32話 不審な動き
シギサに連れられオフィスへと向かっている俺とスカーレットは、華やかで美しいウォルトスの印象とは異なる薄暗い路地へと入って来ていた。
「ここもウォルトスなのですか? 先程までとは随分雰囲気が変わりましたが……?」
「えぇそうですよ。どんな綺麗な街にも表と裏があります。ここは所謂ウォルトスの裏の部分でしょうね」
スカーレットの質問に淡々と答えるシギサは、相変わらず貼り付けた笑顔を見せていた。
俺はそんなシギサの事を、魔人が人間に化けているのではないかと疑ったが、それを見抜く事が出来るスカーレットが何も反応を示さないところを見るに、彼は人間なのだろうと確信した。
それにシギサが魔人であるのならば、スカーレットが魔人である事に気付いて何らかのアクションを起こして来るはずだからだ。
――なら、コイツはただ単に魔族に遣われているだけだというのか?
何故人間が魔族に従うんだ?
何故裏にいるであろう魔族が、自ら行動を起こさないんだ?
色々な疑問が俺の頭の中で交錯していると、とうとうシギサの言うオフィスに到着したようだ。
「さぁ、どうぞ中へ」
扉を開けたシギサにそう手招きされ、俺とスカーレットはオフィスの中へと入った。
◇
オフィスの中へ入ると、見えている範囲は思いの外、普通の家で安堵した。
そしてあのアホ二人は本当に、この男の嘘に騙されていたんだなと再確認した。
「そちらにお掛けになってお待ち下さい。今、商品を取って参ります」
そう言うとシギサは奥の部屋へと入って行った。
ようやくスカーレットと二人きりになれた俺は大きなソファーに腰掛け、スカーレットに話を始めた。
「スカーレット、このオフィスについてどう思う?」
「はい。とてもきな臭いですね。商人のオフィスであれば表通りにあってもおかしくはないですから」
「でもまぁ詐欺まがいな売り方で生計を立てている悪徳商人だからな。しかも魔族が絡んでいるとなるとそう易々と表通りにオフィスはかまえられんだろう」
「仰る通りかと」
スカーレットは俺と話しながらも、部屋の中をキョロキョロと見回して怪しい物が無いか、探しているようだった。
――さっきの言葉通り、スカーレットもこのオフィスに漂うきな臭い雰囲気を相当気にしているみたいだな。
さて、じゃあ俺もここについて色々と調べてみるか。
そう思い、俺は言霊の能力で【探索】をおこなった。
すると頭の中に浮かび上がるレーダーに、俺とスカーレットの他に三つの反応があった。
――一つは人間の反応だから、恐らく薬を取りに行ったシギサ。
ならあと二つは……。
「スカーレット。どうやらこのオフィスにはシギサ以外にあと二人いるようだ。しかもその二人は魔族だ」
「さすがはエル様。私が至らぬばかりにそんな事まで調べて頂いて。申し訳ありません」
「いや、良い。して、その二人。ケシカとランナだと思うか?」
「はい。恐らくは……」
――だよなぁー。
こんな怪しげなオフィスに、人間にはおそらく作れないだろう超強い媚薬と、シギサ以外の二つの魔族の反応。
加えてスカーレットが昨日言っていた話から察するに……。
ほぼ間違いなくその二人だろうなぁ……。
ったく。どいつもこいつも俺の言う事を聞かずに好き勝手やりやがって……。
今日という今日は絶対に許さないぞ……!
その双子を締め上げて、五芒星のアイリスを引っ張り出してやる……!
俺がそう決心していると、頭に浮かぶレーダーから突然、人間の反応が消えた。
「…………っ!?」
「どうされました、エル様!?」
「シギサが……死んだ……」
「何ですって……!?」
――このオフィスにいる人間はシギサただ一人だ。
そして俺のレーダーから人間の反応が消えたということは即ち…………そういう事だ。
「アイツら……。人間を殺しやがったな……」
俺は怒りに震えていた。
スカーレットも心配そうに俺を見つめている。
「エル様……お気を確かに……!」
「アイツら……!! なんの罪も無い人間を殺しやが…………いや待てよ? シギサはなんの罪も無いことはないな。詐欺師だし……」
「……仰る通りです」
「殺されても文句言えないよな?」
「はい。奴は紛れもなく悪人でございます」
「だよな……」
俺がそんな事に気が付きスカーレットと確認し合っていると、またしてもレーダーに不審な動きが見られた。
「はぁ……!?」
「今度はどうなされたのですか……!?」
「魔族が一人増えた……」
「え……!?」
そう。俺のレーダーに魔族の反応が一つ増えたのだ。
――何故突然……?
まさかワープか!?
俺がそう考えているとまたしても新たに魔族の反応が一つ増えた。
「また増えたぞ……!?」
「何が起こっているのでしょうか……」
すると次は一つ前に現れた魔族の反応が突然消えた。
「次は一人消えた……」
突然魔族の反応が増えたり減ったりした事から察するに、シギサの様に死んだ場合は勿論の事、ワープゲートを通して発現や消失をしたとしても反応の増減があるのだろう。
「つまりはシギサが死に、一人の魔族がやって来て、その後もう一人追加したという事だろう」
「初めからいた二人がケシカとランナだと仮定して、今の状況から推察すると、一人目の魔族は恐らくアイリス様でしょう。そこで二人に何らかの指示を出し、もう一人の魔族を呼び寄せて、ワープゲートで魔王城へと帰って行った。そういう事でしょうか?」
「あぁ。そうだ」
――いやいや、俺そこまで分かってなかったよ……!?
スカーレット、半端ないって!
もうー、このお世話係半端ないって!
俺みたいにレーダー見てるわけでもないのに、めっちゃ的確に状況整理して伝えてくるもん!
そんなん出来ひんやん、普通……!
そんなん出来る!?
言っといてや! 出来るんやったら……。
「では、アイリス様が戻って来られない内に、三人の魔族を叩きに行きましょう」
「そ、そうだな……!」
そして俺とスカーレットは三人の魔族がいる、奥の部屋へと入って行った。
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