31話 シギサという詐欺師
翌日。
未だぐったりとしているセリーヌとリリィを宿に残し、他の四人でシギサを探す為、俺達は街へと出ていた。
「全然見つからないねー」
そう言いながらユーリは既にシギサ探しに飽き始めていた。
「そりゃそうだよ! 僕達だけで、こんな広い街から一人の男を探すなんて無茶だよ!」
「うーん……やっぱり無理なのかなー?」
俺の言葉を受け、ユーリは首を傾げて思案顔をする。
「オイラもさっきから通りがかる人を見てましたけど。それらしい人は見当たりませんね……」
「では、いっその事呼びかけてみてはいかがです?」
「呼びかける?」
ボンズが肩を落とし落胆していると、スカーレットは本気なのか冗談なのかそんな事を口にした。俺はあまりに安易な考えに思わず聞き返してしまった。
「えぇ。どうせ見付けたら捕まえる訳ですし手段なんて何でも良いではありませんか。相手はたかが人間でしょう?」
「まぁそうだね……」
――そういう考えか。
まぁ確かにスカーレットの言う事も一理ある……か。
「たかが人間って、スカーレットも同じ人間でしょ?」
「え? あ、あぁ! そうだよ!? そうじゃなくて、スカーレットが言いたかったのは、相手が魔族だったら手強いかもだけど、同じ人間だったら大丈夫だよねーって事だよ!」
俺がそう考えているとユーリは珍しく鋭い事を口にした。そして俺は慌ててそれを誤魔化した。
「え、えぇそうです! まったく、エル様に全てを説明して頂かないと理解出来ないとは。ユーリも少しは頭を使った方がいいですよ?」
「そういう事かー! ごめんごめん、変なこと言って。じゃあスカーレットの言う通り、呼びかけてみるか!」
するとスカーレットも俺の慌てようで自分の失言に気が付いたのか、同じ様に取り繕った。
おかげで何とかユーリを納得させる事が出来た。
――ふぅ。よかった。
ユーリがアホで助かった……。
俺がそう安堵している隙にユーリは大き目の木箱の上に飛び乗った。
「シギサさーーーーん!! 昨日の薬をもう一本買いたいのですがーー!!!」
そして天然なのか否か、ユーリはスカーレットの言った通りに大声で彼の名を叫び始めた。
ユーリの突然の奇行にボンズは唖然とし、俺は呆れ返っていた。
「まさか、冗談で言った事を本気で実行するなんて……」
そしてスカーレットはまた頭を押さえ、ユーリのアホさに愕然としていた。
――やっぱり冗談だったのね……。
でも、そんな言い方したらアホなユーリはそのまま行動するに決まってるだろ?
だってアホだもん……。
「本当にアホだなー、ユーリは……! そんなんでその人が来るはずな――――」
俺がそう言いかけると、どこからともなく一人の男が現れた。
「私を呼んだのはあなた方ですか?」
「あぁー! シギサだ……!!」
ユーリはその男を指さし、叫んだ。
俺達はまさか本当に現れるとは思っていなかった為、呆気にとられていた。
「あら? 貴方は昨日、私の商品をお買い上げ頂いたお兄さんではありませんか!」
「そーだよ! あの薬! あれは一体どういう――――」
「――――凄かったでしょう、あの媚薬! ……あら? 今日は綺麗な女性もお連れに……。ふふふ。昨夜はお楽しみになられたようですね?」
ユーリに気付いたシギサは、悪びれる様子を一切見せずにそう言った。ユーリは早速問い詰めにかかるが、それを察知したのかシギサは食い気味で話のペースを持っていった。
「び、びやく……!? 昨日の薬、びやくだったの!? てか、エル……? びやくって何?」
――あーそういえばユーリ達にあの薬が媚薬だったと伝えるの忘れてたな……。
ていうかコイツまた知らないでリアクションしてたのかよ……。
そして媚薬の意味なんかをショタの俺に聞くな!
まぁ中身は四〇歳だが……。
「媚薬は口にした者を発情させる効果がある薬ですよ。ユーリ」
すると俺が説明する前にスカーレットが代わりに説明してくれた。
「な、何だって!? 俺はそんな物をみんなに……?」
ユーリはその事実に驚愕した。
「あら? 知らずにお使いになられたのですか? 私はてっきりご存知の上でお買い上げなされたのかと」
するとシギサはそんなユーリの反応を見てニヤニヤと笑みを浮かべていた。
「そんなの知らなかったよ……! ひどいじゃないか、シギサ! 俺達を騙すなんて!」
「そうですよ! オイラもすっかり騙されてしまいました! 子供の話は嘘だったんですか!?」
ユーリはそんなシギサに怒り心頭の様子だった。
そしてボンズも怒りを露わにし、そう問い詰めた。
「嘘? 嫌ですねぇ。言葉のあやではありませんか。それに私は商人。言葉を尽くして商品を売るのが仕事です。そこに嘘があろうがなかろうが、私の商品をお買い上げ頂いた事に変わりはありませんし、私はそれ以上何も望んではいませんよ?」
――さすがは悪徳商人といったところか。
こういう事は何度も経験しているのだろう。
これは二人がいくら怒って問い詰めても何も得られそうにないな……。
俺がそう考えていると、突然スカーレットが口を開いた。
「あの……すみません……。私、昨日薬を口にして効果を実感したのですが、とても気に入ってしまいまして……。もしよろしければもっと沢山購入したいのですが……?」
「まぁなんと! この様な綺麗な女性にお使い頂いた上に、そこまで気に入って頂けるとは……! 勿論お売りいたしますよ! ですが、少々値がはりますがよろしいので……?」
話を始めたスカーレットはわざと艶かしい表情と声でシギサに迫った。
するとその誘いに乗ったシギサは早速値段の交渉を進めて来た。
「えぇ。あんな良い薬ですもの。お金ならいくらでも出しますわ」
「流石で御座います……! では商談の為、一度我がオフィスへ来て頂けますか?」
スカーレットがそう言うとシギサは更に勢いづいて自らのオフィスへと誘い始めた。
――有能。有能が過ぎるぞスカーレット……!
それに比べてこのアホ二人は……。
そして俺はそのアホ二人に目を向けた。
すると二人はその艶やかな魅力を放つスカーレットにあてられていた。
「二人とも、何をしているの? スカーレットがあそこまでしてくれてるのに、馬鹿みたいに鼻の下を伸ばして」
「そ、そんな事してないよ……! な、なぁ!? ボンズ!?」
「は、はい! そうですよ! オイラは決して、鼻の下なんか伸ばして……えへぇ」
ユーリは慌てて取り繕うもチラチラと横目でスカーレットを見ていた。
ボンズも俺に向かって何やら言い訳を並べていたが、スカーレットをチラ見しては、また鼻の下を伸ばし始めた。
――もうダメだなコイツらは。
ここに捨てていこう。
「あとでセリーヌとリリィにしっかり報告しておくからね」
「ちょ、エル……! それだけはやめて!?」
「ご、ごめんよ、エル君! だから許してぇ……!」
俺は二人にそう言い残し、スカーレットの元へと駆け寄った。二人はそんな俺の背中に命乞いをしていたが、もう遅い。
――あとで二人にこっぴどく叱られればいい。
うちのパーティーの女性陣は恐いぞ?
さて、これからどうするか。
上手くスカーレットについていって、裏にいる魔族に接触したいのだが……。
「ねぇ、お姉ちゃん! 僕も一緒について行っていい?」
「こらこら、僕ちゃん。ダメだよ? これは大人のお話なんだ。だからあそこのだらしないお兄さん達と一緒に待っててくれるかい?」
俺がそう言うとシギサはアホ二人を指さした。
「いえ、この子も連れて行きますわ」
「いや、ですが、さすがに子供にはまだ刺激が強いお話かと……」
「ふふふ。今日はこの子と……ね?」
「あら……。お姉様、まさかそんなご趣味が……?」
「えぇ、意外と凄いのですよ……?」
「へぇ……。そうですか……ふふふ」
スカーレットの言葉にシギサは最初こそ難色を示したが、彼女の機転により上手く丸め込む事に成功した。
しかしそれによりシギサは俺とスカーレットがそういう関係だと完全に誤解してしまった。
まぁスカーレットには本当にそういう趣味があるから完全に嘘というわけでもないのだが。
こうして俺とスカーレットはアホ二人を街へ捨て置き、シギサのオフィスへと向かったのだった。
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