20話 後始末
ヤラカスに制裁を与えた後、スカーレットと秘密を共有した俺は眠っているミアを屋敷の安全な部屋へ寝かせた。
そして俺は角と赤い目を【隠蔽】すると、ユーリ達がいる町の外へと向かった。
◇
町の外へと到着すると、ユーリ達は未だ魔物の群れと戦闘を続けていた。
「ぐっ……! くそ……! キリがないな……!」
ユーリはそう言いながら聖剣をブンブンと振り回していた。
しかし、その聖剣には一滴の血もついていなかった。つまり全て空振りしていたのだった。
「はぁ……。何をしているんだアイツは……」
「エル様。あのとんでもない聖属性の気配を漂わせている剣を振り回しているのが、まさか勇者ではないですよね……?」
俺がユーリを見て呆れながらそう言うと、隣にいたスカーレットがそのアホを指差しながらそう聞いた。
「そのまさかだ……。先が思いやられるであろう?」
「いや、これは……。本当に想定外ですね……。ハッキリ言ってヤラカスの方が百倍強いです」
「だよなぁ……」
スカーレットは言わなくてもわかり切っていた事をしっかりと言葉にして俺に伝えた。俺はもう一度、無意味に聖剣を振り回すユーリを見つめ項垂れていた。
「いひひひ……。くらえっ……! 【ファイアダンク】……!」
すると、ボガァーーーーーン……! ――――と、とんでもない爆発音を立てて魔物を消し炭にしていく上級魔法【ファイアダンク】を放つリリィが目に入った。
「な、なんですか、今の爆発は……? とんでもない威力でしたが……?」
「あれは勇者パーティーの魔法使い、リリィの上級魔法だ」
「なんと……。あの威力は五芒星にすら匹敵するものですよ……。そんな逸材が勇者パーティーにいたとは……」
「いや、それがそうでもないんだ」
「……と言いますと?」
すると先の爆発は更に勢いを増し、右へ左へと魔物が居ない所までも猛威をふるい始める。
「これは……一体何処を狙っているのでしょうか?」
「狙っていない……。アレはところ構わず魔法をぶっぱなしているだけだ」
「はい……?」
そしてリリィの魔法は仲間であるセリーヌとボンズにも被害が及ぶ。
「【フル・ヒール】! ――――ちょっとリリィ!! もう少しちゃんと狙いを定めなさいよ! 私にまで当たってるじゃない!」
「ひえぇぇええ!! セリーヌさん、オイラの事も回復して下さいよ……!」
「何を甘えているのかしら!? 傷だらけになるのがタンクの仕事でしょう? 早く魔物の群れに突進しなさいよ!」
「そ、そんなぁー……。と、とにかくオイラはリリィを止めてきます……!」
リリィの魔法が直撃したそばから、セリーヌは自分に回復魔法をかけ、リリィに文句を言っていた。
そして恐らく魔物ではなく、リリィの魔法によって傷付いたボンズは、セリーヌに回復をせがむも呆気なく断られ、リリィの元へと走って行った。
「エル様……? あの二人は何をしているのです? どうやらタンクと聖女のようですが、あまり機能していないように見受けられますが……」
「あぁ。その通りだ。仲間の事を一切回復しないドSな聖女と、ビビりまくって逃げ回るだけの雑魚タンク。あの二人も勇者パーティーだ……」
「あぁ……。私が知らない所でエル様は大変苦労なされていたのですね……。心中お察しいたします……」
俺がそう説明すると、スカーレットは俺を見つめ涙ぐみながらそう言った。
「それより、ワープゲートは俺が対処して魔物がこれ以上増えない様にしたはずだが、何故未だ、こんなにも魔物が溢れているんだ? 全部がここに集まる理由はないはずだろう?」
「そ、それは……」
(まずい……。このままでは私のせいでここへ魔物が集まって来ているのがバレてしまう……!)
「そういえばさっき、ヤラカスとの会話でスカーレットの香りがどうのとか言っていたが、あれは魔物が集まって来ているのと何か関係があるのか?」
「そ、そんなもの、ヤラカスのでまかせに決まっているではありませんか……! た、確かに淫魔は魔物を引き寄せる香りというものを発しますが、私はその辺の低位の者とは違い、それを制御する事が出来ますから……!」
(まさかエル様……。さっきのヤラカスとの会話を聞いていらしたのか……!? まずい……! これは非常にまずい……!)
何やらスカーレットが動揺し、目が泳いでいる。俺はそれを怪しく思い、スカーレットにある提案をしてみる事にした。
「そうか。なら一度その制御とやらを解除してみろ。責任は俺がとる」
「い、今でしょうか……?」
(これはまずい……。誰か助けて……)
「……今だ」
「は……はい」
(お、終わった……。楽しかったよ、エル様との楽しい日々。そしてさよなら、これからする予定だったエル様との旅よ……)
そしてスカーレットは俺の言いつけ通りに香りの制御を解除した。
するとそこら中に散らばっていた魔物達の目の色が変わり、くるっと方向転換しコチラへと一点集中で向かってくる。
「魔物達が急に……。一体何処へ……? ってエル!? 何でそんなとこにいるの!?」
「え!? エルきゅんが!?」
「エル……。今助けるから……。ファイア――――」
「はぁはぁ……。リリィ……。それは辞めた方がいい気がする……。リリィの魔法の威力を一番知ってるオイラが言うんだから間違いないよ」
ユーリ達はその魔物達の急な行動に戸惑い、その先に俺がいる事に気が付くと皆は心配そうに俺の方を見た。
そして明らかにスカーレットに目掛けて突進してくる魔物達を確認すると俺は意地悪にスカーレットに笑顔で詰め寄った。
「スカーレット? 貴様が香りの制御を解除した途端、魔物達が血相を変えてこちらへ向かって来ているのだが、これはどう説明する?」
「こ、これには深ーい事情がありまして……」
(やばい……。エル様の笑顔が恐い……! これは後で二、三回死ぬやつだ……)
スカーレットは俺にそう言われると、途端にたじろぎ始めた。
「ほう? ではその理由を申してみよ」
「………………。申し訳ありませんでしたァァ……!! この町に魔物達が向かって来ているのは私の香りのせいでございますぅぅ……!!」
「馬鹿者!!! 何故それを早く言わんのだ!!」
「普段は完璧に制御出来るのですが、エル様が家出をなさって気が動転してしまい、制御が疎かになっておりました……。こんな事がバレたら、エル様に叱られるかと思い……。本っ当に……! 申し訳ありません……!」
(ぐっ……。エル様の叱責……! 気、気持ちいい……。これは新たな扉が――――)
「ったく……。世話の焼ける世話係だな。世話をかけるのは俺のはずなんだがな?」
「全くもって、その通りでございます……」
俺はそう言うと全方位から集まって来た魔物達に向かって言霊を唱えた。
【落とし穴 発動】 【猛毒沼 設置】
すると魔物達は次々と俺の周りに発現した落とし穴へとはまっていく。
そしてその穴の中には猛毒の沼が設置してあり、はまった魔物達は次々と死に、跡形もなく溶けていった。
「ふぅ……。これで済んだから良いものの、次からは気をつけるのだぞ?」
「は、はい! 承知しました!!」
(え……。私許された……? そして何今の……? あんなの五芒星の方々でも下手したら死ぬのでは……)
「あぁ、それと。ユーリ達にはコレをやったのはスカーレットだということにしておいてくれ」
「は、はい? 何故です? エル様の実力を勇者共に見せ付けるチャンスではありませんか?」
「俺は無害な子供を演じているのだ。その方が都合がいいのでな」
「な、なるほど……。承知しました!」
(さすがは魔王様。無害な子供を演じ、隙を狙って勇者達を無力化するおつもりなんだわ!)
◇
俺が発現させた落とし穴と猛毒の沼によって、魔物達が全滅した後、その穴の隙間をぬってユーリ達が俺とスカーレットの元へと駆け寄って来た。
――さて、諸々の事を上手く誤魔化せるかな。
まぁコイツらなら大丈夫か。
そう高を括って俺はユーリ達と合流を果たした。
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