60話 大きな前進
成長したみんなの力で何とかゴブリンの群れを一掃する事に成功したユーリ達は、助けた冒険者ウィルの話を聞いてそれぞれの反応を見せていた。
そんな中、俺はゴブリンロードとスカーレットの元へ向かい要件を済ませる事にした。
「スカーレット、ご苦労だった。それよりそのゴブリンロード。息はあるのか?」
「勿論です。ご命令通り殺してはいません」
――殺してないと言いつつも、精気を吸い取られてほぼ虫の息だぞ……。
ていうか俺、魔物と会話出来るのか?
まぁ物は試し。やってみるか。
「おい、ゴブリンロードよ。俺の言葉がわかるか?」
『ウ、ウゴォ……?』
(ご、ごはん……?)
――どうやら自分が話しかけられている事は認識しているみたいだな。
てことは、俺は今までコイツらの事を知恵なき魔物とばかり思っていたけど、実は少しの知恵はあるんじゃないか?
なら言葉を尽くせばわかってくれるかもしれない……!
「何故貴様達は人間を襲う? 魔族領で魔人達を襲わないじゃないか」
『ウ、ウゴ、ウウ……ゴゴブゴブ……ウゴ』
(ご、ごは、んん……ごはんたべ……たい)
――ダメだ……何を言っているのかさっぱり理解出来ない。
これは言葉を尽くす以前の問題だ……。
てかウゴウゴ、ゴブゴブって何語だよ?
日本語でおk?
すると横にいたスカーレットが突然ゴブリンロードの頭を叩き口を開いた。
「コラ! ゴブリン風情が、エル様の御前で寝転がって話すなど無礼であるぞ! 身の程を弁えんか!!」
『ウ、ウゴォウアガ……?』
(ま、まおうさま……?)
スカーレットに頭を叩かれ叱られたゴブリンロードは虚ろな目で俺を見詰めた。
寝転がっているのはスカーレットによるものだというのに、頭を叩かれ叱られるなど何とも不憫な魔物だろうか。
「そのままで良い。それより俺の言葉の意味はわかるか?」
『ウゴウゴゴブリ……ゴブリ、ゴルゴブウゴリ……?』
(魔王様ってこんな小さかったっけ……?)
「き、貴様……! 魔王様に何と失礼な物言いか!!」
「スカーレット。俺はコイツが何を言っているのかさっぱり理解出来んのだが、何を言っているのだ?」
「そ、そうでしたか……! 実は魔物は人語を話す事が出来ず、言葉は闇属性の魔力を放ち思念を伝達しているのです。エル様も闇属性の魔力を感じ取ってみればコレが何を言っているのか理解出来るかと思います。因みに私もコレと話す際は魔力を放ち、言葉を発しております」
――そういう事か。
でも俺、闇属性どころか全部の魔力適正が0なんだよなぁ。
スカーレットにもその事は話してないし、それがバレれば俺の魔王としての尊厳に関わるから何としても誤魔化さないと……。
でもどうやって――――あ! そうだ!!
そして俺はとある事を思い付き言霊の能力でアレを発現させた。
「そうか。ならばやってみよう――――【スマホ 発現】……!」
俺が発現させたのはスマートフォン。
これの翻訳機能を使えばゴブリン語も理解出来るはずだ……!
「えっと? マイクを相手に向けてればいいのか?――貴様は何故人間を襲うのか理由を聞かせてもらおうか?」
『ピコン! 人間を襲う理由についての検索結果はコチラです』
――いや、君がそれを答えなくて大丈夫だから……。
それよりゴブリンが何を話しているのかを知りたいんだよ。
するとゴブリンロードは俺の問いかけに反応する様に口を開いた。
『ウ、ウゴォウアガ……ゴブゴブリンリン』
(き、きょうのご飯は……何にしようかな)
『ピコン! すみません。よくわかりません。ウ、ウゴォウアガ……ゴブゴブリンリンの検索結果はコチラです』
「え、エル様……? この喋る板は一体……?」
――くそう……。ここに来ておじさん特有の現代技術に疎い部分が出てしまった……!
こういう時はどうすればいいんだ……?
あ、確か尻とかいうのに聞くんだっけか?
「おい、尻! コイツが何を言っているのかを教えてくれ」
『ピコン! わかりました。今聞いています』
「し、尻……!? エル様、一体何を仰っているのですか!?」
「ほれ貴様……理由を話せ」
俺は驚いているスカーレットを他所にスマホが話し出したのを確認するとゴブリンロードにマイクを向けて、理由を話すよう小声で促した。
するとゴブリンロードは怪訝な表情を浮かべをながら話を始める。
『ゴブゥ……? ウゴウゴゴブリンリンゴ……?』
(なんだ……? この板食べられるのか……?)
『ピコン! すみません。よく聞き取れませんでした』
「クソッタレがぁ!!! この役立たずのガラクタがぁ!!!」
「エル様!? ど、どうか落ち着いて……!?」
俺はそう叫ぶと発現させたスマホを地面に投げつけた。
――何がスマホだ、何が文明の力だ!!
クソの役にも立たないじゃないか!!
異世界でスマホはチートじゃなかったのかよ!?
異世界はスマー〇フォンとともにじゃなかったのかよォォォ!?
やはり俺達世代にはガラケーしか勝たんな。
うん。そうだ。ガラケーこそが真の携帯電話だ……!
「ふぅ……。すまんがスカーレットよ。コイツに俺の言葉を伝えてはくれぬか? どうやら俺の魔力はコイツと相性が悪いみたいだ」
「……? 承知しました。では先程の質問をコレに聞いてみます」
俺は深呼吸をし冷静になると、スカーレットに通訳を頼んだ。
すると彼女は俺が魔物と話せない事に疑問を抱きつつも俺の質問をゴブリンロードへと伝えてくれた。
その後、ゴブリンロードはゴブゴブと話しそれを聞いたスカーレットは俺の方へと向き直り口を開いた。
「――『特に意味は無い。暴れたいから暴れているだけ』だそうです」
「何だそれは。理由になっていないではないか。まぁ良い。ならどうすれば人間を襲うのを辞めるか聞いてくれ」
「はっ! ――――『人間がそこにいるから襲う。人間がいなくなれば襲わない』だそうです」
「そうか……」
――クソ……! それじゃあ人間が滅ぶまでコイツらは一生人間を襲い続けるって事かよ!?
ふざけんな……どうする!?
いっその事、知能が低い魔物は全て滅ぼすか……?
いや、でもそれじゃあ何もしていない魔物達があまりにも……。
俺が思案しているとスカーレットがとある提案を持ち出した。
「あのエル様……? 一つ提案なのですがよろしいでしょうか?」
「何だ、申してみよ」
「はい。コレの様な低位の魔族。所謂知能が低い魔物ですね。コレらと奴隷契約を交わすのはいかがでしょう? そうすればエル様の真意に背いて人間を襲う事は無くなるかと……」
「天才か……貴様は……」
「天才だなんてそんな……!! 私のこの様な考えなど、エル様は既に思い付いておられたでしょう。それなのに私に花を持たせようとわざわざこの様なチャンスを設けて頂いて――」
――いや、そんなつもりは一切無かったけどな。
ていうかそんな事、思い付きもしなかったし。
でも確かに奴隷契約はアリだな。
言葉の響きには少し嫌な感じもするが、奴らを統率、管理するには一番の方法じゃないか?
よし、これでいこう。
「して、スカーレットよ。その奴隷契約はどのようにすれば良い?」
「それは契約の義を交わし、主となる者が対象に魔力を注ぐ事で契約が完了します」
――また魔力かよ!!
もういいってそればっかり!
俺は魔力が一ミリも無いの!
それにしてもどうするか……。
魔力無しで奴隷契約を結ぶには――――
そして俺は頭の中にあるサブカル知識を探り一つの方法に思い当たる。
「ふん。そんな面倒な事をいちいちしていられるか。――――【隷属の首輪 発現】!」
俺は言霊の能力で一つの首輪を発現させた。
――昔見たラノベとかでこういうのあったよな。
この首輪には元々、奴隷契約の刻印がされてあるしコレを付けるだけで契約は成立する――はずだ。
「エル様……それは一体?」
「俺が作り出した魔道具だ。コレを付ければ奴隷契約が成立するはずだ」
「そうですか……。ではそれを私に――」
そう言うとスカーレットは俺の手から首輪を奪い取り自らの首にあてがった。
「貴様、何をナチュラルに奴隷になろうとしておる!? それは魔物に使うと言っただろうが!」
「広く見れば私も魔物ですし、エル様の奴隷になら喜んでなりたいと思いましたので」
「それなら尚更、首輪なんていらんだろ!? 馬鹿な事は辞めてさっさとその首輪を返せ!」
「えぇ……。わかりました……」
スカーレットはそう言うと渋々俺に首輪を返した。
俺はやれやれといった表情でゴブリンロードに首輪をはめた。
「よし、これで良いな。おいゴブリンロードよ、これから貴様は俺の従者になる。よって、俺の指示無く暴れる事を禁ずる。良いな?」
『ハイ、マオウサマ……。オデ、アナタニシタガウ……』
隷属の首輪の効果なのか、首輪をはめた途端、俺にも魔物の言葉がわかるようになった。
――よし、いいぞ……!
これで知恵なき魔物改め、知能が低い魔物の完全管理については大きく前進したな。
あとは五芒星の馬鹿共と四天王のお爺達をどうにかするだけだ。
その後俺は、スカーレットに吸い上げた精気をゴブリンロードに戻す事を命じた。
精気を取り戻したゴブリンロードは俺の命令に従い、静かにその場を去っていった。
そして俺とスカーレットは遅ればせながらユーリとウィル達の元へと戻ったのだが、こちらも何かと揉めている様だった。
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