22話 新たな旅立ち
俺とスカーレットが勇者パーティーに合流して暫く。俺達は魔物の討伐を報告する為、領主の屋敷へと来ていた。
◇
「おぉ、勇者様方。魔物を討伐してくれたのか?」
領主は相変わらず怪我のせいで床に伏していた。
「勿論です! ここら辺にいた魔物は全て全滅させました!」
――おいおい、何だ、その『全て全滅させました』って言い方は……?
まるで『車でドライブしました』みたいな言い方しやがって。
アホ丸出しだからやめておけ……?
俺がそう頭の中でツッコミを入れていると、領主は何も不思議に思わなかったのか、普通に礼を言っていた。
「そうかそうか。ありがとう。さて、それじゃあ報酬を――――」
「そ、そんな! いけませんよ! 俺達は勇者パーティーです! 魔族の驚異から人々を守るのが役目です! なので報酬なんて受け取れません!!」
――アホか……!!
報酬くれるって言ってるんだから、そこは貰っときなさいよ!!
無償で命をかけているのか貴様は!?
俺がそう思っていると、スカーレットが後ろからユーリに声をかけた。
「報酬は貰っておきましょう。これからの旅にお金は必要になります」
すると残りの三人もスカーレットに便乗して口を開き始める。
「そうよ。旅をするのにお金はかかるわ。ここは素直に頂いておきましょうよ」
「リリィも美味しいご飯、食べたい……。魚がいい……!」
「お、オイラもお金は大事だと思う……!」
俺以外の四人からそう言われ、ユーリはあっさりと心変わりし、領主から報酬を受け取った。
因みに報酬は一〇万ゴルド。
流石に王都の時のように一〇〇万とはいかなかったが、それでも十分な旅の資金になる。
これを貰わないなど、ユーリは勇者としては良い奴なのだろうが、パーティーのリーダーとしては失格だな。
すると、領主の横にいたミアが俺とスカーレットの前に立ち、深く頭を下げた。
「私の事を助けて頂き感謝しています。この度は本当にありがとうございました」
「いえいえ。私は当然の事をしたまでですよ」
(私は何もしていないのですが……)
「いーえ! ミアも無事で良かったね!」
俺がそう言うとミアは首を傾げながら、不思議そうな表情で口を開く。
「えぇ。ですが私、途中からの記憶が曖昧でして……。エル様が部屋に入ってきたところまでは覚えているのですが……」
「あ、あぁ……! 確かミアは魔人の攻撃のショックで気絶しちゃったんだったね! ね! スカーレット!?」
「……!? え、えぇ! そうですそうです! 大事に至らなくて良かったですぅ」
「あ、そうだったのですね! この度は重ね重ね、本当にありがとうございました」
俺が慌ててそう誤魔化すと、スカーレットも上手く合わせてくれた。お陰でミアは完全にそう思い込んでくれたようだった。
「何とミアまで助けて貰っていたとは。よし。今日はもうすぐ日も暮れる。出発は明日にして今日は屋敷に泊まって行きなさい」
「いや、それはだいじょ――――」
「「「「「ありがとうございます!!」」」」」
ユーリがまたしても領主の善意を断ろうとしたので、俺達は慌てて礼を言い屋敷に泊まる事にした。
これは余談だが、その後一時間程、ユーリは正座させられ皆から説教を受けた。
その間に俺はスカーレットに頼んでヤラカスが設置したワープゲートを閉じてくるよう指示を出した。
スカーレットは何故か少し残念そうな顔をしたが、直ぐにその場所へと向かってくれた。
◇
翌日
俺達は旅の準備を整えると足早に屋敷を後にした。
その後、町で野菜や肉などの食材と、旅の備品を買い足しておいた。
この世界には魔物を食べる習慣は無く、そこらに生息しているうさぎや鳥の肉を食べるようで、現代から転生して来た俺にとっては、とても有難い仕様だった。
――世界を回れば牛や豚なんかもいるんだろうか?
それは凄く楽しみだな……!
俺は一人、そんな事を考えていた。
するとユーリは次の目的地について話し始めた。
「えっと……次はどこに向かうんだっけ?」
「国王様からは『まずはメテックに行け』としか言われてないわね」
「リリィは魔法をぶっぱなせればどこでもいい……」
「お、オイラは魔物がいない所がいいな」
「ボンズ、それじゃあ僕達が旅をしている意味がないよ!」
「エル様の言う通りです。――――それではここから東へ行った所にある〈水の都 ウォルトス〉へ行くというのはどうでしょう?」
スカーレットは少し思案した後、水の都ウォルトスへ行く事を提案した。
〈水の都ウォルトス〉――――それはその名の通り、海に隣接しており、街中に川が流れていてとても美しい都。
「そうね。ウォルトスは大きい都市で人口も多い。魔族が潜んでいる可能性は高いかもしれないわね」
「水……。リリィの魔法の天敵……。リリィ、ウォルトス行くの反対……」
スカーレットの意見にセリーヌも同調した。
しかしリリィは火属性の魔法を多用する事から、水が嫌いな様で反対意志を示した。
「でも水が綺麗な所だから食べ物は美味しいって聞くよね。オイラは魚が食べたいな」
「魚……!? じゃあ行く……」
しかしボンズがウォルトスの食べ物の話をすると、いとも容易くリリィの意思は折れた。
「よし! じゃあ次の目的地はウォルトスに決まりだなっ!」
「「「「「おぉーー!」」」」」
そしてユーリが目的地をウォルトスに決め、俺達に背を向け拳を上に掲げた。
皆はそれに同意し、返事をし、ユーリが歩き出すのを待った。
するとユーリが突然恥ずかしそうな顔をして再度こちらに顔を向けた。
「――――で、スカーレット……。一つ質問なんだけど、東って右? 左? どっちだっけ?」
「…………。ここからですと、左が北、右が南ですのでユーリさんが向いている方角が東です……」
何かと思えば、またしてもユーリのアホが炸裂したのだった。スカーレットは少しの間をあけて、呆れながら東の方向を示した。
「あ、あはは! そうだったそうだった! よし! それじゃあウォルトスに向けてしゅっぱーつ!」
「「「「お、おーー……」」」」
すると、ユーリは余程恥ずかしかったのか、不自然に大きな声で威勢のいい掛け声を発した。
しかしそんなユーリに対し、他のメンバーは覇気のない声で返す。
――見てみろよ……。アホな事、言ってるだろ?
勇者なんだぜ、それで。
でもしょうがないんだよ。
このアホが勇者に選ばれてしまったのだから。
このアホが人間族の命運を握ってしまっているのは、紛れもない事実なのだから。
俺が早々に諦めていた事を他のメンバーが気付いたところで、俺達はいよいよ次の目的地『水の都市ウォルトス』へ向け出発したのだった。
第三章 ~完~
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