25話 二人の美女の買い出し
第二の街ウォルトスへ到着した俺達は三班に分かれて行動する事になった。
中でも、一番不安要素の多い〈食材調達班〉のスカーレットとセリーヌは――――
◇
「はぁ……。エルきゅんの前ではああ言ったけど、私はまだあなたの事、認めた訳じゃないんだからね。スカーレット!」
「はいはい、わかりましたよ、聖女様。そんなにも私と一緒にいるのが嫌なら、早く買い出しを済ませてしまいましょう」
「ふん。あなたに言われなくてもそのつもりよ!」
――――とても険悪なムードで街を歩いていた。
二人が言い合いをしながら暫く歩くと、多くの店が立ち並ぶ場所へと辿り着いた。
そして二人はまず、野菜が売っている店の前で立ち止まった。
「このお野菜、中々良さそうですね。色味も良くて身も詰まっています」
「……あなた、料理出来ない癖に、食材の目利きは出来るのね」
スカーレットが野菜を手に取りそう言うと、セリーヌは少し戸惑いながら地味な攻撃を繰り出した。
するとそこへ店主が現れ、二人に話し掛ける。
「おー姉ちゃん達! よくわかってんじゃねぇか! コイツは今朝仕入れたばっかの品でよ。姉ちゃん達、綺麗だからサービスするぜぇ? よかったら買ってってくれ!」
「サービスですか……。ではコレとコレとコレ……。あとコレも頂けますか?」
「おうよ! 姉ちゃん気前いいな! ほんじゃコレもサービスしとくぜい!」
「どうも、ありがとうございます」
スカーレットが良さげな野菜を数個選ぶと、店主はご機嫌に野菜を袋に詰めて手渡した。
その後スカーレットは礼を言い代金を支払うと、二人はその店を後にした。
「あなた、こんなに野菜を買って何を作るつもりなの?」
セリーヌは歩きながらスカーレットにそう尋ねた。
「知りませんよ。私はエル様に二度と料理をするなと言い付けられていますので。料理はユーリにお任せしています」
「え!? じゃあ今の野菜はどう料理するかもわからずに適当に買ったって事!?」
スカーレットの言葉にセリーヌは酷く驚いた表情を見せた。
「そうですよ? でも全て良い品でありましたので、きっとユーリなら美味しい料理を作ってくれることでしょう」
するとスカーレットは料理をユーリに任せつつ、彼の料理がどんな物になるかを考え、思いを馳せていた。
「何よそれ……。まぁユーリに任せておけば料理は何とかなりそうね……。それで? 次は何を買うのかしら?」
セリーヌはそんなスカーレットに呆れつつも、次の予定を尋ねた。この調子て行けば何とか上手く事が運びそうだと、セリーヌは安心しかけていた。
「そうですね……。次は肉でしょうか。エル様は牛肉をご所望でしたのでそれがあればいいのですが」
「肉屋ならさっきの店の向かいにあったわよ?」
しかし、セリーヌの何気ないこの一言で、二人の間に流れる空気は最悪なものへと変わってしまうのだった。
「はい……!? 貴女、何故それを先に言わないのですか!?」
「だってあなたが何を買おうとしているかなんて知らなかったんだもの! それなら先に肉と野菜を買いますってちゃんと言っておいてくれないとわからないわよ!」
「はぁ……。普通、野菜を買うなら肉も買うでしょう? 無駄にここまで歩いてしまったではありませんか……」
「そんなの知らないわよ! それにそんなこと言わなくたって、来た道を少し戻るだけじゃないの!」
「私は効率を重視しているのです。貴女がさっきの店の向かいに肉屋がある事を教えてくれていたならこんな非効率な事はしなくて済んだのです。これでエル様がご所望の牛肉が売り切れていでもしたら……。反省して下さいね」
「なんでよ!? 全部私が悪いわけ!? あなたが効率を重視しているなんて、肉屋に行こうとしていた事よりも知らなかったわよ!」
そして二人はそんなくだらない言い争いを続けながら来た道を戻り、ようやく肉屋へと辿り着いた。
◇
「牛肉はあるかしら!?」
先程の口喧嘩の熱がおさまらないのか、店に着くなり開口一番にセリーヌは勢いよく店主にそう尋ねた。
「え!? あ、あぁ。牛肉ならそこに……」
戸惑いつつも、店主は牛肉を指さした。
「いくらです……?」
スカーレットも口調は柔らかいが、ただならぬ圧力を放っていた。
「ご、5000ゴルドだよ……」
店主は牛肉の値段を正直に、そして正確に答えた。
「はい!?」
しかしセリーヌは聞き取りづらかったのか、そのままの勢いで聞き返した。
「に、2000ゴルド……」
すると店主はそんなセリーヌに少し怯んだのか、低めの金額を提示する。
「2000ですか……」
スカーレットはお目当ての牛肉を眺め、ボソッとそう呟いた。
「い、いやー、今日は天気も良いし、1000ゴルドにしておこうかな……!」
すると店主は何故か肉と全く関係のない天気の話を持ち出し、よくわからない理屈で初期の値段よりも4000ゴルドも安い値段を提示した。
「……? そうですか……。ありがとうございます。ではその牛肉の他に、鶏肉と豚肉も頂けますか?」
スカーレットは店主の言動を変に思いながらも、牛肉を安く売ってくれた事に礼を言い、ついでに鶏肉と豚肉も買った。
「は、はい、喜んで……!!」
そして店主は終始二人に怯えながらも、そそくさと言われた通りの肉を袋に詰めスカーレットに手渡した。
「では……失礼します」
「安くしてくれてありがとうね」
二人は店主に軽く頭を下げ、礼を言い店を後にした。
「ま、毎度ありー! ふぅ……。何だかおっかない姉ちゃん達だったな……」
二人が礼を言い立ち去った後、店主はボソッとそう呟いた。
◇
――――数時間後。
肉と野菜、そして調味料など、ある程度料理に必要な物を買い込んだ後、二人は街の中心の噴水がある広場の所へ来ていた。
「まだ約束の時間までは随分ありますね」
「そうね。食材はある程度買えたし、やる事無くなっちゃったわね」
二人はそう言うと広場のベンチに腰掛けた。
そしてセリーヌは何故かスカーレットの顔をじっと見つめ始めた。
「……何ですか? 私の顔に何か付いていますか?」
「いいえ、そうではなくて。ただ肌が綺麗だなーと思ってね」
「肌ですか? 言われてみれば今まであまり気にしたことはなかったですね」
そう言うとスカーレットは自分の顔を触って確かめ始めた。
「いや、綺麗よ? 初めて見た時からずっと気になってたの。私も少し触ってもいいかしら?」
「えぇ? 別に構いませんが?」
「ありがとう……。――――うわぁ、スベスベモチモチだわぁ!」
セリーヌはスカーレットの頬をツンツンしたり、撫でてみたりしてその感触を味わった。
「スカーレット、あなた一体いくつなの?」
「私ですか……? ……二九歳です」
(さすがに実年齢は言えませんよね……)
「そうなんだ。私より四つ上なのね。そら何をやっても勝てないわけだ……」
セリーヌはスカーレットの肌を触りながら、そう言い何かに納得していた。
「も、もういいでしょうか……!? なかなか恥ずかしいのですが……」
「あぁ、ごめんなさい……! でもなんか不思議ね。さっきまであんなにいがみ合っていたのに肌を触っただけで、もうなんかどうでもよくなったわ」
スカーレットが顔を少し赤くしてそう言うと、セリーヌも謝りながら手を離した。
そしてセリーヌの突然の言葉にスカーレットも少し表情が柔らかくなっていった。
スキンシップとは、肌の触れ合いによって親近感を深める事をいう。
もしかしたら二人にも、その効果が現れたのかもしれない。
「ふふふ。そうですね。お互いにエル様をお慕いしている気持ちは同じなのですから、別にいがみ合う必要はなかったですものね」
「そうよね! これからはお互いに可愛いエルきゅんを守る為に頑張りましょう!」
「えぇ、そうですね。これからは一緒にエル様をお守りしましょう」
こうしてあれ程までにいがみ合い、くだらない論争を繰り広げていた二人は、肌の綺麗さについてという女性らしい会話と、エルを守っていくという自らの目的が一致した事もあり、お互いに改心し、手を取りあうようになったのだった。
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