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転生ショタ魔王、世界平和の為に家出する〜チートを持ったお人好しによる世直し旅〜  作者: 青 王(あおきんぐ)
第四章 ウォルトス編

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38話 一方その頃凸凹コンビは


 時は少し遡り、エルとスカーレットがユーリとボンズを置いてシギサのオフィスへと向かって行った後。

 ユーリとボンズの凸凹コンビはその場に立ち尽くしていた。



「あーあ。ボンズ、俺達置いていかれちゃったよ?」


「本当ですね。オイラ達が足手まといだからでしょうか……」


 二人は自分達がシギサのオフィスへ連れて行ってもらえなかった事にショックを受けていた。

 


「ていうか俺達、勇者パーティーだよね?」


「はい。ユーリさんは勇者でオイラはタンクです」


「だよね? それなのに勇者パーティーじゃない二人に置いて行かれるって、俺達もしかして相当やばい?」


「…………かもしれないですね」


 二人は顔を見合せ更に肩を落とした。

 

 しかしこんな時こそ勇者の出番である。

 他の誰かの元気がない時こそ、一人でも元気を出すのが真の勇者である。


 

「いや、駄目だ! このままじゃ俺達は魔王を倒せないよ!」


「そうですね! オイラ達、強くなりましょう!」


 そして二人は魔王エルを倒す為、強くなる事を決意したのだった。

 エルは単にユーリとボンズが弱いからという理由で置いて行ったわけではなかったのだが、そんな彼らにツッコミを入れる人は残念ながら周りに一人もいなかった。


 ◇

 

 

 そして二人は唐突に強くなる方法を考え始めた。


「でも強くなるって実際何をすればいいんだろう?」


「やっぱり修行とかではないでしょうか?」


「修行かぁー! ボンズは修行とかした事あるの?」


 ユーリがそう聞くとボンズは首をブンブンと横に振った。

 

「ありません! オイラはただ身体が頑丈なだけです!」


「それ自分で言っちゃうの? でも俺達って何で勇者パーティーに選ばれたんだろうね?」


「確かにそうですよね。セリーヌさんは聖女なのに全然回復してくれないですし、リリィは仲間にも魔法当てちゃうし……」


 そしてすぐに修行についての話から勇者パーティーに選ばれた理由へと脱線した。


「だよねー。俺はある日、目が覚めたら頭の中に『あなたは勇者に選ばれました』って女の人の声で言われたんだよね」


「そうなんですか!? オイラと同じですね! オイラも朝起きたら『あなたは勇者パーティーのタンクに選ばれました』って言われました!」


「やっぱり一緒だったんだね! じゃあセリーヌやリリィも同じなのかなー?」


「恐らくはそうなのでしょうね。基準はわかりませんが……」


 二人は予想に反し、とても興味深い話を展開していった。

 もしここにエルがいたら『え!? 勇者パーティーに選ばれるってそういう事なの!?』とツッコミが入りそうな話である。


 

「……って! 違う違う! 俺達強くなりたいんでしょ!?」


 するとユーリは首を横に振り、口を開いた。


「いや、ユーリさんが先に話を逸らしたんですよ?」


「え? そうだっけ? んーまぁいいや! それより修行! 修行ってどんなのがいいのかな?」


 ユーリの質問にボンズは首を傾げながら考え始める。

 この時既に二人はエルとスカーレットに置いて行かれた事など忘れていたのだった。


 するとボンズは何かを思い付いたのかおもむろに口を開いた。



「……オイラの故郷での修行といえば、やっぱり滝行でしょうか」


「滝行? なにそれ!?」


 ボンズが提案したのは滝行。

 ユーリはそれをどんなものか知らず、興味津々で聞き返した。

 

「オイラの故郷は山の中なんですけど、近くに大きな滝があるんです。故郷の戦士達は皆そこの滝に打たれて修行していました」


「皆って事はボンズも!?」


「お、オイラは……」


 そう言うとボンズは暗い表情で俯いてしまった。

 彼には何か言いたくない過去がある様子だった。


「そ、そうなんだ! でもその滝に打たれるのって何か意味あるの?」

 

「意味……ですか? えーっと……冷たく激しい滝に打たれて精神力を鍛える事……でしょうか?」


「へぇー! いいね! じゃあその滝行っていうのやってみようよ!」


 ユーリは滝行の存在を知り、早速試したくなったようだ。

 そもそも修行とは一朝一夕で効果を得られるものではなく、長い期間続ける事で成長を実感出来るものなのだが……。

 彼はそんなことを知る由もなく「強くなるぞー!」と張り切っていた。


 

「え!? でもこんな街中に滝なんてありませんよ!?」


「え……? 滝が無くても滝行は出来るでしょ?」


 ボンズはユーリが何を言っているのか理解出来ないといった表情で彼を見つめていた。


「ユーリさん……。"滝"行なんです……。滝が無いと滝行は出来ません!」


「えーそうなの? この街には沢山の水があるからいいと思ったんだけどなー?」


 ユーリはそう言いながら残念そうな表情を浮かべる。


「ですから他の修行を――――」


「――――あ……! そうだ! いいこと思いついたよ!」


 ボンズがそう提案しようとすると、ユーリは何かを思い付いたのか突然走り出した。


 

「え……!? どうしたんですか!?」


「噴水だよ! この街には滝は無いけど、噴水があったよ!!」


「はいー? ちょっと言っている意味がわからないんですけどー?」


 そしてユーリは噴水がある広場を目指して一目散に走って行く。

 ボンズは彼の言葉の意味を理解出来ないまま、とりあえず必死について行った。



 ◇



 そして噴水広場へとたどり着いたユーリは噴水の前で立ち止まった。

 後から追いついたボンズもその横に立ち止まり、噴水を見つめて何かをやろうとしているユーリに声を掛けた。


「はぁはぁ……。ユーリさん……何を、するつもり……ですか?」


「ここの噴水って本当に大きいよねー」


 ユーリは噴水が噴き出している水の一番上を見上げた。


 ユーリの言う通り、このフォルトスの噴水は世界で最も大きいことで有名で、世界中からその噴水を見に観光客が集まる程であった。

 

 そして噴水から噴き出された水は空高くまで上がり、そこそこの勢いで下へと落ちて行く。それを眺めるユーリにボンズは怪訝な顔で声を掛けた。


「そ、そうですね……。って、ユーリさん……?」


「ねぇ、この高さと勢いなら十分修行になるんじゃない?」


「はい!? なりませんって! だからあれは滝で行うから意味があるのであって……! しかもここは街中で人も沢山いますし――――」


 ボンズが全てを言い終わる前に、ユーリは衣服を脱ぎ始めた。


「な、な、何してるんですか!? ユーリさん!? ここ、街中ですよ!? 人が沢山いるのですよ!?」


「別に全裸になるわけじゃないし大丈夫だよ! さぁ、ボンズも一緒に! ほら早く!」


 ボンズが戸惑いを見せる中、ユーリは下着一枚の姿になりボンズへ手を差し伸べた。


「い、いやオイラはいいです……。他に出来る修行を考えますので……」


「そ? じゃあ俺一人で強くなっちゃうもんね! それ!」


 ユーリはそう言うとそのまま噴水の水が落ちてくる受け皿の部分に飛び込んだ。

 そして噴き上げられた水が落ちてくる場所へ座り込んだ。


「よし、ここだな。――――うわぁぁぁああ……!!! 意外と水の勢いが強いよぉぉぉ!? 見てよボンズ!!」


 ユーリは正に滝行の如く、肩に落ちてくる水を感じながら嬉しそうにボンズに話し掛ける。

 そしてそんな彼の奇行に街の人々も噴水へ集まり始めた。


「ゆ、ユーリさん……! 人が集まって来ましたよ……! お、オイラもう知りませんからね……!?」


「えー? 別に悪い事してるわけじゃないし大丈夫だよー!」


 しかしボンズの忠告も聞かず、脳天気な事を言い修行にすらなっていない奇行を続けるユーリの元へ、天罰はやはり下るのだった。



「コラァ!!!! そこのお前!! 街のシンボルの噴水で何をしとるかァ!! 早うそこから出んかァ!!」


 街の警備隊の男が怒鳴り声を上げながらユーリの元へ走って来たのだった。

 しかしユーリは悪い事をしているという意識がないのか、一切悪びれる様子を見せず奇行を続ける。

 

「いえ、俺はここで修行しているだけなので大丈夫です!」


「大丈夫な事あるか!! 早く出ろ、このアホめぇ!!!」


 そして警備隊の男はユーリの腕を掴み、噴水から引っ張り出す。


「えぇー、せっかく修行してたのにぃー」


「修行なら他所でやりなさい! 街中でするな!!」


 そしてびしょ濡れのユーリはその場に正座させられ警備隊の男にこっぴどく叱られた。

 

「本当に申し訳ありません……。オイラ止めたんですけど……」


「あなたがこのアホの保護者ですか? 今後二度とこんなことがないようにしっかりと躾なさって下さいね?」


「はい……」


 外見だけは立派なボンズは警備隊の男にユーリの保護者と思われてしまい、少しの注意を受けた。

 そしてボンズはしおらしく頭を下げた。


 

「俺は子供かっ!!」


「ユーリさん……?」


「うっ……! ご……ごめんなさい……」


 そして一切反省の色を見せないユーリはそんなツッコミを入れるが、ボンズから冷たい目で見られると一気にしゅんとしてしまった。



 このユーリが引き起こした一件からフォルトスの街の噴水の前には『飛び込み、遊泳禁止』という看板が立てられる事になったそうだ。



 

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