66話 四天王ふにゃ丸
スカーレットからふにゃ丸の話を聞き、盛大にフラグを立てた一時間後。
旅館の女将に場所を聞いて、街の外れに位置する岩場、そこにある源泉までやって来た俺達の前に――――――今、一匹のスライムがいる。
「何しに来やがった、人間共め! 今すぐオレの前から消えるぼん!」
そしてそのスライムは当然の様に水色のボディに金色の王冠を被っていた。
完全にスカーレットが先程言っていたスライム種の長、ふにゃ丸ご本人であった。
――はい、フラグ回収ありがとうございます……!!!
クソがァァァ……!!
「お前こそ何をしてるんだ! そこは源泉のはずだぞ!?」
「お前らみたいな弱っちい人間には関係ないぼん! さっさとどっか行けぼん!」
ユーリは勇ましくそう言い放つが、ふにゃ丸はそれには一切答えず淡々と言葉を並べた。
「言葉を話すスライムって珍しいわね……。何か凄く違和感があるわ……」
「確かに……。ていうかオイラ達、話す魔物と出会ったの初めてですよ……」
セリーヌとボンズはふにゃ丸を見て気味悪そうに眉をひそめていた。
――そうか。今まで魔人は俺がこっそり片付けていたから、みんなは魔人は疎か、話す魔物とすら出会った事がないのか。
そりゃあセリーヌもボンズもそんな反応になるよな。
まぁ俺を含め、スカーレットにアイリス、ケシカとランナとシギサも魔人なんだけどな。
しかしそんな中、リリィの反応は他の面々と少し違っていた。
「ふふふ……あの子可愛い……」
――可愛い?
このふてぶてしい顔をして、偉そうに話すこのスライムが?
どうかしている……。これが可愛いなら俺の方が百倍可愛いだろ。
自分で言うのもなんだけど……。
「可愛いだと……!? お前今オレの事を可愛いと言ったのかぼん!? ナメるなぼんーー!!!」
そう言うと突然怒り出したふにゃ丸は身体をどんどんと膨らませていき、あろうことか縦横五メートル程の巨大スライムに変化した。
それを見たリリィは――――
「ふふっ……。太った……やっぱ可愛い……」
――何やら御満悦だった。
「リリィ、そんな事言ってる場合じゃないかもしれないぞ? アイツなんか怒ってるしこの後何してくるかわからないぞ……!」
ユーリにしては珍しく勘が働き、聖剣を抜き戦闘態勢に入った。
「出会ってしまったものは仕方ないわ。私達でカタをつけましょう。恐らくこのスライムが温泉を汚した犯人よ……!」
「そうですね……。ちょっぴり怖いですがオイラも頑張りますっ……!」
セリーヌとボンズもユーリに習って戦闘態勢に入る。
しかしリリィは駄々をこね始める。
「嫌だ……! あのスライムは私のペットにする……! だからみんな攻撃しないで……!!」
「何言ってるのよリリィ? そんなの出来るわけないでしょう? 相手は魔物、しかも言葉を話す上位の魔物よ?」
「そうだよ、リリィ。オイラもそれはやめた方がいいと思う……」
「リリィには悪いけど、コイツは俺達で倒さないと駄目だ。コイツのせいでブリジアの人達が苦しんでるんだ」
「そう……だよね……。私達は勇者パーティーだもんね……。魔物を倒すのが役目……うん……!」
みんなの説得によりリリィは目の色を変え杖を構えた。
全員がやる気になったところで俺はスカーレットに問い掛ける。
「なぁスカーレットよ。ユーリ達はふにゃ丸に勝てると思うか?」
「…………無理ですね」
「だよなぁ。でも少しくらい様子見してもいいよな?」
「……正直、そんな余裕はないかと」
「そ、そうか……」
――少し様子見をしてユーリ達の修行の成果が上位の魔物にどれ程通用するのか確認しておきたかったけど、相手がちょっと悪かったか。
なら、俺も少し手を貸して――――
俺がそう思っていると、ユーリ達は勝手に戦闘を開始してしまった。
「私は後方支援するわ。だからボンズは前へ出て奴の注意をひいて! ユーリは隙を見て攻撃、リリィは上級魔法の詠唱を始めておいて」
「「「わかった!!!」」」
そしてセリーヌの指示の元、四人は動き出す。
「スライムさーん! こっち! こっちですよー! ありがとうございまーーす!」
ボンズはいつものように【挑発】スキルを使いながら、感謝の言葉を叫んだ。
しかしふにゃ丸は微動だにせず、何も言葉を発しない。
「ん……? 何だ? 隙だらけじゃないか。セリーヌは隙を見て攻撃って言ってたし、あんなに大きかったらどこを狙っても当たるよなっ! 【斬撃 エクスカリバー】!!!」
ユーリは隙だらけのふにゃ丸に躊躇なく斬撃を放った。
それと同時にセリーヌはリリィに魔法攻撃の指示を出す。
「ユーリのやつ、勝手に攻撃して……。リリィ? 準備出来た!?」
「うん……バッチリ……いつでもいーよ……」
「じゃあ放って!!」
「はーい……! 【アイスロック】……! からのー【ファイアダンク】……!!」
リリィは上級魔法をふにゃ丸めがけてぶっぱなした。
ユーリが言った通り、あれだけの大きさがあればノーコンなリリィが放った魔法も確実に直撃するだろう。
「ボンズ! 奴の反撃に備えてみんなを守って! 【サンダーヒーリング】! 【マジックウォール】!」
その隙にセリーヌは強化魔法と魔法耐性がある壁を展開しボンズに声をかける。
「わかりました、セリーヌさん! いつでも来てください! スライムさーん!!!」
ボンズは両手を広げてふにゃ丸の反撃を待つ。
そして全ての準備が整ったタイミングでユーリの斬撃とリリィの魔法が無防備なふにゃ丸に直撃した。
魔法と斬撃が直撃したふにゃ丸の身体は粉砕され、四方八方に飛び散った。
――みんな、やるじゃないか……!
セリーヌを中心に全員が上手く連携した見事な攻撃だ……!
これは俺が手を貸すまでもないか?
「や、やったか……?」
しかし、ここでユーリは余計な事を口走ってしまった。
――バカ、ユーリ……。それはフラグだと何度も……。
そしてそのフラグは見事に、そして即座に回収される。
四方八方に飛び散ったふにゃ丸の身体はユーリ達が立っている場所まで届いていた。
粉々になったふにゃ丸の身体は豪雨の如く、ユーリ達の頭上に降り注ぐ。
「うわっ……! 気持ち悪いっ!!」
「何よこれ……もう最悪……!」
「うえぇ、何かヌルヌルしてますこれ……」
「これがスライムちゃんの……。ふふ。嬉しい……」
ふにゃ丸の破片は俺がいる所へも届きはしたが、スカーレットが俺に覆い被さる様にして庇ってくれた。
お陰で俺だけにはふにゃ丸の破片が付着しなかった。
すると何処からともなくふにゃ丸の声がその場に響いた。
『ぼんぼん!!』
刹那――――
ユーリ達の身体に付着したふにゃ丸の身体の破片は爆発を始めた。
それにより周りの地面等に貼り付いていた破片も誘発され辺り一面が大爆発を引き起こした。
◇
爆発音が静まり、俺が起き上がろうとすると俺に覆い被さっていたスカーレットはそのまま俺の上に倒れ込んで来た。
「お、おい、スカーレット!?」
スカーレットに守られていたお陰で何とか俺は無事だったが、代わりに爆発のダメージを受けたスカーレットは気を失ってしまっていた。
「マジかよ……。スカーレットが気絶するなんて……」
そして周りを見回すとユーリ達もその場に倒れていた。
「おい、ユーリ!? セリーヌ、ボンズ、リリィ!?」
俺は四人の名前を必死に叫んだ。
しかし誰の反応も返って来なかった。
「嘘だろ……」
そんな中、またしても何処からともなくふにゃ丸の声が木霊する。
『何だ、まだ生きているのかぼん? ガキのくせに生意気だぼん!』
俺はその時初めて殺意を覚えた。
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