21話 有能すぎるお世話係
魔物が集まって来ているのが、スカーレットの香りのせいだとわかると、俺は言霊の能力を使い魔物達を一掃した。
そして、そんな俺とスカーレットの元へユーリ達は慌てて駆け寄って来た。
「エルー、大丈夫!? 何だか凄い魔法だったけど!?」
「リリィの魔法より強力……。エルがやったの……?」
ユーリとリリィは俺の言霊の能力を魔法だと思い込み、その威力に驚いていた。
――スカーレットの前で、これをするのは少し恥ずかしいが、ここは子供ムーブで誤魔化さないと……。
「だ、大丈夫だよ……! このお姉さんが魔法で僕を守ってくれたから!」
「…………!?」
(へっ!? え!? 何ですか、そのお子様らしい話し方……! 可愛すぎるのですが……!?)
俺のあからさまな子供ムーブにスカーレットはかなり面食らったようだった。
その後、暫くしてからいつもの様子に戻ると、スカーレットは皆に自己紹介を始めた。
「コホン……。只今紹介に預かりました、エル様のお世話係をさせて頂いております、
名をスカーレットと申します。これから皆様の旅に同行させて頂く運びとなりました。宜しくお願いいたします」
自己紹介を済ませると、スカーレットは軽く頭を下げ、まるで貴族の令嬢の挨拶の様に、スカートの裾を指でつまみ持ち上げた。
「お、お世話係ですって……!?」
(まさかエルきゅんにこんな美人なお世話係がいるなんて想定外だわ……。それに旅についてくるなんて……! もう少しで「セリーヌお姉ちゃん大好きー!」となる予定だったのに……!!)
そんなスカーレットを見てセリーヌは驚きの声を漏らした。
因みにスカーレットは人間に化ける際は何故か大きく胸元の開いたメイド服を着ている。
貴族の子供を探していると思われて、その方が都合が良かったのだと道中話してくれた。
――それにしてもさすがはスカーレットだな。
俺の世話係として全く違和感のない立ち振る舞いだ。
声を漏らしたセリーヌを含め、パーティー全員が完全に信じきっている。
まったく……。この勇者パーティーはちょろいぜ。
「つかぬ事を聞くけど、エルは俺のいた村の近くで拾ったんだ……。もしかしてエルは……親に捨てられたとかなの?」
「いえ、決してそのような事は。エル様はお父上が亡くなられて大変寂しい想いをされていました。それ故に少し気が動転してしまい家出してしまったのでしょう」
(まぁお父様である先代魔王様が亡くなられて、家出したのですから、嘘ではない……ですよね?)
「な、なるほど。オイラはエルの親御さんが心配しているんじゃないかと思ってたけど、そういう事情があったんだね」
「えぇ。まぁ実際、私をはじめとする残された大人達は凄く心配していましたがね。そしてかなりの時間を要しましたが、お世話係である私がエル様を無事保護出来たのは皆様のお陰です。ありがとうございました」
(実は他の方々がどう思っているかなど気にする余裕もなく、勝手に魔王城を飛び出したなどとは口が裂けても言えませんね……)
「い、いえいえそんな! 俺はただエルが心配で連れて来ただけだから……!」
スカーレットに頭を下げ、礼を言われるとユーリはわかりやすく照れ、彼女のその美しさに鼻の下を伸ばしていた。ついでにボンズもスカーレットをチラチラ見ては、顔を赤くしていた。
――いやいや、スカーレットさん。
あなた有能すぎないですか!?
この二人は完全に信じてるし、スカーレットの美貌にやられちゃってるじゃないの。
あとは女性陣二人だけど……。
何だか冷めたい目をしているな……。
「ユーリもボンズも鼻の下伸ばして……。男はやっぱり変態だね……。そんなに大きなおっぱいがいいの……?」
「…………!!」
(この男共、私の胸を……!? なんと下劣な! エル様のお許しが出たら真っ先に殺しましょう……! ――――ところでエル様は大きいのと小さいの、どちらがお好みなのでしょうか……)
リリィはそう言うと二人に冷たい視線を送った後、自分の小ぶりな胸をぺたぺたと触った。
そんなリリィに二人は慌てて首を横に振り、あーだこーだと言い訳を始めた。
――そんな事ないぞリリィ。
その小ぶりな胸も、華奢なリリィにマッチしていてとてもいいじゃないか。
ほら、現代では『貧乳はステータス』なんて格言があるくらいだし自信を持つんだ……!
俺は心の中でリリィを盛大にフォローした。
そしてスカーレットの視線がやけに痛い。
胸について考えているのがバレたか……?
いや、それはないか。
そう考えていると次はセリーヌがスカーレットに噛み付いた。
「あなた、お世話係か何だか知らないけれど、エルきゅんは私の弟よ!? それに私はここまでエルきゅんと一緒に旅もして来たいわば先輩。立場を弁えなさい?」
(この女……。急に出てきてエルきゅんの近くに……! キィイイイ!)
「失礼ですが聖女様。私はエル様が赤ん坊の時からお世話をさせて頂いております。たかが数日旅をしたくらいで先輩などと申されるのは如何なものかと。エル様と過ごした時間の長さで言うと私の方が先輩なのでは?」
(何だ、この女は? エル様をその様な呼び方をしよって。しかも弟などと……。なんと腹立たしい……! 私のエル様への愛の大きさに勝てるとでも思っているのか?)
二人はお互いに顔を見合わせて、眉をピクピクとさせながら、引き攣った笑顔を浮かべ言葉を交わしていた。
――おいおい、どうしたどうした。
こんな美女お姉さんの二人が、俺のようないたいけなショタを取り合うなんてあってはならんぞ。
実に、けしからんぞ……!
しかし、そう考えている俺を他所に、二人の攻防は激しさを増していった。
「た、確かに時間はそっちの方が長いかもしれないけれど、エルきゅんにとって初めての旅を共にしたこの密度! それには敵わないでしょう!?」
(キィィィィ! なんて生意気なの!? 私がエルきゅんを想う気持ちはこんな女になんか負けないんだから!)
「ふっ。敵わないも何も、相手になりませんね。先程も申し上げた通り、私はエル様が赤子の時から傍で見ています。エル様の初めては全て私のものです」
(そう、エル様の初めては全て私のもの……!)
そうして暫くの間、スカーレットとセリーヌによる熾烈な攻防が繰り広げられ、他のメンバーは呆気にとられていた。
そして俺はやれやれといった感じで二人の間に割って入った。
「二人とも、もうそれくらいにしときなよ!」
「エルきゅん……!」
「で、ですがエル様! この女は――――」
「やめときなって……。ね……?」
「は、はい……」
俺が少しばかりの圧を出すと、スカーレットは簡単に引き下がった。セリーヌは元より勝てる見込みがなかったと悟っていたのか、俺が止めに入ると涙を浮かべていた。
セリーヌが俺を可愛がってくれているのも、スカーレットが俺を信頼してくれているのもわかっている。
だがその事で二人が言い争うのは見たくない。
なぜなら二人は人間族と魔族だからだ。
二人の言い争いが、種族間の争いの縮図のように見えて、俺の心がズキズキと痛む。
一見すると笑えるシチュエーションだが、この種族間の争いの発端が、先代魔王と人間族の国王の『どちらかが女にモテるか』というくだらない論争だった事を考えれば、軽視出来ない。
だから、俺はこれからも余りに行き過ぎた二人の言い争いがあれば止めに入ろうと思う。
「はい! じゃあ仲直りの握手!」
「「は、はい……」」
そして二人は俺の言葉に素直に従い、握手をした。
その手にお互いの渾身の力が込められていた事を俺は知らない。
こうしてスカーレットが上手く(?)ユーリ達と合流した後、俺達は魔物を討伐した事を報告すべく領主の屋敷へと向かうのだった。
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