28話 ムチャツヨクナール①
その日の夜。
三班に分かれて行動していた俺達は、宿に戻って来ていた。
そしてどこかへ夕飯を食べに行こうと話していると、ユーリがどうしても今夜は自分の料理を食べて欲しいと言うので、俺達は一つの部屋に集まり、彼が戻るのを待っていた。
「それにしても、ユーリがあそこまで自分の料理を食べて欲しいと言うなんて、珍しいわね」
「確かに……。いつもは『食べて食べてー!』って言うくらいなのに……」
セリーヌとリリィはユーリの言動に疑念を抱いている様子だった。
「でもユーリの料理は毎回美味しいし、大丈夫なんじゃない?」
「エル様の仰る通りです。ユーリの料理の腕は素晴らしいです。私も日々、勉強させて頂いております」
俺がそう言うと、スカーレットは関心しながら頷いている。
――スカーレット、まだ料理の事諦めていなかったのか……。
料理はセンスも重要だとか聞いた事もあるし、スカーレットに料理は向いていないと思うんだけどな……。
「大丈夫ですよ、皆さん! 今日のユーリさんの料理は今までに無いくらい、きっと美味しいと思います!」
俺がスカーレットの料理センスについて考えていると、ボンズが自信ありげに胸を張った。
「何でボンズにそんな事わかるの?」
「だって今日は特別な――――」
「――――それ以上は言ったら駄目だよ、ボンズ。食べてからのお楽しみなんだからさ!」
俺がそう聞くと、ボンズは何かを言いかけたが、そこへユーリが出来上がった料理を手に部屋へ戻って来た。
「勿体ぶらずに教えなさいよ、ユーリ」
「そうですよ。美味しい料理の秘密を私にも是非……!」
「だめだめ。いくら二人のお願いでもそれは聞けないよー! ――――さぁて! 今日は特性 具だくさん鍋だよ!!」
ユーリはパーティー屈指の美女二人からの質問を軽くいなすと、テーブルの上に大きな鍋を置いた。
しかし、中身はいたって普通の具だくさん鍋で、何も変わった様子は見受けられなかった。
「ユーリがどうしても食べて欲しかった料理ってコレの事?」
「そうだよ、エル! 凄く美味しいはずだから皆も沢山食べてね!」
「うん……。もぐもぐ。美味しいよ……。とっても。皆も早く食べなよ……」
俺がユーリにそう尋ねている内に、リリィは既にその鍋を食べ始めていた。
「あ! ちょっとリリィ! あなた、ちゃんといただきますはしたのかしら?」
「むぐむぐ……。うるさいよ、セリーヌ……。早く食べないと無くなっちゃうよ……?」
「まったく、どれだけ食べるつもりなのよ……。でも本当に美味しそうね。私も頂くわ」
「私も頂きます。これを食べて、今度こそエル様に納得して頂けるものを作ります……!」
「あ! オイラの分も残しておいて欲しいです! ユーリさん、いただきます」
「待ってよ、みんな! 僕も食べたいよ!」
「慌てないで大丈夫だよ! おかわりも沢山用意してるから、ゆっくり食べて!」
そして俺達は一心不乱に目の前の鍋を胃袋に放り込んだ。
――美味い……。美味すぎる……!
ユーリはアホなくせに料理だけは本当に一流だな。
今まで食べたどんな鍋よりも美味い……!
そして気が付けば俺達は、ユーリが用意していたおかわりも含めて、全て平らげた。
「「「「「ご馳走様でしたー!」」」」」
「お粗末様でした! どう? みんな? 体に何か変わった事はない?」
俺達が食事を終えると、ユーリはニコニコしながらそう言った。
「え? 変わったところ? んー特にないよー?」
「強いて言えば体が熱いくらいかしら?」
「リリィも何だか熱い気がする……」
「それは熱々のお鍋を食べたからでしょう。私は何も感じませんが……」
セリーヌとリリィは体温が上昇していると言うが、スカーレットがそれは鍋のせいではないかと平気そうな顔をしている。
しかし、セリーヌとリリィの様子は段々と変わっていき、頬は赤くなり、ハァハァと息をきらし始めた。
「え、大丈夫? 二人とも!? どうしちゃったの、急に?」
「わからない……。ハァハァ……。何か……体が熱くて……」
「何なのよ……これ……。ハァハァ……」
俺がそう聞くと二人は凄く辛そうな表情でその場にへたり込む。
「鍋の具材で食あたりにでもなったのかな? でもちゃんと火は通したはずだしなぁ」
「……もしかしてユーリさん。あの小瓶…………うっ!」
「どうしたの、ボンズ!?」
ボンズはユーリにまたしても何かを言いかけると、突然驚いた様子で股間を押えながら立ち上がり、そのまま部屋の外へと出ていった。
「えー? もしかしてこれのせいかなー?」
ユーリは首を傾げながらそう言うと、ポケットの中から一つの小瓶を取り出した。その間も、セリーヌとリリィの様子は更に悪化していっていた。
「大丈夫!? 二人とも!?」
「………………ハァハァ」
俺が懸命に声をかけるも、二人は息を切らすばかりで、何の反応も示さなかった。俺はスカーレットに二人の看病をするよう指示し、ユーリの元へと詰め寄った。
「ユーリ……貴様、鍋に何を入れた?」
「何って、昼間に街で買ったこの小瓶だよ。『ムチャツヨクナール』っていう薬で、飲むと普段の十倍の力が出るんだってさ! だからみんなにもっと強くなって欲しくて、さっきの鍋に入れたんだ!」
「そうか……。ユーリは鍋、食べてなかったよな……?」
「うん、みんなが食べる分が無くなっちゃうと思って……」
「そうか……。ちょっとその小瓶、貸してみろ」
そして俺はユーリから小瓶を取り上げ、【鑑定眼】でそれを調べる事にした。
――――【鑑定眼】
製品名 ムチャツヨクナール
分類 媚薬
効果 精力を普段の十倍まで増強する。
――めちゃくちゃ媚薬じゃねぇか……!!
なんてものを料理に仕込みやがったんだ、このアホは!?
「おい、ユーリ。貴様、これをどんな奴から買ったんだ?」
「え? えっと、見た目は綺麗な格好をしてて、男の人で、名前はシギサって言ってた!」
――シギサ……?
これまた如何にもって名前だな……。
このアホ……。まさか詐欺に引っかかったのか?
「……これはいくらしたんだ?」
「――――万ゴルド……」
「え? はっきり言え!」
「十万ゴルド!!」
――はぁ!?
十万だと……!?
メテックの町を救った時に貰った報酬と同額じゃないか!
しかもこんな小瓶一つで……。
これは完全に詐欺だな……。
「何でこんな高い物を買ったりしたんだ! 強くなる為に修行したりとか、他にも色々方法があるだろうが!?」
「うん……。でも、そのシギサって人が子供の話とか貧乏させている話とかしてきてさ。可哀想だなって……」
「言い訳しない!」
「は、はい……!」
高額な商品に、誰もが欲しくなる誇大な商品説明。
加えて、暗く悲しい身の上話をしている割に小綺麗な格好。
――はぁ……。詐欺師の常套手段だな……。
よりにもよってこのアホが掴まされるとはな。
いや、アホだから掴まされたのか。
見るからに良いカモだもんな……。
「どうして買う前に誰かに相談しなかったんだ……。ボンズも一緒にいただろう?」
「俺は最初から乗り気だったけど、金額を聞いて買うのを辞めようとしたんだ! でもボンズが子供の笑顔を守りたいとかなんとか……」
「人のせいにしない!!」
「ご、ごめんよ、エルぅ……。まさかこんな事になるなんて思ってなかったからさぁ……!」
俺がそう強く叱りつけると、ユーリは涙ぐみながら俺に謝り始めた。
――何だか可哀想になってきたな……。
高校生くらいの男が、十歳のショタに叱られて泣いているのを見ると、何だかいたたまれなくなるな……。
それに前世で四〇歳だったこともあってか、おじさんの悪い癖が出てたかもな。
「んー、とりあえずもういい。ユーリはボンズを見てやっててくれ」
「わ、わかった! ありがとう、エル……」
ユーリはそう言い残し部屋を出て、ボンズの元へと向かった。
「さて、あとはこの二人だな……。どうするべきか……」
そして俺は息を切らしながら、ベッドに横になっている二人を見つめ、考えを巡らせた。
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