29話 ムチャツヨクナール②
「さて、あとはこの二人だな……。どうするべきか……」
俺はそう呟き、セリーヌとリリィの方へ目をやった。すると、二人は息を切らしながらベッドに横たわっていた。どうやらスカーレットがベッドまで運んでくれたようだ。
「スカーレット、二人の様子はどうだ?」
「はい、エル様。未だ頬も赤く、体温も上昇し続けているようです。更に呼吸も荒く、このまま熱が上がり続けると……。まずいかもしれません」
「はぁ……!? ただの媚薬だろ!? 何故そこまで!?」
「はぁ……。先の小瓶は媚薬だったのですね。なるほど。どうりで私とエル様には効果が出なかったのですね」
「ん……? どういう意味だ?」
「私はサキュバスですから、媚薬なんて効きません。万年発情期の様なものですからね」
――サラッと今凄い事言ったよ、この人……。
でもサキュバスだからスカーレットには媚薬が効かなかった事はわかった。
なら、何で俺にも効かないんだ?
俺はサキュバスじゃないし……。
「スカーレットに媚薬が効かないのはわかった。なら俺は何だ? サキュバスでもない俺に何故媚薬が効かんのだ?」
「あ……。そうか……。エル様にはまだ……」
俺がそう尋ねると、スカーレットは何か思い出した様な表情を見せた。そしてスカーレットは俺の傍に近付き、耳元で話し始めた。
「こんな形で失礼します。万が一、この二人に聞かれてはまずいと思いまして……」
「な、何だ……!? 突然?」
「お伝えし忘れておりましたが、エル様は先代魔王様とサキュバスのお母様の間に生まれた子供なのです」
「何ぃぃぃぃ……!?」
俺は驚きのあまり、大声でそう叫んでしまった。
――まさか自分の母親がサキュバスだったとは……。
俺の体にはサキュバスの血が流れているのか。
だから俺にも媚薬が効かなかったんだな。
そしてこんなにも性に敏感に……。
「エル様……? 大丈夫ですか?」
「あぁ、すまない。少し取り乱した。その件に関しては納得した。ありがとう」
「い、いえ……! それにしてもどうしましょうか、この二人……?」
(久しぶりのエル様の魔王モード、やばぁい……♡ 素敵すぎる〜!)
「そうだな。媚薬の効果を消す魔法とかは無いのか?」
「申し訳ありませんが、その様な魔法は存じ上げません……」
――やっぱりそういう魔法は無いのか。
ならどうする?
媚薬の効果を薄くするなんて、現代でも聞いた事がないしな……。
「そうか……。ならどうするか……」
「一応、媚薬の効果を無くす方法はあるにはあるのですが……」
「おぉ! あるのか! ならば言ってみろ!」
「それは……。対象の精力が尽きるまで、吸い尽くす事……です」
――何だと……?
精力を吸い尽くすとな……?
何ともまぁ破廉恥な……。
いかがわしいなぁ……。
「はぁ……。しょうがないな。ここは俺が一肌脱いでやるか……」
俺は内心のにやけを抑えつつ、スカーレットに何食わぬ顔でそう言った。
「な、なりません……!! エル様にその様な事をさせるわけには!」
(エル様に他の女の痴態など見せるわけにはいきません! エル様の初めては私と決まっているのだから……!)
「良い! 俺がやる! 俺にヤらせるのだ!!」
「なりません!!!」
「良いと言っている!!!」
「なりません!!!!」
そうして暫くの間、俺とスカーレットの押し問答が続いた。
◇
「ったく、強情な奴だな……。俺が良いと言っているのだから良いではないか!!」
「なりません! しかし、こうなっては埒が明きませんね……。仕方ない……。エル様、失礼します……!」
「おわぁっ……!?」
スカーレットはそう言うと、俺の小さな体を軽々と肩に担ぎ上げ、部屋の外へと連れ出した。
「エル様。処置が終わるまでの間、ここでお待ちになっていて下さい」
「嫌だ! 俺も……! 俺も……!」
「なりません! 決してそこを動かないように……!」
スカーレットはそう言い、バタンと音を立てて部屋の扉を閉めてしまった。
――くそう……!
合法的に美人聖女とロリかわ魔女っ子とムフフな体験が出来ると思ったのに……!
あぁ……千載一遇のチャンスがぁ……!
だが、俺がいるのは部屋の外。
そして中には女子達の桃色の空間。
この二つの場所を隔てるのは、このたった一枚の木製の扉のみ……。
なのに中に入れないなんてーー!!
「いや、待てよ……?」
――この際、中に入らなくてもいいのではないか?
中を少し覗くくらいなら問題ないよな?
俺には覗き専用の能力もあるし。
いいよな……?
俺はそう思い立ち、震える魂を抑える為、言霊を唱えた。
「……【壁に耳あり障子にめ――」
――――ガチャ
「エル様……。覗くのも、いけませんからね……?」
「あ、はい……」
俺が言霊を唱え始めると、部屋の扉が少しだけ開き、中からスカーレットが顔を出した。俺はもう全てを諦め、ただ黙って彼女に従った。
◇
その後暫くして、部屋の中から三人のあられもない声が漏れ始めた。
俺はじっと目を瞑り、その音を、その声を、全て我が自慢の脳内レコーダーに録音した。
俺はこの事を一生忘れる事は無いだろう。
◇
そして数時間にも及ぶ処置が終わり、スカーレットが部屋から出てきた。彼女は息を切らし、頬を赤く染め、じんわりと汗ばみながら、恍惚な表情を浮かべていた。
「お待たせしました……ハァハァ。ようやく、終わりました……。これだけ時間がかかったということは、非常に強い媚薬だったと考えられます……ハァハァ」
「そ、そうか……。ご苦労だったな。それはそれとして……。その……二人はどうだったんだ?」
「それはもう……! さいっこうっでした……!! 今は二人とも疲れて眠っていますが、その内目を覚ますと思います」
俺がそう聞くと、スカーレットはとても満足そうな顔をしていた。
「そうか……。よかった。そういやサキュバスって精力を糧に生きているんだっけか……?」
「はいぃ! 久しぶりのご馳走でしたぁっ……」
「よ、よかったな……。でもそれだといつもはどうしているんだ? 貴様だって色々と堪らない時だってあるだろう?」
「それはその……。エル様がお休みになっている時に、こっそりと……」
「はぁ!? 初耳だぞ!?」
「い、いえ! さ、触ったりしているだけですので!!」
(主にその小さな手だけですが……)
「それだけでも問題だろうが……!!」
――なんという事だ……。
もう既に俺はスカーレットに初めてを……?
これは俺の癖に刺さ――――
「――――みんなー、大丈夫ー? ボンズの方は何とかおさまったよー」
「ご、ご迷惑をおかけしましたっ……!」
俺がそう考えていると、ユーリとボンズが部屋の前まで戻って来た。
ナニをしていたかは知らないが、ボンズの肌はやけにツヤツヤとしていた。
ユーリは何も見ていないのか、あっけらかんとしていた。
「あ、あぁ……二人とも、おかえり!! ボンズは……大丈夫?」
「う、うん、何とかね……」
「ボンズってば、俺が心配してトイレまで行ったのに中に入れてくれなかったんだぜー? ひどいだろ?」
「そ、そうなんだー。アハハー……」
――どっちがだ……アホ。
あの状況を見て、少しは察してやれよ……。
「それより、リリィとセリーヌは? 大丈夫だった?」
「あぁ、うん! スカーレットが何とかしてくれたみたい! 今は二人とも部屋で寝てるよ!」
「本当!? よかったぁー」
俺がそう言うとユーリは安堵の表情を浮かべた。
スカーレットはそんなユーリに向かってニコリと笑い、軽く頭を下げた。
「おい、その笑顔と会釈はどういう意味だ……?」
「いえ、特に意味はありませんよ……」
俺が小声でそう聞くと、スカーレットは妖艶な表情で舌なめずりをした。
こうして、ユーリがアホなせいで引き起こされた『ムチャツヨクナール事件』は幕を閉じた――――かに思われたが、この後のユーリの一言で、俺達は予期せぬ方向へ向かうこととなる。
「それにしても、あのシギサって人。俺達を騙してた悪い人だったんだな! これはちゃんと、人を騙すのは駄目だよ! って言いに行かないとだね! ふん!」
――このアホ勇者……。
またフラグを立てやがって……。
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