54話 リリィとアイリスの行方
セリーヌとボンズの成長を見届けた翌日。
俺は未だ帰って来ていないリリィと、その修行相手であるアイリスの元へと向かおう――としたのだが、彼女達はワープゲートで移動した為に行き先がさっぱりわからなかった。
言霊の能力で【探索】の範囲を最大限まで広げても、その網にかかる事はなかった。
「つまりはこの近辺ではない、どこか遠くって事か。……ったく、どこまで行ったんだよ。せめて携帯電話くらいあればな……」
その時、俺は思い出した。
さすがに現代の携帯電話――とまではいかないが、それと同等にアイリスと通信する手段を。
俺は早速、シギサのオフィスへと向かった。
◇
オフィスへと到着すると、いの一番に目的の双子の元へ向かった。
「ケシカとランナはいるか?」
俺は扉を開け、ロリショタツインズに声を掛けた。
「「はぁーい! いますですよ! 魔王様!」」
するとけしからん幼子達は元気よく手を挙げ返事をした。
「仕事中にすまんのだが二人とも、今すぐアイリスに通信を繋げてくれないか?」
「「はいですー!! 何かお困りのようですねー?」」
俺がそう頼むと科学キッズ達は二つ返事で了承し、すぐさま血の糸を伸ばした。
「あぁ、そうなのだ。あとその通信、俺も混ざりたいのだが良いか?」
「「勿論ですー! では、腕を少しお借りしますね!」」
そして媚薬開発という前科持ちのおチビ達は俺の腕に血の糸を巻付け始めた。
――げぇ……。
わかってはいたけど、実際血の糸を腕に巻かれるのはちょっと嫌だな……。
お願いしてる立場で贅沢を言うつもりはないんだけどさ……。
でもやっぱり少し生臭い。
そんなこんなで、いよいよ通信が繋がると激しい息遣いが聞こえて来た。
『ハァハァ……! ね、姉様……。も、もう……限界っ……!』
『何言ってんのよリリィ。まだまだこれからよ……』
――こ、こいつら一体何を……?
修行ではないのか!?
何故、そんな如何わしい声を……!?
いや、アイリスに限ってそんな事はないだろう。
いくらリリィが可愛いロリっ子だからって……なぁ?
そして俺は意を決してアイリスとの会話を試みる。
「アイリス、聞こえるか? 俺だ、エルだ」
『え、エル様……!? どうなさったのです!? これは眷属の通信では……!?』
「そんな事はどうでも良い。今すぐリリィから少し離れた所へ移動しろ」
『……? は、はい。――リリィ! 少し休憩よ!』
『はあい……姉様……ぐへぇ』
俺の支持に従いアイリスはリリィに休憩を告げると、彼女から離れた場所に移動した。
『移動しました、エル様。そしてご要件は……?』
「ご苦労。して貴様、今一体どこで何をしている?」
『……っ! それは……ボソボソ……』
俺の質問に対し、実にアイリスらしくない小声でボソボソと話し始めた。
何か後ろめたい事があるのだろう。
正直何を言っているのか一切聞き取れなかった。
「何だ? 俺が聞いているのだぞ? ハッキリ話さんか!」
『……はい。実はあの時私は頭に血が上っておりまして――』
俺が少しばかりの圧を出すと、アイリスは観念したのか弱々しい声で話を始めた。
『――広くて周りに何も無い、思いっ切り力を発揮出来る場所へワープしたのですが……』
「ですが? 何だ?」
『その……場所の事は一切考えておりませんでして……』
またしても口篭り始めるアイリスに俺は少し苛立ちを覚えてしまった。
前世ではそんな感情を抱く事も少なかったのに、これは転生した副作用みたいなものなのか?
などと考えている内に俺はアイリスに更に圧を出してしまっていた。
「だから、今どこに居るのかと聞いておる!! さっさと答えんか!」
『は、はい……!! 今私はリリィを連れて、エル様が幼少の頃に過ごされた別荘に来ております!!』
「は……?」
――今コイツは何て言った?
俺が幼少期に過ごしていた別荘にいるだと……?
まぁ確かにあそこは俺が言霊の能力を全力でぶっぱなしまくっていた場所だから、リリィやアイリスがどれだけ力を使おうが周りに被害が及ぶ事がないかもしれないけど。
それよりもだ!
そこは俺とスカーレットが十年という長い間、甘い時間を過ごした俺の思い出の――――
「――ではなくて」
『……はい?』
「貴様……。リリィをそこへ連れて行く意味がわかっておるのか?」
『も、申し訳ありません。正直、わかりかねます……』
「そうか。ならば教えてやる。そこには俺とスカーレットが暮らしていた形跡が少なからず残っているだろう? それをリリィが見て何か気付いたらどうするつもりだったのだ? 貴様は俺の計画を潰すつもりか?」
――そう。俺が危惧していたのはソコが魔族領、ひいては魔王城の敷地内である事。
そしてそこに俺とスカーレットが十年間暮らしていた形跡が少し残っているであろう事。
更にそこへ勇者パーティーのリリィが来て、俺と魔王を結び付ける何かに気付いてしまう事だった。
『い、いえ! その様なつもりは一切ありません!』
「はぁ……。まぁ良い。幸いリリィは何も気付いておらんのだろう?」
俺はため息まじりにそう聞いた。
恐らくは俺の危惧している様な事にはなっていないだろうと。
しかし、現実とは実に残酷である。
『いえ……実はそれが。別荘の中でとある一冊のアルバムを見付けまして……』
「あ、アルバム……?」
『はい……。そこには幼い頃のエル様の写真が……』
「なにぃ!?」
――アルバムだと……!?
てか、この世界に写真とかあったのか!?
……まぁ、実際アルバムがある訳だし、写真も存在するんだろう。
それよりそんな写真をいつ撮られたのかだ……。
『で、ですが幸いな事にリリィは、エル様は昔から仮装が好きだったと誤解していますので、魔族バレは恐らくないかと……』
――それは果たして幸いなのだろうか……。
幼少期からコスプレ趣味がある男児は人間でも余程珍しいだろ……。
「そ、そうか。まぁリリィに俺が魔族だとバレてなければそれで良い。だが俺はそんな写真を撮られた記憶が一切ないのだが、その写真は誰が撮ったものかわかるか?」
『いえ、誰が撮ったのかはわかりません……。ですが全ての写真に共通して言える事は、どれも物陰から撮影している事です』
――要は盗撮か……。
でも一体誰が?
あの別荘には俺とスカーレットしか――
ん……?
俺とスカーレット……しか……?
「……おい、アイリス。もしやその中の写真に赤い髪が写り込んでいたりはしなかったか?」
『赤い髪……ですか? 少々お待ち下さい。確認して参ります……』
そしてアイリスはそう言い残し、ガサガサと物音を立てながら別荘内を物色し、件の写真を調べ始めた。
暫く無言で待っていると『エル様!』とアイリスから声が掛かり、再度耳を傾けた。
「どうだ? あったか?」
『はい。確かに数枚ですが一、二本の赤い髪の毛が写り込んでいる様に見えますね』
「やはりか……。修行中に悪かった。ご苦労。後で俺もそっちへ行くからそのつもりでしっかりリリィに修行をつけておけよ?」
『はっ! 承知しました! それでは――』
盗撮犯の正体がわかった所で俺はアイリスとの通信を切った。
◇
「ありがとう。ケシカとランナがこの街にいてくれて助かった。これからも俺の為に励んでくれな」
「「あ、ありがとうございますうぅ!!」」
俺がそう言いながら頭を撫でてやると、二人はとても嬉しそうに笑っていた。
「さてと……。スカーレットはどこにおるか知らんか?」
「「え? スカーレットさんならずっとエル様の後ろにいますよー??」」
俺はツインズにそう言われ、くるっと後ろを振り返った。
すると冷や汗をかいて、引き攣った笑顔を浮かべるスカーレットがそこにいた。
「スカーレット。貴様、俺が何を考えているかわかるな?」
「は、はい……エル様。私が制作した『エル様すくすく成長記録』についてでございます……」
――エル様すくすく成長記録?
なんだその恥ずかしいタイトルは。
辞めてくれよ……。
「そ、そうだ。通信の声も聞こえていないはずなのによくわかったな?」
「え、エル様の口からアルバムという言葉が出たので、もしやと思いまして……」
「ほう……? で? 貴様は何故あんなモノを作ったのだ?」
「それはもう、エル様の愛らしい姿を一片も忘れない様にする為です……!」
スカーレットは目を輝かせながらそう言った。
しかし俺はそれすらも疑った。
「……本当は?」
「一人寂しい夜のお供です……」
――だよなぁやっぱり。
スカーレットは美人だけど、そこだけ酷く歪んでるんだよなぁ。
まぁおねショタ好きの俺からすれば良い癖なのだが、それは置いといて――
「だろうな。俺は貴様の趣味にとやかく言うつもりはない。……だが俺はそんな事を許可した覚えはないし、それのせいでリリィに俺の秘密がバレるところだったのだぞ?」
「申し訳ありません……! 以後気を付けてアルバムは持ち歩く様にいたします!」
「そうではなく盗撮をやめんか、馬鹿者!!」
俺はその後数時間に渡り、スカーレットに説教をした。
まぁ当の本人はショタに罵られてご褒美でしかないかもしれないが。
そして数時間後。
俺はアイリスとリリィがいる魔王城の別荘へと言霊の能力で【瞬間移動】した――――
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