26話 ロリとショタの平和な時間
スカーレット達が食材を調達している頃。
宿取り班の俺とリリィは、街の中心にある噴水広場近くの宿屋の前まで来ていた。
「はぁ。ようやく辿り着いたよ。この街、広いんだね」
「リリィはもう疲れた……。早く魚食べ行こ……」
「うん、そうだね。とりあえず先に宿を取ってしまおうか」
そして俺は座り込もうとするリリィの腕を引き、宿屋の中へと入った。
◇
外装が綺麗で、敷居の高そうな宿屋に思えたが、中に入ると受付には気だるそうな若い男が一人いるだけだった。
男は宿屋に入ってきた俺達と目も合わせず「しゃあせー」なる言葉を吐いた。
少し不快に思ったりもしたが、俺は何も考えず男に声を掛けた。
「すいません。今晩の宿をとりたいのですが、二部屋空いていますか?」
「……。なんで二部屋だ? お前ら二人が泊まるんじゃねぇのか?」
「あ、あぁ! 他に四人連れがいるんです。なので二部屋……」
「つまり六人って事だな? なら三部屋取りな。うちの宿は全室ベッドは二つだ」
「そ、そうですか……。ならそれでお願いします」
――何だこの男は……?
俺は客の事を神様と思えだなんて、モンスターカスタマーの様なことを言うつもりは毛頭ないが、さすがにこの態度はおかしいのではないか?
俺は不快感を募らせていた。
すると横にいたリリィが何やらブツブツと呟き始めた。
「ど、どうした、リリィ? 何言ってるの……?」
「エル……。止めないで……。今、魔法の詠唱してるから……」
「はぁ!? ちょっ! 待て、コラガキィ……!」
俺がそう聞くと、リリィは男を睨みつけ魔法の詠唱をしながらそう言った。
すると男は気だるそうな雰囲気から一変し、慌てた様子でそう叫んだ。
「今更謝ってももう遅い……」
――お前は追放された冒険者か……!!
って言ってる場合じゃないよな……。
「待ってリリィ! 気持ちは何となくわかるけど、ここで上級魔法をぶっぱなすのは、さすがにまずいよ!」
「じょ、上級!?」
リリィは物凄く怒った様子で依然男を睨みつけている。そこで、俺はあえて上級魔法という言葉を口にした。
すると男はリリィが詠唱をしている魔法が上級だとわかり、驚愕していた。
「コイツ、エルに生意気な事ばっかり言う……。こんなに可愛いエルに……。許さない……」
――あぁ、リリィは俺の為にこんなに怒ってくれていたんだな。
味方にばかり魔法をぶっぱなすヤバい子だとばかり思っていたよ……。
今までごめんな、リリィ……。
もう俺は止めない……。
やりたい様にやればいいよ……。
「最近、魔法ブッパしてないし、丁度いい……」
俺がリリィに対しての認識を改め始めていると、リリィはボソッと呟いた。
「ん、ん? リリィ、今なんて?」
「何も言ってない……。リリィはコイツを許さない……」
――いや、今完全に丁度いいって言ったよね!?
俺の為に怒っていると見せかけて、やっぱり魔法ブッパしたかっただけなのね!?
それなら話が変わってくるよ!?
この男はただただ、魔法ブッパされただけの可哀想な人になっちゃうよ!?
「ま、待ってリリィ! やめよ? ね? 僕もう怒ってないし、大丈夫だから!」
「ごめんエル……。もう無理……!」
「ちょ、待てお前……!」
俺の必死の呼びかけも虚しく、リリィの杖から大きな炎が発現した。
男は顔を手で覆い、俺達から目を背けた。
そしてリリィも何故か目を瞑っていた。
――え!?
もしかしてリリィが魔法を狙った所に当てられない理由って、魔法を放つタイミングで目を瞑っているからか?
だとしたら、めちゃくちゃくだらないのだが……。
いや、それより今はこの状況を何とかしないと。
ヤラカスの時みたいに水を大量にかければ炎は消せるだろうけど、リリィがずぶ濡れになってしまう。
ずぶ濡れロリペタ魔女っ子を見る趣味はあ……。ないが、そんな姿を公衆の面前に晒すのはあまりにも可哀想である。
ならやる事は一つ。
杖の先に発現した大きな炎のみを大量の水で覆うしかない。
幸いリリィも、この不快な男も目を背けていて俺が何をしてもバレることはなさそうだ。
じゃあ思いっきりやるか……!
「ごめんな、リリィ。――――【特大水球 発現】!!」
俺がそう唱えると、リリィの杖の先にある炎を余裕で覆う程の水の玉が発現した。
それと同時に、リリィの火属性魔法はシュンと音を立てて沈黙した。
――ふぅ、上手くいった。
後はこの場を穏便に済ませるだけだな。
リリィが上手く静まってくれればいいんだけどな……。
俺がそう考えていると、何も起きない事を不思議に思ったのか、二人はゆっくりと目を開けた。
「あれ……。リリィの魔法……消えてる……? なんで……?」
「あ、あぁ! なんかリリィの魔法途中で消えちゃったよ? もしかしたら詠唱の途中で喋っちゃったからじゃないかな?」
「あぁ……。そういう事か……」
俺がそう言うと、最初は不審に思っていたリリィも納得した様子で杖を下ろした。
「……んあ? なんだ、魔法消えてんじゃねぇか……! ビビらせやがって……」
もう魔法が発動しないとわかると、男は再び強気な態度を見せる。
「は……? 何? やっぱり、魔法ブッパ……しとく……?」
「いや、もういい! もういい! わーったよ! ったく、おっかねぇガキだぜ……。ほら、これが部屋の鍵だ。失くすんじゃねぇぞ?」
リリィが不快な男に杖を向け、再度脅すと、男は両手を上に挙げ首を横に振りながら鍵を差し出した。
そして俺達は部屋の鍵を受け取り宿を後にした。
◇
「はぁ……。何ともなくてよかったよ。あそこでリリィに魔法をぶっぱなされてたらどうなっていた事やら……」
「ふふん。リリィの魔法は強力だもんね……!」
俺がそう言うとリリィは何故か自慢げな顔をしていた。
――そういう意味で言ったんじゃないんだけどな……。
俺はそう思いつつも、リリィにはあえて何も言わなかった。
「くんくん……。ところでエル、何か良い匂いしない……?」
するとリリィが目を瞑りながら辺りに漂う匂いを嗅ぎ始めた。
「……言われてみればそうだね。これは魚かな?」
「え……! 魚……!? よし行こう……!」
俺がそう言うと、リリィは目の色を変えて俺の腕を引き匂いの発生源へと向かった。
宿屋がある噴水広場には沢山の屋台が出ていて、様々な食べ物が売られていた。
そしてその中から俺達は美味しそうな匂いを嗅ぎ分け、焼き魚を売っている店の前へと辿り着いた。
◇
「ここ……。ここが一番良い匂い……」
「おっ! 魔法使いの姉ちゃん、わかってんなあ! うちの焼き魚は絶品だよ! 食べてくかい?」
「うん……! 食べる……! エルも食べるでしょ……?」
「勿論! 僕も食べたい!」
そして俺達は店主に代金を支払い、串に刺された焼き魚を受け取った。
そして俺達は近くのベンチに腰掛け、魚を食べ始めた。
「この魚、美味しい……。どう? エルも美味しい……?」
「うん! とっても美味しいよ!」
「ふふ。よかった……!」
リリィは魚を頬張りながら、俺の顔を覗き込んで来る。その顔や仕草はとても可愛く、俺はまるで妹を愛でるような感覚に陥った。
――リリィ、可愛いなぁ。
これで魔法ブッパの癖がなかったら相当にモテるはずなんだけどなぁ。
まぁつまらない男が近付いて来ようものなら、お兄ちゃんであるこの俺が、ビシッと成敗してやるけどな。
……って、この世界での年齢で言ったら俺よりリリィの方が歳上になるのか。
はぁ……。こんな可愛い妹が欲しい人生だった……。
俺がそう思いながらリリィの顔をじっと見つめていると、リリィは大きな目で俺を見つめ返し、「なに……?」と呟き、ニコリと笑った。
俺は「何もないよ」と言い、首を横に振った。
リリィは少し不思議そうな顔をしたが、すぐに魚の方へと意識を向け食べ始めた。
こうして宿屋での一悶着を早々に忘れ、俺とリリィはとても平和な時間を過ごしたのだった。
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