44話 仮装パーティー
皆に遅れて奥の部屋へと戻った俺はそこに広がる異様な光景に呆然としていた。
――まぁ自分の能力で発現させた物なんだけど……。
そんな俺とは違い、有能なスカーレットはこの部屋にいたケシカとランナとシギサに現状を色々と説明してくれていた。優れた部下を持つと上司は楽なものである。
「エルきゅーーん!!!」
するとそこへセリーヌが物凄い勢いで駆け寄って来た。
「ど、どうしたの、セリーヌ?」
「どうしたのって、エルきゅん。女心がわかってないわねぇ?」
「え、え、何が!?」
セリーヌは頬を膨らませ、不機嫌そうな表情を見せた。俺はそんなセリーヌに何と答えるのが正解なのかわからず、戸惑い、焦っていた。
――女心だぁ……?
そんなのわかるわけないだろ!
俺は前世で四十年、今世で十年もの間、童貞を貫いている男だぞ!?
女心がわかっていたら……今頃俺だってェ……!!
俺はそんな意味の無い愚痴を心の中で吐血しながら吐き散らした。
しかしそんな事は口に出せる訳もなく、俺はいつも通り子供ムーブを続けた。
「えーわかんないよー。だって僕十歳だよー?」
「それでもよー! ほら、見て? 私の姿を見て何か気づかない?」
そう言うとセリーヌは俺の目の前でスカートの裾を摘みクルリと回って見せた。
そして俺は、彼女が俺に何を求めているのかようやく気が付いた。
――あぁ、そういう事か。
セリーヌのやつ、仮装したから見て欲しかったんだな。
うんうん。確かにいつもの聖女らしい服装とは違って、今は華やかで煌びやかなピンク色のドレスに身を包み、キラキラ光るティアラを頭に乗せている。
ここは……褒めるべきだよな?
童貞の俺にもそれくらいはわかる……馬鹿にするなよ?
「あ! セリーヌ、仮装したんだね! お姫様みたいでとっても綺麗だよ!」
俺は思いつく限り――――というよりも、思った感想をそのままセリーヌに伝えた。
すると彼女は口を手で押さえ、目を潤ませ始めた。
「ほんと……!? エルきゅんに褒めて貰えるとすっごく嬉しいわぁ! やっぱりお姫様にして正解だったわ……! これで私、エルきゅんのお嫁さんに――――」
刹那――――近くにいたスカーレットが俺達の間に割って入った。
「セリーヌ? あなたがエル様の奥様になろうなど、千年早いですよ?」
「なっ……!? スカーレット!? あなたいつの間にそんな格好に!?」
セリーヌはスカーレットの言葉よりも先に、その姿に驚き声を上げた。
それもそのはず、スカーレットはいつの間にかセリーヌと同様に姫仕様の淡い青のドレスに着替えていたのだ。
「セリーヌ。あなたがドレスに着替えるなら私も着替えるに決まっているでしょう?」
スカーレットはさも当然かのようにセリーヌにそう返答した。
――どんな理屈だよ、そりゃあ?
俺はそんな言葉を心の中で呟いた。
「意味わからないわよ! スカーレット、もしかしてあなたもエルきゅんの――――」
「何を言っているのですか? 私はエル様のお世話係。セリーヌよりもソコへ近い事くらいわからないのですか?」
二人はまたしても小競り合いを始めた。
――こんな美女二人が俺の取り合いなんてほんと……。
最高かよ、もっとやれ。
その後も二人は暫くの間、小競り合いを続けていた。
俺は次にリリィに目をやった。
どうやらアイリスを追い掛けてちょろちょろと走り回っているようだ。
「アイリスお姉ちゃん……! 見て、私のこの格好……!」
「だから……。いつ私があんたの姉になったのよ!? しかもそんな格好までして……!」
アイリスが迷惑そうに言うリリィの格好とは、いつもの青を基調とした魔女っ子スタイルとは違い、黒と赤の大人っぽいドレスに身を包み完全にアイリスを意識したものだった。
「どうかな……? これで私もアイリスお姉ちゃんみたいに綺麗でカッコよくなれたかな……?」
「あんたねぇ……。見た目だけ似せても私のように気高く美しい女にはなれないのよ? よく胸に無駄な脂肪を蓄えた馬鹿な女がいるでしょう? あんなのは私からしたら全っ然美しくないの! いい、リリィ? 女の魅力は胸じゃないの。総合的なバランスで女の魅力は決まるのよ!」
「ほぉ、さすがはアイリスお姉ちゃん……! リリィにもその女の魅力、教えて欲しい……!」
アイリスは先まで迷惑そうにしていたのに突然、自慢げに女の魅力について語り始めた。
リリィはそんなアイリスに羨望の眼差しを送り、教えを乞うた。
――何だアイリスのやつ。
リリィに言い寄られて迷惑そうにしていたのに、意外と満更でもなさそうじゃないか。
これは放っておいてもよさそうだな。
それにしてもリリィはアイリスの何にそんなに惹かれているのだろうか。
やはり貧しい部分がある者同士、何か感じるものがあるのだろうか。
俺はそんな事を考えつつ、次はボンズに目をやった。
ボンズはやはりと言うべきか、ケシカとランナと話をしていた。
「ね、ねぇ! 二人はお名前なんて言うのかな?」
「「私達はケシカとランナだよー! ていうかお兄さんはだぁれ?」」
「お、オイラはボンズって言うんだ! ケシカ君とランナちゃん、よろしくね。それにしても二人は変わった格好をしているね?」
「「うん! 私達は研究者だからね! 研究者にとって白衣は正装なのだよ!」」
「そうなんだぁー! ふーん、可愛いね……!」
同じ子供好きのスカーレットとは違い、ボンズはケシカとランナと普通に会話をしていた。
ボンズにはスカーレットの様な滲み出るロリショタコン特有の気持ち悪さが無いからだろうか。
優しく柔らかに、しかし物怖じせず話しかけるその姿勢は子供にも好印象のようだ。
――その度胸をもう少し戦闘へ向けてくれると俺達も助かるのだが。
まぁケシカとランナもボンズと話すのは楽しそうだし、こっちも大丈夫だろう。
そして最後に、俺はユーリに目をやった。
するとユーリはシギサに何やら詰めよっていた――――が、何か様子がおかしかった。
「おぉい……! シギサァ! おれらァ君を許してらいからなぁ……!!」
「ゆ、ユーリさん? あなた何を言っているのかわかりませんよ?」
「らにぃ? そもそも君が俺らちを騙したのがいけないんらぞぉ!」
――あぁ、あれは完全に酔っ払っているな……。
完全に呂律が回ってないし、シギサも戸惑っているな。
ていうかあいつ一六歳とかじゃなかったか?
この世界はいくつから酒を飲んでいいのかは知らないけど、大丈夫……なのか?
※未成年の飲酒は法律で禁止されています。ここは異世界なので良い子の皆は混同しないようにしましょう。
「だから……ちゃんと私はお金を返しましたし、謝ったじゃないですか!」
「あぁー? 謝ったからって、らにをしてもいいって言うのかぁ? それは違うだろお!」
――あぁ、いつになく面倒くさく仕上がっているな、ユーリのやつ。
さすがにあれは止めた方がいいか?
シギサにはもうお仕置も済ませたし、返金もしてもらった。
これからは俺の為に働いてもらうのだから、ここで助けてやって恩を売っておくのも悪くないか。
「おーい、ユーリー! もうそのくらいに――――」
俺がユーリの元へ走って行き、そう声を掛けると彼はくるっと向き直り、焦点の合っていない目で見つめてきた。
「おぉー? エルぅー! そもそも君は一体らんなんんだぁ!? そんな角を生やして目も赤くしてぇ……。あんな強いスカーレットを近くにおいて、アイリスや双子ちゃんとも仲良しだなんてぇー」
「な、何言ってるの? これは仮装だってさっきも――――」
「うぅーん? なんかあやしぃーなー? さてはエルが本当に魔王だったりしてぇー! ……ってそんな訳ないかぁー! アハハハハハッ……ぐーぐー」
そしてユーリはそのまま力尽きた。
――酔っていたとはいえ、今コイツは俺の事を魔王だと言い当てた。
どこまで意識がはっきりしていて、記憶があるのかはわからないが、今後用心しておいた方がよさそうだ。
いつまでもただのアホだとばかり高を括っていたら、目的を果たす前に俺はユーリに殺されるかもしれない。
ユーリはアホだが良い奴だ。
ここまで一緒に旅をして来てそれは確信へと変わっていた。
そんな彼に俺を殺させるなんて事は、出来ればさせたくない。
その為にも俺は『魔族と人間の争いを止める』という目的を必ず果たさなくてはいけない。
俺は再度、自分の目的をハッキリとさせ酔い潰れたユーリの上に座りそんな事を考えていた。
そしてこの後も暫く続いた仮装パーティーは遂に終わりを迎えた。
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