45話 冒険者
仮装パーティーを終えボンズは酔い潰れたユーリを背負い、スカーレットは俺にまとわりつくセリーヌを引き剥がし、俺はアイリスから離れようとしないリリィの手を引き宿へ帰って来ていた。
「パーティ楽しかったわね。エルきゅんの可愛い姿も見られたし大満足だわぁ」
「リリィもアイリスお姉ちゃんに会えて嬉しかった……!」
「お、オイラもケシカ君とランナちゃんと話せて楽しかったです!」
「うんー、むにゃむにゃ……」
宿に着くなりそう語る三人は満足気な表情を浮かべていた。
そんな中、酒に潰された勇者ユーリはベッドに突っ伏し既に夢の中にいるようだった。
「それにしてもこの街は平和ねー。メテックや王都のように魔物が攻めてきたりもしないし、魔族の影もないじゃない」
「確かに……。今回はリリィの魔法の出番は無かった……」
「オイラは魔族がいなくて安心しました。見回りした時も特に目立った事はなかったですし」
次に話題はフォルトスの平和さについてへと移行した。三人はアイリス達が魔族だと気付いていない為、この街に魔族はいないと認識していた。
そして俺はこの先の話の展開を予測し、ソレを危惧した。
「これなら次の街に行っても大丈夫そうね」
「リリィも早く魔法をぶっぱなしたい……!」
「お、オイラは魔族がいない方がいいんですけどね……」
そして三人は俺が予測した展開通りに話を進めていった。
――やっぱりそうなるかぁ。
俺としてはアイリス達に命じている回復薬の製造に目処が付くまではこの街に留まりたいんだけどな。
どうにかしてこいつらを説得して、もう少しこの街に留まらせないとなんだけど……一体どうすれば……。
俺はみんながこの街に留まってもいいと思える様な言い訳を色々と考えた。
しかしどれもソレに値するものではなかった。
するとそんな俺の様子に気が付いたのか、有能なお世話係は俺に耳打ちをした。
「エル様。何かお困りでしょうか……?」
――さすがはスカーレットだ。
俺の顔色を常に意識して些細な変化も見逃さない。
そして何かを感じ取ればすぐに声を掛けてくれる。
もしやこいつ、俺の事が好きなのか?
そして俺は童貞故の曲がった考えを抱いたまま、スカーレットへ小声で返答した。
「このままではコイツら、明日の朝にはこの街を出発しかねない。俺としては回復薬の製造に目処が付くまではこの街に留まりたいと考えているのだが、コイツらを引き止める良い言い訳が思い付かんのだ」
「なるほど。承知しました。ではここは私にお任せ下さい」
スカーレットは俺の話を聞き、深く頷き理解した表情を見せると三人の方へ向き直り話を始めた。
「コホン。えー……皆さん。私から一つ提案なのですが――――」
「どうしたの、スカーレット? 提案って?」
突然改まって口を開いたスカーレットに三人は怪訝な表情を浮かべた。
しかしスカーレットは構わず話を続ける。
「この街は魔族の影もなく、非常に平和だと思います」
「そうだね……。そのせいでリリィは少し退屈……」
「リリィ? 退屈なのはこの街が平和だからで、街が平和なのはいい事なんだよ?」
リリィが不満そうに杖を軽く振ると、ボンズは彼女を諭すように言葉を発した。
「ボンズの言う通りこの街は平和です。ならばもう少しこの街に留まって各々修行するというのはいかがでしょう?」
「「「…………っ!!」」」
スカーレットの言葉に三人は驚いた様子を見せた。
そしてその後、三人の表情はパッと明るくなり、順に口を開き始めた。
「いいわね! 丁度私達も修行をしたいと考えていたところなのよ!」
「リリィも強くなりたいと思ってた……!!」
「お、オイラも怖がりな性格を克服したいです……! でも具体的に何をすればいいのか……」
――なるほど、修行か!
その手があったか!
三人も意外といい反応を示しているしこれはいい提案かもしれないな。
でもボンズの言う通り、修行と言ってもどうするつもりなんだろうか。
スカーレットには何か考えがあるのか?
「その点については私に考えがあります」
「考え……?」
「はい。というのも先程宿へ帰ってくる際に冒険者ギルドなるものを見付けまして――――」
「冒険者ギルド!?」
俺はスカーレットの言葉を聞き、驚きのあまり大きな声を出してしまった。
「どうかされましたか、エル様?」
「その冒険者ギルドって何ー?」
「冒険者というのは魔物を狩ったり、貴族の護衛をしたりと、依頼を受けそれをこなす。云わば勇者パーティーの下位互換です」
「へ、へぇー……?」
――いや、違うだろ……!
冒険者が勇者パーティーの下位互換ってどんだけ魔族寄りの意見だよ!?
ていうか上位ランカーともなれば恐らくユーリ達よりも遥かに強いだろうしな!?
それにしてもこの世界にも冒険者がいたんだな。
勇者パーティーとか騎士とかがいるから魔族と戦う人が他にもいるなんて考えもしなかったな。
冒険者か……。
RPG好きな俺にとっては胸が踊る響きだな。
「でもスカーレット? この街に冒険者ギルドがあったから何だって言うの? 私もあまり知らないけれど、冒険者は勇者パーティーの下位互換なのでしょう?」
「はい。確かに私は冒険者の事をそう認識しております。ただそれはあくまで冒険者全体の平均をとった場合です」
「というと?」
「つまり冒険者の中には目も当てられない程に弱い方もいれば、勇者パーティーを遥かに凌ぐ強さを誇る者もいるという事です」
「なるほど……。リリィわかったよ……! つまりスカーレットはその強い冒険者に修行してもらえって言いたいんだね……?」
スカーレットはリリィの言葉に頷いた。
――なるほどな。
この街にいる冒険者に修行をつけてもらうとなれば、自ずとみんなもこの街に留まる事になる。
事前に冒険者ギルドがあるという事実を知った上で、平和な街での修行と銘打ってしまえば誰も断らないだろうと踏んでの提案だったのか。
さすがはスカーレット、有能すぎるぜ……。
「なので早速、明日の朝にでも冒険者ギルドへ参りましょう。そして各々が自分の師匠となり得る方を見付けて修行をつけて貰えるようお願いして下さい。勿論、対価としてお金を支払っても構いません。まぁ無料でしてもらうのが一番ではありますが」
そしてスカーレットは明日からの方針について説明した。
すると三人はそれに大きく頷き返事をした。
「わかりました! オイラ、この修行できっと強くなってみせます!」
――ボンズはやる気十分といったところか。
臆病な性格を克服してボンズがタンクとしてしっかり機能すればパーティーの防御力は飛躍的に上がるだろう。
「リリィももっと魔法の威力を上げる……!」
――リリィは何か勘違いをしているようだ。
君の場合は威力ではなくコントロールを磨いて欲しいのだが。
誰か早くそう言ってあげて?
「私は回復のみならず、付与魔法についても学びたいわ!」
――うん。その心意気は素晴らしい。
確かに付与魔法があればパーティーでの戦闘を有利に進められるだろう。
でもあなた、その付与魔法も味方にかけなきゃ意味がないんだよ?
そこら辺わかってる?
まぁ三人は伸ばす方向性がわかっているからいいとして、あとはあのアホだよなぁ。
そもそもアイツは誰かに修行をつけて貰う以前の問題だし、またトラブルを起こして来たら面倒だ。
ここは俺が修行をつけてやるか……?
ていうかそれしかないよな……。
魔王が勇者を強くするってなんとも皮肉な話だ……。
「ではその手筈で。私は皆さんが修行している間、エル様とこの街を観光に――――」
「あ、スカーレットには少しお願いしたい事があるんだ。それに僕はユーリと用事があるから!」
「え……? そうなのですか……?」
俺がそう言うとスカーレットは途端に寂しそうな表情を浮かべた。
どうやら本気で俺と観光するつもりだったらしい。
そして俺はスカーレットの耳元で今後の指示を出した。
「すまないがスカーレットは回復薬の製造の方を見ていて欲しい。また何かやらかすかもしれんからな。それとリリィの修行の相手はアイリスにやらせようと思っている」
「はぁ……なるほど。確かにリリィはアイリス様に凄く懐いていましたものね」
「あぁ。アイリスならリリィのノーコンを何とかしてくれるかもしれない」
「承知しました。ではその通りにいたします。ですがユーリはどうされるおつもりで?」
スカーレットは不服そうにしながらも俺の指示に従ってくれた。
続けて彼女はユーリの修行についての方針を尋ねて来た。
「ユーリは……まぁ俺が何とかする」
俺がそう言うとスカーレットは心配そうな表情を浮かべつつも、こくりと頷いた。
――正直、ユーリについては何をどうしたらいいか全くわからない。
アホすぎて聖剣もろくに使えないから手のつけようがないのだ。
小学生用の算数ドリルでも発現させて勉強させるか?
それとも魔物の群れに放り込むか?
うーん……。
◇
そして翌日。
俺の考えが纏まらないまま、俺達は冒険者ギルドへと向かった。
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