13話 盗賊退治
王都を出発した俺達は、一つ目の町〈メテック〉を目指し歩いていた。
「メテックはどんな町なんだろうねー? ワクワクするなぁ!」
「わ、ワクワク? ユーリさんは凄いですね……。オイラはどんな魔族がいるのか今から不安で堪らないですよ」
「大丈夫よ、ボンズ。傷付けば私が回復してあげるわ。但し、私が傷付いていると判断すればね」
「大丈夫……。その前に、リリィの魔法で……。全部消し飛ばすから……!」
ユーリは能天気に、ボンズは今から魔物の驚異に怯え、女性二人はとてもおっかない事を口走っていた。俺はそんな四人に呆れつつ、黙って周囲の警戒にあたっていた。
何せここは異世界。
王都を出発した勇者パーティーには必ずといっていい程、お約束な展開がある。
「きゃーーー! 辞めてくださいませ! 誰か! 誰か助けてください……!」
「へへっ! こんな荒野の真ん中で助けを呼んでも誰も来やしねぇよ! オラ、おめぇら! 馬車から金目のモン全部持ち出せ! 邪魔する奴は殺しても構わねぇ! だが、この女は別だ。高そうな服を着てるところを見るに、お前。どっかの貴族の娘だな? お前を餌に親をゆすれば更なる金が舞い込むかもしれねぇな? イッヒヒヒ」
そう。盗賊がどこかの貴族令嬢を襲うというテンプレ展開である。
――まぁ来るだろうと思ってはいたが、まさか本当に来るとはな。
護衛の騎士や、執事が次々とやられていっている。
さて、勇者パーティの奴らは、どう動く?
俺がそう思いながら観察していると、ユーリが一番初めにその盗賊団の元へと向かって行った。その後、パーティーメンバーも後を追う様についていった。
「待て君達! そこで何をしている!!」
――おぉ……さすが勇者だな。
こういう場面でこそ、その勇ましさが輝く。
「あ!? 誰だお前? 見てわからねぇのか? 金になりそうなコイツらを襲ってんだよ!」
「あ、そうなのか!」
「いや、わかってなかったのかよ!! じゃあ何で助けに入ったんだよ!」
俺は思わずツッコミを入れてしまった。
「エルきゅんの言う通りよ、ユーリ。これは由々しき事態だわ……!」
――流石は聖女セリーヌ。
いくらドSと言えど、こういう場面では弱き者の味方なんだな。
「これは由々しき事態です! 騎士の方々がああも傷だらけに……! はぁはぁ……! さぁ、盗賊共! もっとやりなさい!」
セリーヌは息を切らし、少し興奮気味にそう言った。
――前言撤回。
このドS聖女はやっぱり駄目だ。
「ダメだよセリーヌ……。特殊な癖を出すのはそのくらいにしないと……。任せて……。リリィが上級魔法でこんなヤツら、一瞬で消し炭にしてあげる……」
リリィはそう言うと杖を構え、盗賊に向けて魔法の詠唱を始めた。
「おま……! リリィの魔法は威力が強すぎるからやめた方がいいんじゃないかな?」
俺はリリィがどんな魔法を繰り出すのか、そしてそれをぶっぱなせばどうなるのかを瞬時に予測し、リリィを制止する。
「そ、そう……? そんなにリリィの魔法の威力って凄い……?」
「う、うん! すごいすごい!」
「えへへ……。わかった……。エルがそう言うならやめとく……」
俺が褒めてやると、リリィは満足そうにして杖を下ろした。とりあえず、ここら一帯が消し炭になるという最悪の事態は免れたようだ。
「あわわわわわ!! と、盗賊だあああ! どどどどどどどうしよう……!!!」
「ボンズ、とりあえず落ち着いて! ほら見てよ! 盗賊の人達より、ボンズの方が体が大きいし強そうだよ? 大丈夫! ボンズなら負けないよ!」
俺はビビり散らかすボンズを必死に勇気づけた。
「エル君ありがとう。でもね、オイラは戦闘では体格より肝っ玉の大きさで強さが変わると思うんだよね」
「そ、そうなんだ!」
――この木偶の坊は真面目な顔で何を言っているんだ?
それがわかっているなら精神力を鍛えておけよ!!
俺がそんな事を考えていると、ユーリが聖剣を発現させ盗賊に啖呵を切る。
「とにかく君達は悪いヤツらなんだな!? それなら勇者として俺はこの状況を見過ごす訳にはいかない! 俺は君達を倒すよ!」
――よく言った!
もうこのパーティーメンバー達はダメだ。
勇者ユーリよ、お前だけが頼りだ!
「勇者だあ? 勇者ってのは魔王を倒す為の称号だろ? 何故、同族の俺達に攻撃するんだ? 勇者は俺達人間を守るモンだろがよ」
「た、確かにそうだね……。 俺は勇者だから人間を守らないといけない。 じゃあ俺は君達を倒せない……。でも襲われている人も助けないと……。えぇ……? どうしよう!!!」
――何で言いくるめられてるんだ、このアホは……。
どう考えてもこの盗賊は今、人間を傷付ける魔族と同等レベルに倒すべき悪の相手だろうが……。
あぁー、もう……!
ったく。しょうがないヤツらだなぁ……!
「ユーリ!! 聖剣を空に向かって突き上げろ!!」
「え、え!? う、うん! わかった!!」
俺の指示を受け、ユーリは戸惑いながらも聖剣を空に向かって突き上げた。
【雷槍十連撃】
そして俺は小声で『言霊』を唱えた。
するとたちまち空に雷雲が立ち込め、ゴロゴロと音を立て始めた。その雷雲から落ちた十本の雷の槍が、盗賊達に直撃した。
「ぎぃやああああああ…………!!!!!」
ユーリはポカンとした表情でその様を見ていた。セリーヌ、ボンズ、リリィの三人は口を大きく開け、唖然としていた。
雲が晴れ、陽の光が差すと盗賊達は黒焦げになり、ビクビクと痙攣しながら倒れていた。
すると襲われていた貴族の令嬢がユーリの元へと駆け寄る。
「勇者様……! 助けて頂きありがとうございます……。先程の神の怒りのような雷は見事でした!」
「へっ? 今の俺がやったの……?」
「ち、違うのですか……?」
――まずい……。
このままでは俺がやったとバレてしまう……!
「い、いやぁー! さすが勇者だね、ユーリ! あんなおっきな雷を落として盗賊をやっつけちゃうなんて!」
「やはり! そうだったのですね! さすがは勇者様!!」
俺がユーリの手柄だと思わせると、令嬢はそれを信じ勇者を讃え始めた。
「ユーリ、ずるい……。リリィにだって、あのくらい出来るもん……!」
リリィは少しご機嫌ななめのようだ。
自分は魔法を使うのを止められていたのだから無理もない。
「あわあわしてたら終わっちゃった……。オイラは本当に駄目だな……」
ボンズは自分の弱さに落胆しているようだ。
――そうだ。このままでは駄目だぞボンズ。
強くなれ。精神的に……。
「まぁ……。これはなんという傷付き具合……。そこの盗賊? 回復してあげましょうか?」
――少しは自重しろ、ドS聖女!
せっかくユーリの手柄になるように上手く倒したのに、回復して復活されたらたまらんわ!
まったく……。特殊性癖の聖女にも困ったものだ。
「えへへへ! これ俺がやったのかぁ! あんまり戦ったりとかした事なかったけど、俺ってやっぱり強かったんだな……。――――よし、このまま魔王も倒してやるぞー!」
そして肝心のユーリは、いい具合に勘違いをして身の丈に合わない目標を掲げ、意気込んでいた。
――おお、やっぱりこいつアホだ。
よし、当分はユーリの力に見せかけて俺が『言霊』の力を使って敵を倒そう。
これなら俺も目立たないで済むし、ユーリが勇者としての手柄も上げられる。
我ながらナイスアイデアだ。
俺のナイスアイデアを他所に、助けた貴族令嬢がこれまたお約束の言葉を口にする。
「私を盗賊から助けて頂いた勇者様に、折り入ってお願いしたい事があるのです……」
「はい! 何なりとお申し付けください!」
ユーリは令嬢の言葉に二つ返事で引き受けた。
――ユーリよ。それはフラグといい、確実に面倒事に巻き込まれるサインなのだ。
よーく覚えておきなさい。
こうして俺達は助けた貴族令嬢の『お願い』とやらを聞く事になった。
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