18話 お仕置きの時間
ヤラカスとスカーレットとミアの三人がいる部屋に、大量の水と共に颯爽と登場した俺は、ヤラカスにどうお仕置きするかを考えていた。
「うーん……。どうしようか? 貴様はどんな仕置きが望みだ? 言ってみろ」
「何を偉そうに……。ガキのくせによぉ……!!」
「はぁ……。だから、俺が魔王だって言っているだろうが!」
俺が呆れながらそう言うとヤラカスは更に続ける。
「お前が本当に魔族だって言うんなら角とか翼があるはずだ! それに魔族の目は赤だったり黄色だったりするもんだ! なのにお前は黒い目をしている! 黒い目の魔族なんざ聞いた事がねぇ!!」
ヤラカスの言う通り、この世界の人間は基本黒い目をしている。
しかしながら、セリーヌの様に聖女として特別な修練を積むと目が青く変色する事がある。
それに対し魔族は、様々な色の目を持つ者がいるが、黒い目を持つ魔族は存在しない。
「はぁ……。ったくうるさいヤツだな。――――じゃあこれでいいか?」
そして俺はため息混じりにそう言うと、角と目に施した【隠蔽】を解除した。
「…………!!」
(やっぱり魔王様は本来のお姿が一番可愛らしくて素敵だわ♡ あぁ、可愛い……。尊い……!)
「な……!? お前……本当に魔族だったのか!?」
「だからさっきからそう言っているだろ!」
「いや、まだただの魔族のガキだという可能性も……。ちくしょう、こうなりゃヤケクソだ! お前が本当に魔王だと言うのなら俺の魔法くらい防げるよなあ!?」
諦めの悪いヤラカスは未だ、俺を魔王だと信じていない様子だった。そしてヤラカスは宣言通り、魔法の詠唱を始めた。
すると後ろにいたスカーレットが突然口を開いた。
「やめておけ、ヤラカス!! もう既にやらかしているのに、これ以上罪を重ねるな!!」
(うるさいのよ、この不細工は! アンタのせいで、魔王様の可愛らしいお声がまるで聞こえないじゃない!!)
「うるせぇ! 黙ってろスカーレット!! 俺はこのガキが魔王だなんてぜってー信じねぇ!! くらえ!! 【サンダーアロー】!!」
ヤラカスはスカーレットの忠告を無視し、俺に雷属性の中級魔法【サンダーアロー】を放って来た。
「おいおい……。あんな言い方するから、とんでもなく凄い魔法を放つのかと思ったら何だよ。ただの中級魔法かよ……」
「ヤラカス……。お前、死んだな……」
(いっそのこと死ね。そして黙れ……!)
俺は呆れ顔をする。そして俺の後ろにいたスカーレットはヤラカスを哀れみ、そっと手を合わせ、そう呟いた。
――はぁ。面倒だな……。
俺は魔力適性が無いから魔法を打ち消すみたいな干渉は出来ないんだよな……。
だからわざわざ火属性魔法には水をかけたりとか、ワープゲートにはあんな力技で解決したりとかしてたのに……。
それにしても今度は雷属性か。
闇と火と雷ってコイツ……こんな感じなのに三属性も魔法を使えるのか。
俺は一切魔法を使えないというのに……。生意気な奴め。
「えっと? 雷属性を打ち消すにはどうすればいいんだ? 確か電気を通さない物は"絶縁体"って言うんだっけ? じゃあそれの盾みたいな感じで――――【絶縁体の盾 発現】……!」
俺はそう唱え、飛んでくるサンダーアローへと手のひらを向けた。すると俺の手にゴム製の盾が発現した。
「うーん……これはただのゴム板だなぁ……? こんなので本当にサンダーアローを打ち消せるのか……? 俺魔法適正無いし、当たったら普通に感電して死ぬんだが……?」
しかし俺の心配を他所に、そのゴム板はヤラカスが放ったサンダーアローを意図も容易く打ち消した。
「ファ……!? マジで打ち消せちゃったよ……。魔法に干渉出来なくてもやりようはいくらでもあるもんだな」
俺がそう浸っていると、ヤラカスは自身の渾身の魔法(中級)を打ち消された事に驚いた様子で、俺を怒鳴りつける。
「な、何しやがったお前!? 俺のサンダーアローが効かねぇだと!?」
「ゴムは電気を通さない。知らないのか?」
「何だそれはァァァッ!? ふざけやがってぇぇ……!!!」
俺がそう言うとヤラカスは更に怒りを露わにし、遂には体が震え出した。どうやらゴム板なんかで自分の魔法を打ち消されたのが相当気に入らなかったようだ。
「これで少しは俺が魔王だと信じられたか?」
そして俺は不覚にも、追い打ちをかけるようにそう言ってしまった。
「ちくしょうがあ!!! 俺は認めねぇ……。認めねぇぞぉぉおおお!! この俺がこんなクソガキに負けるかァァァッ!!! うわァァ……!!」
するとヤラカスは大声で叫び、いよいよ錯乱し始めた。そして錯乱状態のヤラカスは、持てる全ての魔力を使い、火属性の中級魔法を乱発し始める。
「こんなガキが新しい魔王になるんだったら、俺が魔王になってやる……!!! この屋敷も、町にいる人間共も、俺の邪魔をするお前らも……! まとめて焼き払ってやるからなァァァ……!! ギャハハハハハ!!」
「ヤラカス……。本当にお前は……。またやらかすのか……」
ヤラカスが叫びながら放った火属性魔法により、部屋中の物が燃え始めた。そんな中、スカーレットは同僚であるヤラカスを哀れみ、そう呟いていた。
そして俺はヤラカスの目に余る言動に、いよいよ怒りが頂点に達しようとしていた。
「スカーレット。俺はコイツに制裁を与えるが……よいな?」
「はい。魔王様。この大馬鹿者に罰をお与え下さいませ」
(きゃ♡ 魔王様が私に声をかけて下さった……! 死ぬ……!)
スカーレットは俺の言葉にそう返し、頭を下げた。
そして俺はヤラカスの方へと向き直った。
「おい、貴様。よく聞け。俺は先代魔王とは違い、人間族との争いを望んでいない。その意味がわかるか?」
「うっせぇんだよ、クソガキィ! 俺はこの町ごと燃やし尽くすって決めたんだよ!! お前もさっさと死にやがれぇ!!!!」
「はぁ……。まったく。どうしてこうも魔族という奴は人の話を聞かないんだ? もういい。――――【スプリンクラー 発現】」
俺は言霊の能力で天井にスプリンクラーを発現させ、部屋中に水を撒いた。
するとヤラカスの乱発していた火属性魔法は徐々に消えていき、ヤラカスも頭が冷え始めたのか魔法を放つのを止めた。
「ぐぅ……。またしても俺の邪魔をするか、クソガキィ……!」
「黙れ。俺の言う事をきかない大馬鹿者がァ……!」
俺はそう言い高速でヤラカスの懐へ潜り込み、顎に渾身のアッパーをくらわせた。
「グハァァァァ!!!」
「今から俺は、貴様が反省したとわかるまで殴る。歯ぁ食いしばれやぁ!!!」
「ひゃ、やめてくれぇー……!」
その後、俺はヤラカスの上に乗り、往復ビンタをくらわせた。
ヤラカスの顎は砕け、歯はボロボロになり、顔には血が沢山ついていた。しかし俺はそれでもまだ殴る手を止めなかった。
――これで……。
俺が手を汚す事で……争いが終わるなら……。
その一心で――――
「ぐふっ! がはぁっ……! 反省した……! もう反省したからぁ……!」
ヤラカスがそう言うと、俺は殴るのを辞めた。
「本当か……? 本当に反省したのだな?」
「あぁ、反省した……。だからもうやめてくれ……」
「よし。いいだろう」
俺はヤラカスの上から降り、スプリンクラーの水でびしゃびしゃになっている床に足をついた。
そして仰向けで倒れているヤラカスの顔についていた血は、スプリンクラーの水によって段々と洗い流さていき、魔族特有の再生力でみるみる顔の腫れがひいていく。
そしてヤラカスはゆっくりと起き上がると、床の水たまりに映る自分の顔を見て、綺麗な涙を流した。
「これが……俺……? こ、こんな……美形に……!? 魔族一不細工だと言われた……この俺が……?」
「は? 何を言っている貴様? あれだけ殴って美形になんて……!?」
なんということでしょう……!
殴られる前からボコボコだった顔面は綺麗に整えられ、無駄に長く出っ張っていた頬骨と顎もしっかりと顔に収納されました。
そして綺麗な顔に相応しくないガタガタだった歯もバッサリとカットしたおかげで、誰もが羨む程の美形へと変貌を遂げたではありませんか!
「ありがとうございます……魔王様……」
「ようやく俺が魔王だと認めよったか。まぁいい。これで少しは懲りただろう? これでもう貴様も、人間族を滅ぼそうなどおも――――」
「そうか……! 魔王様はこの顔を活かした、もっといい作戦を考えろ。そう仰りたいのですね……!!」
俺がそう言いかけると、遮るようにヤラカスはそう言った。
「いや、ちが……」
「承知いたしました、魔王様! このヤラカス、直ぐに魔王城へと戻り作戦を練り直して参ります!! この度は大変お見苦しい所をお見せして申し訳ありませんでした!! それでは……!」
「おい、ちょっと待て!!! それはちがっ……!」
そう言い残し、綺麗な顔になったヤラカスはワープゲートを通じて魔族領へと帰って行った。
「はぁ。どうしてこうも伝わらないかなぁ……。くそアホめ……」
俺はそうボヤき、奇しくもヤラカスと同様にその場で地団駄を踏んだ。
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