49話 勇者の使命
セリーヌ、リリィ、ボンズの三人がそれぞれ修行へと出掛けて行った後、俺は一人ギルドに取り残されていた。
「ふぅ。まぁ何はともあれ、みんな無事に修行相手が決まってよかったな。さてそれじゃあ俺もそろそろ――――」
そして俺は三人の修行相手が無事に決まった事に安堵し、ユーリが寝ている宿屋へと戻ろうとギルドの出口の方へ体を向けた。
すると途端に三人の女性冒険者達に周りを囲まれた。
「え……? 何ですか?」
「僕ちゃん。こんな所に一人でいたら危ないわよぉ?」
「そうね。私達が責任を持って保護してあげるわ」
「んふふふ。さて、お姉さん達とナニをして遊びたいのかしら?」
――こ、これは……。
もしかしておねショタ展開なのでは!?
むぅ……。それに三人とも凄く美人じゃないか……。
久しぶりに血が滾って来たぜ……。
って滾ってるだけで実戦経験は皆無なのだが、そこはまぁいいじゃないか。
すると突然、三人の内の一人が俺を抱きかかえた。
「あーん! もう可愛すぎっ! 早く連れて帰ろぉ?」
「ちょ、あなただけずるいわよ!? 私にも抱かせてよ!」
「んふふふ。取り合いは駄目よ。皆で仲良く遊びましょ……?」
「んっ! んー! んー!」
そして俺は三人の美女に同時に抱きしめられ、いつの間にか柔らかい感触に包まれていた。
――あぁ、もう最っ高……。
転生してよかったって心から思った……。
転生してから言う事を聞かない配下達とか、アホな勇者達に悩まされて来たからな。
たまにはこういうご褒美がないとやってられないよな……。
「あら、見て? この子鼻血が出てるわよぉ?」
「ほんとね! お姉さん達にぎゅーされて嬉しかったのかな?」
「むふふん。ならもっと色んなものも出してあげようかしら……?」
――そりゃあ鼻血くらい出ますよ。童貞だもの。
…………でもそろそろユーリを起こしてアイツも修行させないといけないな。
名残惜しいけど。
あんなアホでも一応は勇者なんだから、いずれはもっと強くなって、平和の象徴くらいにはなってもらわないと困る。
こんなチャンス二度とないかもしれないけど……!
このままお姉さん達と遊びたい気持ちは山々だが、ここは諦めよう……。
ぐぬぬ……! ユーリめ……。
あのアホさえいなければ、俺は今頃お姉さん達と……。
「くっ……! うぅっ……!」
「あら、僕ちゃん泣いてるのぉ?」
「てか下唇噛みすぎよ! 血が出てるじゃない!?」
「い、色んなものとは言ったけど、そういうのじゃないのだけれど……?」
お姉さん達は戸惑っていた。
それもそのはず、俺は煩悩を押し殺し、この最高の場所から自らの意思で脱する為、血が出る程に思いっきり下唇を噛んでいたからだ。
――あぁ、名残惜しい……!
でも俺の目的を達成する為に、ひいてはこの世界の平和の為に……!!
「……【瞬間移動】」
そして俺は言霊の能力を使ってお姉さん達の胸からギルドの出口へと移動した。
「あれ……? 今あの子一瞬で……?」
「何!? どういう事!?」
「むふふ。逃げ出すなんて、ますます可愛いじゃない……」
「すみません、お姉さん達……。僕はやる事があるので今日はおいとまします。また機会があれば誘って下さい。次は……次こそは……!」
俺は戸惑うお姉さん達にそう言い残し、ギルドを出た。
――次こそはお姉さん達に遊んでもらおう。
ていうかこの世界の女性達、ショタに耐性無さすぎじゃないか?
いくらなんでも皆、俺に甘々すぎじゃない?
最高だけど……。最高なんだけどね……!!?
俺はこの時失念していた。
自分がサキュバスの血をひいている事を。
そして同じ種族なのに俺に全く耐性の無いスカーレットとは一体……。
◇
そして俺はお姉さん達に後ろ髪を引かれながらも、ユーリが待つ宿屋へと戻ってきた。
しかしこのアホは未だ、ぐーすかと寝息を立てて眠っていた。
「おい! ユーリ! さっさと起きないか!!」
「ん……? むにゃむにゃ……。あぁ、エル……おはよぉー。何でそんな怒ってるのー?」
ユーリは眠い目をこすりながらゆっくりと起き上がった。
そして俺はお姉さん達をこの二日酔いアホ勇者の為に諦めた事への苛立ちがあったのか、つい口調が荒っぽくなってしまった。
「怒ってなどいない。貴様が何も考えず、ぐーすか寝ているから起こしてやっただけだ!」
「いやぁ怒ってるじゃん。……てかそれよりさ。エル、何で泣いてるの?」
俺は先の幸せを諦めた事が精神的にダメージを与えたのか、知らない間に涙を流していた。
「くっ……! 泣いてなどおらんわ!!」
「いや、泣いてるよ! てかその唇も! どうしたのさ!? パンパンに膨らんでるし、血が出てるけど!?」
「何でもない……!!」
「いやいや、何でもないって事はないでしょ!? 何があったの!?」
執拗に俺に詰め寄ってくるユーリを黙らせる為、未だ俺の心を支配する煩悩を振り払う為、俺はその場に仁王立ちし、腕を組み、力強く遠くを見つめ口を開いた。
「……なにも!!! なかった……!!!」
「血涙……!?」
そして俺は血の涙を流し、全ての煩悩を振り払った。
◇
「ところで、みんなはどこに行ったの?」
ユーリはようやく他のメンバーがいない事に気が付き、その理由を聞いてきた。
「ふんっ。今更だな。スカーレットは私用だが、それ以外の三人は修行へ出掛けた」
「修行!?」
そして俺がそう答えてやるとユーリは驚いた表情を見せた。
「あぁそうだ。貴様がアホみたいな顔して馬鹿みたいに寝ている間に、スカーレットが提案してな。そして今日、各々修行相手を見付け出掛けて行ったのだ」
「そうだったのかぁ。俺、昨日の記憶全然無くてさぁ。シギサさんと話したところくらいまでは覚えてるんだけど……」
そう言うとユーリは首を傾げた。
そして俺はその事に深く安堵した。
――昨日ユーリが言った俺の正体については忘れているようだな……。
よかったよかった。
「まぁ昨日は貴様、酒を呑んで完全に酔っ払っていたからな」
「え!? そうなの!? 俺お酒なんて初めて呑んだよ……。てかお酒は二十歳になってからって村の掟を破っちゃった……! どうしよう!?」
すると突然ユーリは慌てふためき始めた。
「大丈夫だ。幸いあの場には俺達しかいなかったし、誰も口外したりしないだろう。貴様が黙っていればそれで――」
「良くないよ! 俺は勇者なんだ……。勇者として、誰にでも優しく手を差し伸べて、みんなのお手本でいなくちゃならないんだ……! それが勇者の使命なんだ……。それなのに……俺……」
「ユーリ……貴様……」
ユーリはそう言うとポロポロと涙を零しながら自分の行いを悔い、ベッドのシーツを強く握った。
そしてユーリは暫くそうしていた後、涙を拭き顔を上げてキリッとした表情で口を開いた。
「俺、自首するよ……! 自分の犯した罪をしっかりと反省して処刑してもらう……!! それが俺が今やるべき事――――」
「【魔王パンチ 十パーセント】。…………馬鹿者ォォォ!!!」
「ぐべぇ……!!」
ユーリが真剣な面持ちで話している途中で、俺は言霊の能力で力を調整した魔王パンチをユーリの顔面に打ち込んだ。
そしてユーリはベッドの端まで飛んだ。
「何するんだよ、エル!?」
「勇者としてやるべき事はそんなくだらない事ではない! それにそのくらいで処刑なんてされんわ!!」
「…………っ!!」
俺がそう言うとユーリは目を丸くして殴られた頬を押さえていた。
「確かに村の掟? とやらを破ったのは褒められた事では無いのかもしれん。勇者として生きるのなら尚更だ。だがな、今貴様がやるべき事は自首する事でも処刑される事でもない。少しでも強くなって世界の人々を守ることだろうが! だから……その罪への罰は、今俺が殴った一発だけでいいだろう?」
「エル……。 確かにエルの言う通りかもしれない……。俺が勇者として今やるべき事は魔王を倒す事……。その為にはもっと強くならないとだもんね……」
「そうだ。だから強くなれ、ユーリ」
俺は意志を強く持った目をしたユーリにそう言葉を掛けた。
――俺、今何言ってるの!?
自分を倒す為に勇者に強くなれって言ってんだよね!?
…………ってまぁいいか。
それで世界が平和になるなら別に安いもんだろ。
そして俺は覚悟を決めたユーリに修行の内容を説明する事にした。
「では、早速だが貴様にやってもらいたい事がある」
「……え?」
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