12話 旅立ち
カマセーヌに愛のムチと称し、少しのお仕置きを与えたところで、俺は元いた場所へと戻っていた。
そしてユーリは、突然降り注いだ火の玉に大量の魔物が殲滅された事に驚き、その場で狼狽えていた。各方面へと散らばっていた他のメンバーも、慌てて元いた場所に戻って来ていた。
「な、何だったんだ? 今のは?」
「凄い威力だった……。あんな事されたらリリィの魔法も形無し……」
「お、オイラはその前の大きな爆発で気を失っていたよ……」
「きっとユーリが勇ましく戦う姿を見て、神が魔物達に鉄槌を下したのね! さすがは勇者ね……!」
「あ、そういう事か! じゃあ俺のおかげだね! なんだー、また新しい敵が来たのかと思ったよー! はははー!」
――はははー! ではない。
このアホは本当に一度痛い目に遭わさないといけないかもしれない。
そしてユーリはセリーヌの言葉を聞き、いつものアホな様子に戻った。そのタイミングで俺も話の輪に入って行く。
「みんな大丈夫だった? 怪我とかしてない?」
一応、皆を巻き込まないよう細心の注意は払ったつもりだが、念の為にそう声を掛けた。
「エルきゅーーん! セリーヌお姉さんは大丈夫よー? エルきゅんこそ怪我とかなーい? ――――ってあら!? 腕を少し火傷してるわ!? 回復してあげるわっ!」
俺がそう声をかけるとセリーヌは目にも留まらぬ早さで抱きついて来た。
そして火の玉によって負った俺自身が気付いていない程の小さな火傷を見つけるやいなや、戦闘中に一度も使わなかった回復を俺に使おうとする。しかし俺は即座に断りを入れる。
「ぼ、僕は大丈夫! それよりも傷付いた騎士達を回復してあげて?」
――危ない危ない……。
回復魔法って聖属性だろ?
俺は一応魔王で、分類するなら魔族なわけだし、どんな効果があるかわからないからな。
ダメージを受けたりしたら大変だ。
「駄目よ! 可愛いエルきゅんには小さな傷も付けたらだめなの……! そこらの騎士達は別にいいけど。それが仕事なのだから……」
――セリーヌ、こいつやべぇ……。
セリーヌだけは絶対に怒らせないようにしよう……。
だが、戦闘中に回復しないのはさすがに困るな。
俺が子供っぽくお願いしたら回復してくれる様にならないかな? ――――無理か……。
すると今度はリリィが少し興奮気味な表情で口を開いた。
「ねぇエル……! リリィの魔法、見てくれた……? ねぇ……すごかった? すごかったでしょ……?」
「う、うん! 凄かったよ! 僕にはあんな魔法使えないや……! はははー……」
俺がそう言うとリリィは満足そうに笑っていた。
――ただ狙いは全く定まっていなかったけどな……?
ま、まぁ俺があんな魔法を使えないというのは嘘ではないしな……!
あんなモノを毎回ぶっぱなされたらいつか俺にも被害が及びそうだ……。
近いうちに何とかしないとな。
「魔物が沢山いて怖かったね。エル君は大丈夫だったかい? オイラは凄く怖かったよ」
すると次はボンズが心配そうに俺に声を掛けて来た。
「うん! 僕はみんなのお陰で無事だよ! 怖かったんだね。でも盾を持って敵に突っ込んで行くところはカッコよかったよ!」
――俺はさっきから何を言っているんだ……?
子供っぽい話し方をするのはやはり難しいな。
でもボンズがちゃんとタンクとして機能してくれないとこの先の敵と上手く戦えないのも事実だ。
何とかしてこのビビり体質を克服してもらわないとな。
三人と話しているとユーリは、何やら少し不満気な表情を浮かべていた。魔物を一掃出来たというのに何がそれ程不満なのだろうか?
「エルはみんなから好かれてていいなー。俺が勇者で、リーダーのはずなんだけどなぁ……」
ユーリは非常に下らない事に不満を抱いていた様子。
――まぁまぁそう言うなよ。
いくらイケメンと言えど、子供の可愛さの前では無力なのだ。
現代には"可愛いは正義"という言葉があるくらいだからな。
でもまぁこんな事で、勇者にやる気を無くされては困るからな。
ここは一つ、フォローしとくか。
「そんな事ないよ! ユーリだって勢い良く聖剣を振り回しててカッコよかったよ!」
――まぁ一度もそんなシーンは見ていないのだが。
このアホは聖剣でボスのいる方向を占っていただけだが。
アホがアホなことをしている間に、魔物を指揮する親玉を倒したのは俺なのだが……!
「ほ、ほんとか? 嬉しいなぁ! エルがそう言ってくれるなら次も俺頑張るよ!」
――俺に言われなくても頑張って欲しいものだ。
なぜなら勇者なのだから。
いざとなったら魔王であるこの俺をも――――いや、それは無いか。
そして暫く五人で談笑していると、騎士の一人から国王が呼んでいるから城へ行くようにと言われ、俺達は城へと向かった。
◇
城の中へ入り、王の間まで歩いているとセリーヌが怪訝な表情で口を開いた。
「どうしたの? ユーリもエルきゅんも元気がないみたいだけど?」
「いや、うん。ちょっと……ね」
セリーヌにそう言われると、ユーリは気まずそうな表情でそう答えた。
――確かに気まずいよな……。
だってさっきあんなに怒られたのだから。
まぁ確かに……?
王妃の胸をガン見してたのは俺らだけどさ?
「ねぇねぇ。みんなは王様と会った時はどんな感じだったの?」
「私は王都の神殿で育ったから何度も国王様にはお会いしてるけど、普段からとても優しくて、怒っていらっしゃる所は見た事がないわ?」
「リリィにも優しかったよ……! 王様も、王妃様も……。魔法凄いねって……。服も可愛らしいねって言ってくれた……!」
「お、オイラも体格を褒めて貰ったし、頑張れって言ってもらったよ!」
「へ、へぇ……」
俺は三人にそう相槌を打つと、ユーリの服の裾を引っ張り、顔を近付け小声でコソッと話し掛ける。
「おい、まずいぞ。俺達だけだぞ、あんなに怒られたのは……! ていうか貴様があんな訳のわからんアホな事を言い出すからだぞ……!」
「いや、エルも胸見てたじゃん……! それに俺は、国王様が何でも言えって言ったから言ったんだよ……!」
「だからって馬鹿正直に貴方の奥さんの胸を見ていましたなんて言うか!? 普通!?」
「だって言わなきゃ失礼かと思って……」
「言う方が失礼だろ……! てか見るのも駄目だし……!?」
歩きながら二人で暫く言い合っていると、後ろを歩く三人は少し不思議そうな顔をしていた。
そして気が付けば俺達は王の間へと到着していた。
「は、入るよ……?」
「う、うん……」
ユーリは恐る恐る扉を開けた。
ゴクリ……。そして俺は生唾を飲み込み意を決して王の間へと入った。
するとそこには椅子にふんぞり返って座る国王と、ドレスの上に羽織を着て胸元を隠している王妃がいた。
二人ともさっきの事を相当気にしてらっしゃるご様子。
「此度の活躍、ご苦労じゃった」
国王が話を始めると俺達は一斉に膝まづき頭を下げた。
「いえ、勇者として当然の事をしたまででございます」
「……ふんっ。そうか。そこの三人もようやった! 感謝するぞ!」
国王は明らかにユーリにだけ冷たい態度を示すが、その後の三人へ声を掛ける際はとても優しい表情と声色へと変わった。三人は国王にそう言われると「勿体なきお言葉」とだけ言い再度頭を下げた。
そして俺の事はどうやら戦いには参加していない子供くらいに思っているようだ。
――俺が一応魔王なんだけどなー。
そしてカマセーヌも俺が追い返したんだけどなぁ!?
「勇者ユーリよ。お主が愛する我が妻にした事を……チッ……とりあえずは保留としておいてやる」
「あ、ありがとうございます……! その節は大変申し訳ありませんでしたァァァ!!」
「チッ……。とりあえず保留だからな! 保留!!」
「はっ! わかりました!」
「本当にわかっておるのか……。ふんっ。まぁよい。とりあえずこれを持って行け。これで旅の準備を整えよ」
「……っ! ありがとうございます!!」
こうしてユーリがやらかした事はとりあえず保留となり、その後国王に旅の準備金として一〇〇万ゴルドを貰った。
ゴルドとはこの世界の共通通貨で一ゴルドは日本円で一円である。つまり国王は旅の準備金として一〇〇万円をくれたのだ。何とも有難い。ご都合主義バンザーイ!
◇
そしてユーリが旅の準備金を受け取ると、国王は真面目な表情で話を始めた。
「現在各地で魔族による被害が報告されておる。お主はそこの三人を連れてそれらの町や村を巡り、魔族を殲滅して回るのじゃ。そして最後には必ず……魔王を倒すのじゃ! よいな?」
「はっ! 承知しました! この勇者ユーリ。仲間と共に必ずや魔王を倒してご覧にいれます!」
「はっ。よう言うた。では、行って参れ! 必ずその手で魔王を倒し、人間族を救うのじゃ!!」
そして俺達は国王と王妃に礼と別れを告げ、城を後にした。
◇
その後、国王にたっぷりと貰った準備金で服や装備を整える為、王都で買い物と洒落こんだ。
まぁお察しの通り、ここでまたアホのユーリがそのアホっぷりを盛大に発揮していたのだが、それはまた別のお話――――
何はともあれ、俺達は旅の準備を完了させると、王都を出て、一つ目の町"メテック"を目指し旅に出たのだった。
第二章 ~完~
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