41話 迫る危機
勇者パーティーの面々が俺とスカーレットを探しに、シギサのオフィスの前まで辿り着いていた頃。
俺はアイリス達に回復薬の製造と販売を命じて、人間と魔族の融和のきっかけになればと考えていた。
「このまま人間と魔族が上手く関係を築いていければいいんだがな……」
「そうですね。全てはエル様の崇高な野望を叶える為にですね」
俺がそう呟くと、ぬるぬるのスカーレットが横から声を掛けて来た。
しかし俺はこのスカーレットの発言に気になる点があった。
――俺の崇高な野望?
何だそれ?
俺は人間と魔族の争いを辞めさせたいだけなんだけど?
え、大丈夫かな……?
スカーレットは俺の真意に気付いて、ずっと行動を共にしてくれているはず……だよな?
「スカーレット。俺のやろうとしている事は、しっかりと理解しておるな?」
俺がそう確認するとスカーレットは真面目な表情で口を開いた。
「はい。勿論です。今回の件も、私はエル様の野望の実現の為、完璧な仕事が出来たと自負しております」
――あれで……?
ロリショタにぬるぬるローションまみれにされて完璧な仕事をしたと……?
スカーレットの中で俺の野望ってどんな物になっているんだ?
ていうか、ぬるぬるになることが完璧な仕事になる俺の野望って何だよ?
「そ、そうか。それはご苦労だったな……」
「ありがとうございます。加えて今回は、五芒星の一角であるアイリス様もこちらへ引き入れる事に成功しましたので、野望実現に向けて大きな一歩を踏み出せたと思います」
「そうだな。このまま上手くいってくれたらいいのだがな」
俺はスカーレットにそう返すと遠い目をした。
――スカーレットの言う通り、五芒星であるアイリスが俺の思惑通りに動いてくれるのはかなりのプラスになるだろう。
でも懸念点もある。それは他の五芒星のメンツだ。
今回こそアイリスが俺を魔王だと認め、俺の言う事を素直に聞いてくれたから上手くいったけど、他の奴らはアイリスと同じ様に従ってくれるだろうか。
もしそいつらが俺の言う事を聞かず、今度こそ本当に人間を惨殺して回ったら?
今回はたまたま媚薬だったけど、次はこれが毒薬だったら?
前回までの様に弱い知恵無き魔物ではなく、知恵が働く上位の魔物達を引き連れて街に進軍して来たらどうする?
そしてこれらが全て現実のものとなってしまった時、俺は魔族の王としてそいつらにどう始末をつければいい?
俺は知恵や意思がある魔物達を今まで通り殺せるのか?
ドンドンドン……! ――――『すいませーん!』
俺がそんな事を考えていると、オフィスの扉を叩く音と誰かの声が聞こえて来た。
「ん? 誰か来たぞ?」
「そうですね。このオフィスの所有者はシギサですから、奴への客では?」
「そうだな。シギサ! 誰か来たぞ!?」
俺はシギサにそう声を掛けた。
すると俺の目の前に大慌てでシギサが走り寄って来た。
「はいぃ! 魔王様! 私に何か御用でしょうか!?」
「何をいきいきとしているのだ? 客が来たぞと言うておるのだ。早く出ないか」
俺は何故かいきいきとしているシギサにそう返した。
すると彼はすぐに玄関の方へと向かった。
◇
そして暫くするとシギサは慌てて奥の部屋へと戻って来た。
「どうした、シギサ? そんなに慌てて?」
「はぁはぁ……! 大変です、魔王様! はぁはぁ。勇者が……! 勇者がここへ……!!」
「なにィ!? 貴様、そんな魔族丸出しの状態で外へ出たのか!?」
「はい……。完全に失念しておりました……」
――おいおい、どうすんだ?
ユーリ達がここに来てしまったぞ!?
中まで入って来られたら俺とスカーレットが魔族だとバレてしまう……!
しかもこの馬鹿が魔族丸出しの状態でユーリ達とエンカウントしてしまっているからもう言い逃れも出来ないだろうし……。
ここで俺とスカーレットが魔族に捕まったフリをしてユーリ達を誤魔化す事は出来るとは思うけど、それだとユーリ達とシギサ達の戦闘は避けられないだろう。
そうなるとせっかくの俺の計画が台無しになってしまう……!
それは困る……!
何とかしないと……!
俺が頭を悩ませていると、未だぬるぬるのスカーレットが俺に声を掛けてきた。
「エル様。ここは私にお任せ頂けませんでしょうか?」
「何? 貴様、この状況を打破出来るのか?」
「勿論です。このスカーレット。必ずやエル様のご期待に沿う結果をご覧にいれます」
「そうか。なら頼む」
俺がそう言うとスカーレットは威勢よく返事をし、ぬるぬるのまま玄関の方へと向かって行った。
――スカーレットがどうするつもりなのかはわからないけど、まぁ何か自信満々の様子だったし大丈夫だろ。
いや、でもこうやって俺が任せてしまったからスカーレットはぬるぬるになってしまったんだっけ。
…………うん。俺も行くか。
「シギサ! ケシカ! ランナ!」
「「「はい!!!」」」
「貴様らの中で人間に化ける魔法が使える者は?」
「「はーい! 私達、使えるよー!!」」
「なら二人は人間に化けろ。それとシギサにもその魔法を使ってやれ」
「「はーい!」」
「それから。ここへ勇者達がやって来ても俺の事は魔王と呼ぶな。良いな?」
「「……? はあい!」」
「仰せのままに……。魔王様」
「だから呼ぶなと言っておるだろうが。馬鹿なのか? とりあえず俺はスカーレットを追う。貴様らはここで待て」
俺は三人にそう命じると、スカーレットを追って玄関の方へと向かった。
◇
玄関へ到着するとスカーレットは既にユーリ達と合流していた。
「スカーレット!? 何だかすごいぬるぬるだけど、どうしたの!? ぬるぬるのスカーレット……」
「この中で一体何が……えへぇ」
「色々あったのです」
スカーレットのぬるぬるとした姿にユーリとボンズは鼻の下を伸ばしにやけていた。
――わかる。わかるぞ。
ぬるぬるした美女を目の前にしたらそういう反応になるよな。
だが、お前達は知らない。
彼女が如何にしてぬるぬるになったのかを。
それを知れば新たな扉が開けるというのに……。
俺がそんな事を考えているとリリィが口を開いた。
「あー、また二人とも鼻の下伸ばしてる……。男ってほんとにやだ……」
リリィはそんな男二人に不快感を露にしていた。
――ぬるぬるの美女を見て鼻の下を伸ばす事の何がそんなにいけないと言うのだろうか。
健全な青少年であれば当然の反応だと思えるのは果たして俺だけだろうか。
すると次はリリィの横にいたセリーヌが慌てた様子でスカーレットに詰め寄った。
「スカーレット! それよりもさっき魔族がいたんだけど!? あなたも何故かぬるぬるしているし、何がどうなっているの!? エルきゅんは無事なの!?」
セリーヌは必死な表情でスカーレットにそう叫んでいた。
――セリーヌ……。
そんなに俺の事を心配してくれていたのか。
本当にいい子だな。戦闘中にドSじゃなければ……な。
「エル様は大丈夫です。私もぬるぬるにされただけで無事です。それに先程の男も魔族ではありません」
「いやいや、スカーレット。さっきの男は完全に魔族だったぞ!? 目が赤かったし!」
「角も生えてたし、牙もあったよ……」
スカーレットの言葉にユーリとリリィはシギサの外見の特徴を上げて反論した。
――さて、スカーレットはどんな言い訳をするつもりなのかな?
するとスカーレットはとても真剣な表情で口を開いた。
そして彼女が口にしたまさかの言い訳によって事態は思いもよらない方向へと向かっていくのだった。
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