36話 お仕置きの時間
俺が真実を告げると固まって動かなくなってしまったアイリス。
そしてケシカとランナの二人は素知らぬ顔で天井を見ていた。
「どうした、貴様ら? 何やら様子がおかしいな?」
俺はそんな二人に声を掛けた。
すると二人は肩をビクッと震わせてから口を開いた。
「「そ、そんな事ないですよ!? ひゅーひゅーひゅー」」
二人はそう言うとわざとらしく口笛を吹きながら目を逸らした。
「絵に描いたような反応だな……。嘘をついているのが丸わかりだぞ?」
「「そ、そんな事ないですよ……! ひゅーひゅー」」
それでも尚、誤魔化し通そうとする二人。
――これでは埒が明かないな。
何を隠しているのかは知らないが、嘘は良くないな。
子供の内から嘘をつく事を覚えるとロクな大人にならんからな。
「おい、アイリス! 貴様、いつまでそうしているつもりだ?」
俺が声を掛けるとアイリスは目をパチパチとさせ、我に返った。
「は、はい……! 申し訳ありません、魔王様。私の指示とあまりに違う現状だった為に、気が動転してしまいました……!」
「そうか。それで? 貴様はこやつらに何と指示を出したのだ?」
「それは先程申し上げた通り、魔族用の回復薬を作れと……」
――声色や反応を見るにアイリスは嘘をついていなさそうだな。
てことは、やはりこのロリショタが勝手に媚薬を作って売り捌いていたという事だな?
「そうか。わかった。ではケシカ、ランナ」
「「は、はいぃ!!」」
「何故貴様らはアイリスの命令に従わず、勝手に媚薬なんぞを作り、人間に売り捌いておったのだ?」
「「そ、それは……」」
「それは?」
「「アイリス様がドケチで研究費をロクにくれないからです!!」」
「は?」
「へ……?」
二人が媚薬を作っていた理由があまりに予想外だった為に、俺とアイリスは唖然としていた。
すると二人は更にアイリスの愚痴を言い続けた。
「「それにアイリス様は私達に研究をさせて自分は遊んでばっかりなんです! それなのに研究費はくれないし、休みもくれない。だから私達は自分達でお金を稼ごうと思ったんです!! 開発中に偶然出来た媚薬をそこの馬鹿な人間に売らせて……!」」
――真っ当だ……!
まさかの真っ当な理由だった……!
ブラック企業で働くサラリーマンが副業を始めるのと同じ思考だ……!
そして哀れだ……!
シギサが実に哀れだ……!
「そ、そうか……。因みに研究費は毎月いくら貰っていたのだ?」
「「月に五千ゴルドです!」」
「五千!? 確かにそれは少ないな……」
「「ですよね!? こんなのじゃ薬を入れる瓶すらまともに買えませんよ!!」」
――確かにこのロリショタが言っている事は筋が通っている。
まぁ売っている商品が問題ではあるのだが……。
すると唖然としていたアイリスがおもむろに口を開いた。
「ち、違うのです、魔王様!! 私は研究費の相場を知らず、子供が欲しがるお金なんてせいぜい、五千ゴルドくらいかと……!」
「ならば、調べればよかったであろう? それとも何か? 自分は遊び呆けていてそんな時間は無かったと申すか?」
「ぐっ……それは……」
俺はいとも容易くアイリスを論破した。
そして俺はこの三人にお仕置をする事に決めた。
「ケシカとランナが言うように、金払いが悪く、部下に仕事を丸投げして自分は遊び呆けていたのはどう考えてもアイリスが悪い。それはわかるな?」
「はい……」
「そして、ケシカとランナ。自分で金を稼ごうと考えたところまでは良いが、扱った商品と価格設定が良くなかった。それもわかるな?」
「「はい……」」
「貴様らは人間に、他者に、多大な迷惑をかけた。俺の言う事を聞かずにな! よって俺は貴様らにお仕置をする!」
「「「も、申し訳ありませんでしたぁ……!!!」」」
俺がそう宣言すると、三人は膝をつき平謝りをした。
――また説教みたいになってしまっているな……。
時折幼児化した性格も出たりはするが、基本は四〇歳のおじさん思考なんだよな、俺。
それにしてもどうやってお仕置するかだよな。
俺のやり方では真意が上手く伝わらない事がカマセーヌとヤラカスの件で立証されてるし……。
三度目の正直なんてものが通用する程、現実は甘くないという事もわかっている。
とにもかくにも、まずはお仕置だ。
今までの二人とは違って、今回は女と子供だ。
あまり暴力的なのは少し気が引けるし……。
俺は暫く考えた後、三人へのお仕置き内容を決定した。
◇
「さて、貴様ら……。お仕置きの時間だ。――――まずはケシカとランナ。貴様らは媚薬というよからぬ薬を作り、人間に高値で売り付けた。その罰として、そこにいる『ヌルヌルお姉さんに可愛がってもらうの刑』に処す!」
俺はそう言いながら、未だヌルヌルしているスカーレットの方を指さした。
「……んふふ。いらっしゃい? 子猫ちゃん達……♡」
「「ひぇーーー! やだよーー!!」」
スカーレットは突然自分に白羽の矢が立ったことに驚いていたが、すぐに状況を理解しローションをかき混ぜながら二人に手招きをした。
――まったくこの女は有能なんだが、無能なんだか……。
俺はそのまま嫌がる二人をスカーレットの元へ放り込んだ。
「んふふ……。いらっしゃい。たっぷり可愛がってあげるからね……♡」
「「ひぎゃあああーーーー!!! 助けてぇーー!!! 許してぇ! 魔王様ぁぁぁ!!!」」
スカーレットがロリショタに何をしているかはご想像にお任せするが、それはもう正に地獄絵図だった。
俺は心を鬼にして見て見ぬふりをした。
「さて、次はアイリスだな」
俺がそう言いアイリスに目を向けると、彼女は引き攣った笑顔を浮かべていた。
「ま、魔王様……? 私にはどんなお仕置きを……? 出来ればアレよりはマシなやつでお願いしたいのですが……」
アイリスは俺の顔をじっと見つめ涙目になりながら懇願した。
「うーむ。気持ちはわからんでもないが、元はと言えば貴様の監督不行届きだからなぁ」
「そ、そんな……!? どうか……どうか……!!」
アイリスは相当あのヌルヌル地獄が嫌なのか、涙を流し始めた。
だが、部下が先にお仕置をくらっているのだ。
致し方ない。
――えっと?
吸血鬼は何が苦手なんだっけ?
日光?
いやいや、消滅してしまう。
あ、そういえば十字架を見ると吸血鬼は自分の罪深さを思い出して、自責の念に駆られるって子供の頃に見た本に書いてあったな。
よし、今回は自分のミスを悔い改めて欲しいわけだし、それでいこう。
「貴様へのお仕置きが決まったぞ」
「な、何でしょうか……? ヌルヌルだけは……」
「安心しろ。ヌルヌルではない。――――【十字架 発現】! 【にんにくの首飾り 発現】!!」
俺は言霊の能力で大きな十字架とにんにくの首飾りを発現させた。
「な、何でしょうかこれは……?」
「貴様は今からこの首飾りを身に付け、十字架を見ながら自らの愚かな行いを悔いてもらう。それから逃げられんように貴様の動きを止めさせて貰うからな。――――【金縛り】!」
「…………っ!!」
(嫌! 嫌! 何これ動けない……!!)
俺はアイリスの動きを【金縛り】で止めると、彼女の首ににんにくの首飾りをかけ、目の前に大きな十字架を置いた。
「それではアイリス。存分に自責の念に駆られ、愚かな行いを悔いるがよい」
「………………!!」
(何これ、この首飾り臭すぎるっ……!! 嫌嫌嫌ーー!! それにこの十字架の置物……。見ていると段々自分のしてきた事がとても罪深い事に思えて来たわ? …………はぁ。私ってなんて愚かで傲慢な女だったの……? ごめんなさい……今まで本当にごめんなさい……)
アイリスは涙を流しながら十字架を眺めていた。
俺はそんな彼女を見て、少しやり過ぎたかなと自責の念に駆られた。
――そして残るはシギサだが……。
色々考えた結果。彼には放置するというお仕置をした。
◇
それから暫くの間お仕置を続け、頃合を見て俺は全てを切り上げた。
ケシカとランナはヌルヌルになりながら泣きじゃくり、アイリスは目を真っ赤にしながら『ごめんなさい』を連呼していた。
たっぷり反省させたところで、俺はこの三人――――いや、放置しているシギサを含めた四人の今後について考え始めた。
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