68話 進化
ふにゃ丸の全力の攻撃を容易に凌いだ俺は、奴の本体の居場所を特定する為、言霊で【探索】を展開した。
そして瞬時に頭の中の地図にふにゃ丸本体の居場所を特定する。
「ふっ。そんな所に隠れていたのか……。よりにもよって俺の一番大切な所へ――――【瞬間移動】……!」
俺はそう呟くとふにゃ丸の居場所――スカーレットの元へ【瞬間移動】で飛んだ。
そしてうつ伏せで倒れているスカーレットの身体を起こし、胸元へ手を突っ込み、ふわふわの谷間に挟まれた奴を掴み引っ張り出した。
「ふ、ふぎゃぁっ!?」
「貴様……"俺の"谷間で息をしていたな……?」
「お、オレはただこの女から魔族の気配がしたから……それで……!」
「問答無用!! この谷間で息をしていいのは俺だけだ!!!」
ふにゃ丸を握る俺の手は怒りのあまり段々と力を増していく。
そしてそのままコイツを握り潰そうかと、加える力を強くしていくとスカーレットが目を覚まし口を開いた。
「エ……エル様……。殺しては……なりません……!」
「スカーレット……!?」
俺は片手でふにゃ丸を握ったまま、スカーレットに目をやった。
「私は大丈夫です……。それに、恐らくユーリ達も無事です。ですから……エル様が、その手を……綺麗な"おてて"を汚す必要はないのです……」
スカーレットは俺に息も絶え絶えにそう訴え掛けてきた。
――綺麗な"おてて"って……。
どうやら普段の拗らせた癖を出せるくらいには無事のようだな……。
まったく、心配させやがって。
そして俺は我に返り、ふにゃ丸を握る手を逃がさない程度に緩めた。
「ふ、ふにゃあ……」
「甘えた声を出すな。俺は貴様を許してはいない。殺さないと決めただけだ。スカーレットに感謝しろ……?」
「ふ、ふざけるなガキが……お飾りの魔王が……!!」
「俺に適わないと知って尚、その様な減らず口を叩くか。ふん、まぁ良い。貴様へのお仕置はこれからだ。死なない程度にわからせてやる。だから死ぬなよ……?」
「ふ、ふにゃあ……! や、やめろォ……!」
情けない声を発しながら俺の手の中でふにゃふにゃ、ぷにぷにと動き回るふにゃ丸。
この状態で何故、俺に攻撃を仕掛けて来ないのか。その理由は恐らく、今掴んでいるコレが恐らくふにゃ丸の本体で何かしらのアクションを行えば自らに影響が出るからだろう。
兎にも角にも俺の言った通り、俺が言霊を発した時点で未来は確定していたのだ。
ふにゃ丸がどんな悪あがきをしようとも、俺の勝利は揺るがなかった。
「さて、どんなお仕置が望みだ? 言ってみろ?」
「ふ、ふにゅぅ……! お前みたいなガキがいきがってんじゃねーぼん!! 次は必ず毒漬けにしてやるぼん!!」
「そうか、それは怖いなぁ。じゃあもういっその事、貴様の身体から毒を全部抜いてやろうか」
「は……っ!? そんなの出来るわけないぼん――――ふぎゃあっ!?」
俺はそう言うと、雑巾絞りの要領でふにゃ丸を両手で捻る。
すると捻れたふにゃ丸の身体から禍々しい色の液体がドバドバと流出し始めた。
「うわっ……凄い量の毒だな。これが体内にあって腹下したりしないのか?」
「エル様……スライムとは本来雑食です……。腹下しなど有り得ないかと……」
「そ、そうか。ていうかスカーレット、傷が酷いんだから余り喋るな。そこでゆっくりしてろ。もうすぐコイツの毒も全て抜ける」
「はい……ありがとう……ございます――――」
そう言うとスカーレットは気を失う様に眠り始めた。
それからも暫く俺はふにゃ丸を絞り続けた。
すると段々、流れ出る毒の量が減っていき最後には綺麗で透明な雫がポタッと落ちてその後、何も出なくなった。
「ふぅ……まぁこんなところか。で、どうだ? 毒を全部抜かれた感想は?」
俺が声を掛け、手を開いてやると俺の手の平にちょこんと乗ったふにゃ丸は口を開いた。
「何だか清々しい気分だクリン! 心が洗われたクリン! 何であんな事をしちゃったのか、今では全然わからないクリン!」
「…………は?」
先まで暴言を吐き散らし、温泉を毒で汚染し、ユーリ達を爆発で傷付けた水色ボディのふてぶてしい顔をしたスライムは、体内の毒を全て排出した事で綺麗な透明の身体になり、心までもが美しく穢れのないものに変わっていた。
「貴様……キャラが変わりすぎではないか……? 語尾も"ぼん"から"クリン"に変わっているし……」
「そんな事ないクリン! オレは昔からこんな感じクリン!」
「嘘つけえッ!!」
俺はそう言うと【鑑定眼】を発現させ、ふにゃ丸を見た。
すると俺の目に映るふにゃ丸の横に――――
名前 ふにゃ丸
年齢 6127歳
性別 男
種族 魔族スライム種
職業 スライム長、旧四天王
魔法適性
火 5000
水 5000
氷 5000
雷 5000
風 5000
土 5000
聖 5000
闇 5000
固有スキル 【スライムの王】全スライムのスキルを使用する事が出来る。
その他特記事項 身体から毒素が抜け切った事により、個体『スライムキング』から個体『クリーンスライムキング』へと進化。及び性格の軟化、全属性魔法適正が覚醒。
――――と浮かび上がった。
「とんでもねぇな……おい」
「クリン……?」
俺がそう言うと手のひらで怪訝な表情を浮かべるふにゃ丸。
「貴様はどうやらクリーンスライムキングとやらに進化したらしいぞ?」
「本当クリン!? 嬉しいクリン! 魔王様のおかげクリン! ありがとうクリン!」
ふにゃ丸は手のひらサイズの体を伸び縮みさせて喜びを必死に表現していた。
――ぐっ……可愛いじゃないか……。
さっきまで俺を本気で殺そうとしていたくせに、何なんだこの変わりようは。
こんなの相手に本気で怒ってたら俺が悪者みたいじゃないか……。
「やめだやめ! もう貴様に怒る気も失せたわ。それはそうと、クリーンスライムキングに進化した貴様に一つ頼みたい事があるのだが?」
「何クリン? オレに出来る事なら何でもするクリン!」
「ぐっ……調子狂うな……。じゃあその貴様が毒で汚染した温泉。それを綺麗にしろ」
「お安い御用だクリン! 任せるクリン!」
そう言うとふにゃ丸は俺の手の平からぴょんっと源泉の溜まりに飛び込んだ。
その後暫くしてひょこっと水面からふにゃ丸が顔を出したと思えば、途端に薄汚れていた源泉がみるみるうちに元の色へと戻っていく。
「クリンっクリンクリンクリーン!」
それからもふにゃ丸は妙ちくりんな歌を歌いながら源泉の溜まりをスイスイと泳ぎ回っていた。
「終わったクリン! これで街中の温泉は綺麗に元通りクリン!」
「そ、そうか。ご苦労だったな」
「どういたしましてクリン!」
俺が労いの言葉をかけてやるとふにゃ丸は嬉しそうに返事をし、ニコニコと満面の笑みを浮かべていた。
――コイツ、自分で汚した温泉を自分で綺麗にして笑ってやがる……。
一体、何がしたかったんだ……。
「それで、貴様はこれからどうするのだ? よもや、まだ俺の首を取ろうなどと考えてはおるまいな?」
「そんな事しないクリン! オレは争いが大嫌いクリン! これからは世の為、魔王様の為に働くクリン!」
「凄い心の入れ替えようだな……。まぁ良い。で? 具体的にはどうやって俺の為に働くつもりだ?」
俺がそう問うと、ふにゃ丸は源泉の溜まりから出て俺の手の平に戻った。
そして笑顔で口を開いた。
「オレは魔王様の旅について行くクリン! 魔王様の目的はわからないけど、魔王様について行けばきっと楽しいクリン! そんな気がするクリン!」
「えぇ……」
「そこ、露骨に嫌な顔しないクリン! さっきオレをペットにしたいとか抜かしていた魔女っ子がいたクリン! 手始めにそいつのペットとして旅に同行するクリン!」
「はぁ……。もう好きにしろクリン……」
俺がふにゃ丸の言う事を許可してやると、ふにゃ丸は俺の手の平の上でぽにょぽにょと跳ねて喜んでいた。
また面倒事が増えた――と、俺はため息をつきながらこめかみを押さえた。
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