27話 凸凹コンビの人助け
他の二班が順調に請け負った役目を果たしている頃。
魔族の調査を担当しているユーリとボンズは、街の中を隈無く捜索していた。
「そんなに怖がらなくても大丈夫だよ、ボンズ! なんせ、勇者であるこの俺が一緒なんだからさ!」
「それが一番怖いんだけどな……」
いるかもわからない魔族に終始怯えているボンズに、ユーリはそう声を掛けた。
するとボンズはユーリに聞こえないくらいの声量で、ボソッと呟いた。
「え? ボンズ今、何か言った?」
「い、いえ! 何も!」
「そう? ならいいんだけど」
ボンズが先の発言をサラッと濁すと、ユーリはそれを気にせず流すと、またしても余計な事を口走る。
「それにしてもこの街は綺麗だなぁー! こんなに街が綺麗なんだったら魔族どころか、悪人なんていないんじゃないの?」
盛大なフラグが立った瞬間である。
「ゆ、油断は禁物ですよ、ユーリさん。それに、大きな街にこそ、悪い人はいるものです。用心しな――――」
「大丈夫、大丈夫! この街に悪人はいない! 一〇万ゴルド賭けたっていいよ!」
ボンズは辺りを警戒しながらそう言うと、ユーリはそれに被せる様に更なるフラグを立てた。
そんな時、一人の男が二人に声を掛けてきた。
「そこのお兄さん達、少しお話よろしいですか?」
「ヒィ……! な、何……!?」
「ボンズ、落ち着いて! 何ですか、あなたは?」
突然声を掛けてきた男にボンズは驚き、ユーリはそれを宥めつつ、男に尋ねた。
「これはこれは。申し遅れました。私、シギサと申します。この街で商人を生業としております」
「へぇー。そうなんですね! それで、シギサさんは何を売っているのですか?」
「お? 興味を持って頂けましたか! ありがとうございます! それでは早速、私が売っている商品のご紹介を……」
ユーリが話に食いつくと、シギサは貼り付けた様な笑顔で鞄の中をゴソゴソと漁り始めた。
「ちょっと、ユーリさん!? この人、なんだか怪しいですよ……。何か変な物を買わされるんじゃ……」
「大丈夫だよボンズ。この人、こんなに笑顔だし、悪い人には見えないよ」
その間、ボンズはユーリの耳元でそう忠告した。
しかしユーリは全く聞く耳を持たなかった。
ボンズの言う通り、このシギサという男。
商人というにはあまりにも綺麗な格好をしており、胡散臭い笑顔を浮かべていて、見るからに怪しい男だった。
するとシギサは鞄の中から一つの小瓶を取り出した。
「お待たせしました! こちらが私が扱っている商品……その名も〈ムチャツヨクナール〉です!」
「ムチャツヨクナール!? そ、それは一体どんな物なんだい!?」
「ユーリさん……」
ユーリはその商品に一瞬で釘付けになった。
ボンズはユーリのそんな姿に呆れていた。
そしてシギサは、ユーリの反応を見て一層口角を上げると、その商品の説明を始めた。
「こちらの商品はですね、なんと! 一滴飲むだけで普段の二倍、いや、十倍の力を得る事が出来るという優れ物なんです!」
「十倍!? しかもたった一滴飲むだけで!? 凄いね! ね! ボンズ! これ凄いよ!?」
「い、いや、ユーリさん。そんな物、あるはずないですよ……! 人がそんな簡単に強くなれたら誰も苦労しないですって……!」
ユーリはシギサの巧みな話術により、更にその商品に興味を示し始める。ボンズはそんなユーリを何とか止めようと声をかける。
するとシギサはそんなボンズを気にもとめず、更に説明を続ける。
「加えてこの商品。味も凄く美味でして、なんと料理にも使えちゃうのです! そしてこの商品を使った料理を食べた人も、もれなく……」
「も、もれなく……?」
「なんと! そのまま飲んだ時と同等の効果を得られるのです!」
「な、何だってぇぇぇぇ!? 凄い……! 凄すぎるよムチャツヨクナール……! 買おう! これは買うべきだよボンズ!」
「いや、ですからユーリさん! そんな物があったら誰も苦労しな――――」
シギサの言葉に乗せられ、ユーリは興奮気味にそう言った。ボンズは再度、ユーリを説得しようと試みるが、シギサはそんなボンズの言葉をかき消す様に更に話を始めた。
「買っていただけるのですか!? ……ただ、この商品。一つ重大な問題を抱えておりまして……」
「重大な問題……? 何だいそれは?」
シギサは先までのニコニコとした笑顔とは打って変わり、深刻そうな表情を浮かべた。
ユーリがそう尋ねると、シギサは重い口を開いた。
「実はこの商品。物凄く希少な素材を使用していまして……。あまり数を作れない事から少々お値段がはってしまうのです……」
「そ、そうなのか……。具体的にはいくらくらいなんだい?」
「じゅ、十万ゴルドです……」
「た、高い……!!」
「ユーリさん、流石に十万ゴルドは高すぎます! やめておきましょう! ね?」
シギサから発せられた余りにも法外な値段に、さすがのユーリも少しだじろいだ。
そこへボンズは、すかさず購入を辞めるよう促した。
「そう……ですよね……。どんなに良い物だったとしても、これだけ高ければ購入して頂けませんよね……」
するとシギサは突然、ポロポロと涙を零し始めた。
「ど、どうしたんですか!? 何も泣かなくても……!」
「うぅっ……。実は私には妻と双子の子供がいるのですが、商品が高く、誰からも買って頂けなくて貧しい暮らしをさせてしまっているのです……。昨晩も『今日のご飯、これだけなの? お腹すいたよー』なんて言わせてしまって……。うぅっ……」
「そんな事情があったんだね……。だけど流石に十万ゴルドは……」
「二人の子供……」
シギサの身の上話を聞き、ユーリは同情はしたものの、その法外な値段に臆しているままだった。
そしてボンズはシギサの二人の娘という言葉に反応し、その子らを哀れんでいた。
「少しでもあの子達に良い物を食べさせてあげたかったのですが……。それも叶いそうもないですね……。長々と私のお話を聞いて下さり、ありがとうございます。では……」
「すまない、力になってやれなくて……」
そう言うとシギサは涙を拭き、深く頭を下げてその場を立ち去ろうとした。
ユーリはそんなシギサに申し訳なさそうに声を掛けた。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
刹那――――ボンズが突然大きな声を上げ、シギサを引止めた。
「ボンズ……? どうしたんだ?」
「幼い子供達がお腹を空かせて泣いている……。シギサさん! そうなんですよね!?」
「えぇ……そうです……! ですが、今日も買って頂けなかったので、また泣かせてしまう事になりそうです……」
「いや、さっきはそこまで言ってなかったような……」
ボンズの呼び掛けにシギサは足を止め、ニヤリと笑うと、二人の方へと向き直り涙ぐみながらそう言った。
そしてユーリはそんな二人に的確なツッコミを入れた。
「幼い子供達は、無邪気に元気に笑っていなければいけない……。その為にオイラ達は戦っている……。そうですよね!? ユーリさん!?」
「え!? う、うん、確かにそうだけど……」
ボンズの言葉にユーリは戸惑いを隠せないでいた。
「なら……! シギサさんの商品を買って、子供達を救う事も……! 勇者の……。ひいてはオイラ達の使命なのではないでしょうか……!?」
「ぐっ…………。ボンズ……。君は本当に優しい男だね……。まったく……。その通りだよ! よし! シギサさん! 俺達がその商品買ってあげるよ! それで娘さん達に美味しい物沢山食べさせてあげて!」
「い、いいのですか……?」
「勿論です! オイラ達は子供達の未来を守る為に戦っているのです。それにシギサさんのあんなお話を聞いて、放ってなんておけないですよ!」
そしてツッコミ不在の二人はシギサにそう言うと、十万ゴルドを支払い、小瓶を受け取った。
「本当に……ありがとうございました……!」
「娘さん、喜ぶといいですね!」
「はい、きっと喜ぶと思います……!」
「いつかオイラ達に、元気な娘さん達を会わせて下さいね!」
「勿論です……!」
「それじゃあ、また!」
こうして二人はシギサに別れを告げ、街の人混みの中へと消えていった。
◇
「クックック……。まったく……馬鹿な奴らだったぜ……! 本当に良いカモだったな。あんな作り話にまんまと引っかかってよ」
そして二人がの影が見えなくなるまで頭を下げ続けていたシギサは顔を上げそう言うと、高笑いをしていた。
◇
シギサと別れ、二人は誇らしげな顔で街を歩いていた。
「いやー、いい事をするっていうのはやっぱり気持ちがいいね!」
「本当ですね、ユーリさん! オイラも少しは勇者パーティーの一員らしくなれましたかね?」
「勿論だよ! ボンズは優しいし、もう立派な勇者パーティーの一員だよ!」
「そうですか……! ありがとうございます! これからも頑張りましょう!」
「そうだね! 今夜は早速、このムチャツヨクナールを使って料理をしてみようかな!」
「いいですね! 皆さんが更に強くなれば魔王も倒せるかもしれませんしね!」
「そうだね! よーし! それじゃあ張り切って料理するぞー!」
こうして二人はムチャツヨクナールを手に、魔族の調査を忘れ、宿へと向かって行ったのだった。
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