!
「――――それは、マジッククリン!!」
しかし俺の心の声は届かず、ふにゃ丸はとうとう問題発言をしてしまった。
――言いやがった……。
マジッククリン。まぁギリセーフか。いや、アウトか……。
それにしてもお風呂用なのかトイレ用なのか気になる所だな。
そんな事より話がかなり脱線しているし、このままでは埒が明かないな。
仕方ない……。ここは俺が適当に話を作るか。
そして俺は頭をフル回転させ、適当な言い訳を考えそれをみんなに話し始めた。
「僕ずっと見てたから知ってるよ! さっきの大きなスライムは爆発して消えちゃって、その後残ったのはそのクリーンスライムだけだったよ!」
「そうなの? エルきゅん……」
俺がそう言うとセリーヌは怪訝な表情でふにゃ丸を見つめる。
するとふにゃ丸は徐に口を開いた。
「違うクリン! オレはクリーンキン――ぐふぅっ……!?」
ふにゃ丸が余計な事を口走りそうだったから俺はソレを手で押し潰した。
みんなはその様子に驚いていたが、俺は満面の笑みで話を続けた。
「で、さっき聞いたんだけど、この子はふにゃ丸っていって害は無いみたいなんだ! ね? そうでしょ、ふにゃ丸?」
俺はそう言うと地面に張り付いてペタンコになっているふにゃ丸を指でつまみ上げる。
「ふ、ふにゃあ……。そうクリン……。オレは悪いスライムじゃないクリン……」
「うーん。エルがそう言うなら……まぁいいか」
「私もエルきゅんを信じるわ! エルきゅんの言う事は全て正しいのよ!」
「えぇ……。みんながそう言うならオイラもそれでいいですけど……ちょっと怖いな……」
セリーヌの謎の理論はおいといて、とりあえずは上手くまとまったようだ。
「え……! いいの……!? やったぁ……! これからよろしくね……! ふにゃ丸……!」
「ふにゃあ……。よろしくクリン……」
こうして新たな仲間ふにゃ丸が旅に同行することになった。
このふにゃ丸のせいでリリィの魔法は更に威力を増す事になるのだが、それはまだ先のお話――――
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