11話 愛のムチ
俺はオヤダマンの前に立つと【透明化】を解いた。すると彼は驚いた様子で、唾をまき散らしながら叫んだ。
「だ、誰だてめぇ!? どっから湧いた!?」
「湧いたとは何だ。それと、貴様こそ誰だ?」
オヤダマンは俺の言葉に初めこそ驚いた様子を見せたが、すぐに偉そうな態度で名乗り始めた。
その様子からこいつは俺が魔王だと気付いていない様子だった。
「俺は五芒星が一人、シエスタ様の部下……! カマセーヌだ!! よぉーく覚えてやがれ……! 死にたくなけりゃあさっさと失せろ!!」
「へぇー。そうか。カマセーヌ……。ふふっ……。如何にもって名前だな」
「あぁ!? 何がだ!?」
外見は二〇代後半といったところで、金髪のツンツン頭で、服の袖口を自分で破いたのかビリビリになった黒い服を着ている。
――まるで世紀末のチンピラのようだな……。
それにシエスタか……。確かお披露目会で話した奴だったか?
コイツはそれの部下か。
まったく……。俺が家出したというのにこんな事をしでかすようじゃ、五芒星の奴らの部下の管理は相当なお粗末さんだな。
とりあえずシエスタの処分は後々考えるとして、まずはこのお馬鹿さんをどうにかしないとな。
そして俺はこちらを睨み付けながら何やら吠えている噛ませ犬――――もといカマセーヌにとある質問をした。
「さてと。ところで噛ませ犬君。魔王の意思に背いて人間族の領地に攻め入った事に対して、何か申し開きはあるか? それとも何か? シエスタに言われてここまで攻めて来たのか?」
「はぁ!? 人間のガキのくせに何言ってやがんだテメェ!? 俺は魔王様のご意志に従って行動してんだ! シエスタ様に言われたからじゃねぇ! 俺はいつか魔王様に認めてもらって五芒星に入るんだ……! それを邪魔すんだったらガキでも殺すぞ、ゴラァ!?」
「はぁ……。そうか。貴様は俺の話を一切聞かずに勝手にここまでやって来たと言うのだな?」
「俺の話だァ……? テメェ何言ってやがる!?」
俺がため息をつき、やれやれと言わんばかりにうつむき加減で首を横に振っているというのに、何も気付かずワンワンと吠えるカマセーヌには、ほとほと呆れてしまった。
「はぁ……。姿形が変わったくらいで、主の存在を認識出来ないとは……。配下失格だぞ貴様……?」
【隠蔽 解除】
俺の言葉に動揺しているカマセーヌを他所に、俺は能力で隠していた角と赤い目を露わにした。
「……っ!? ま、魔王様……!?」
そう言うとカマセーヌは驚いた表情を見せた後、膝をつき頭を下げた。
「ほう。俺が魔王だとわかるということは貴様。あのお披露目会の場にいたのだな?」
「は、はい! いました! あの時の魔王様のお言葉には痺れました……!」
「ほう。俺の話を聞いていたのか」
「も、勿論です……! 俺は魔王様のご意志である"人間族の殲滅"を達成する為、人間族の本拠地である王都を攻め落とせば、魔王様に認めて貰えるかと思いここまで進軍して来た次第です!!」
――やっぱり俺の言葉はこの馬鹿共には届いていなかったのか……。
ハッキリ言ったはずなんだけどなぁ『争いは辞めろ』と。
もう口で言ってもわからない様なら仕方ないな……。
ここはコイツらの王らしく、ビシッ! と教育するべきだよな。
「事の経緯はだいたいわかった。それより貴様……。俺があの場で何と言ったか、今ここで言ってみろ」
「は、はい! た、確か……。『人間族との争いを終わりにしろ』と……?」
「そうだな? では何故貴様はここに魔物を大量に引き連れて来ているのだ?」
「それは勿論、魔王様のご意志に従い、人間族を滅ぼし争いを即刻終わらせる為でございます……!」
「違う!! 俺はそういう意味で終わらせろと言っていたのではない!!」
――俺としたことが。
あまりにも自分の真意が伝わっていなくて、ついイラッとしてしまった。
「ヒィっ……!! で、では……どういう意味でしょうか……!?」
「だから……。人間族と争うなと言っているのだ!!」
「で、ですから争いを終わらせる為に人間族を滅ぼそうと……。あれ? でも今魔王様は争うなと言った。でもこの前は人間族を即刻滅ぼせと……。ん?」
するとカマセーヌは混乱しているのか一人で、あーでもない、こーでもないと言い始めた。
全く俺の気持ちが伝わらない上に、こんな馬鹿みたいな自問自答を聞かされて、女神様に善人と認められた俺もさすがに我慢の限界が来てしまった。
「もう良い……!! 俺の言う事を聞かない大馬鹿者には罰を与える! 俺からの愛のムチだ!! 受け取れ!! 馬鹿者がぁ……! ――――【火の玉流星群】!!」
そして怒りの限界に達した俺は辺り一面に火の玉を降らせた。
「ヒィィィ……!! お、お待ち下さい……魔王様!! 俺は魔王様の事を尊敬し……! ガァァァァ…………!!!!」
大量の隕石にも似た火の玉は、着弾と同時に爆発を伴い、カマセーヌが引き連れてきた大量の魔物達を一瞬で焼き尽くし、辺りを真っ黒に染め上げた。
但し、カマセーヌと自分と他の人間達を除いて。
こんな事が出来るようになったのも、十年にも及ぶスカーレットとの鍛錬の日々の賜物である。
因みにカマセーヌは火の玉に当たってもいないのにその場に倒れ気絶しかかっている。
――よし。これで一気に魔物の軍勢は全滅したかな。
これでカマセーヌがビビって帰ってくれたらいいんだけど……。
それにしてもコイツはいつまで寝転がっているつもりだ?
もしかしてこの程度の攻撃じゃビビらないとか……?
結構な威力を出せたつもりだったんだけどな……。
もしかして特級魔法はこれ以上の威力なのか……!?
「おい貴様! 噛ませ犬! 生きているのだろう!? 起きろ!」
俺は半目になりながら寝転がっているカマセーヌにそう声をかけた。
「うっ……。ぐっ……」
「貴様、火の玉は当たっていないだろう? 何故そんな顔をして寝転がっている? ふざけているのか?」
「あ、あがっ……! ぐっ……」
(やべぇって……!! あんなの当たったら魔法が効きにくい魔族でも普通に死ぬって……!! しかもあんな魔法見た事ないし、威力からして特級以上の魔法だろ、絶対! あ、やべ。今の爆発の圧力で鼓膜イッたわ。なんも聞こえねぇ。……ん? 魔王様が何か言ってる……? やべぇ、早く立ち上がらないとまた隕石落とされる……!)
俺がそう言うとカマセーヌはゆっくりと起き上がった。
「魔王城へ帰り五芒星に伝えろ! 俺の意思に背き、まだ人間族を滅ぼそうとするのなら、この俺が直々に粛清してやるとな……!!」
「………………。」
(あーやべぇわ。マジで何言ってるかわかんねぇ。口の動きで読み取るか……。えっと……? ――――なるほど! さすがは魔王様! すぐに帰って五芒星の方々に報告致します!!)
「仰せのままに! 魔王様!!!」
そして俺の言葉の後に、妙に長い間を開け、大声で返事をしたカマセーヌはワープゲートを開き目の前から姿を消した。
「よーし。これでウチの馬鹿共が人間族の領地に攻めて来る事はなくなるだろう! いやー! いい事したな! さて、ユーリ達に怪しまれる前にあっちに戻るか!」
そして俺は再度、角と赤い目を隠し、上機嫌でユーリ達の元へと戻った。
またしても自分の言葉の真意が上手く伝わっていないとも知らずに。
ここまで読んで頂きありがとうございますm(_ _)m
これからも本作品をよろしくお願いします!
また、【ブックマーク】と【いいね】と【レビュー】も頂けると嬉しいです( *´꒳`* )
気に入った! もっと読みたい! と思いましたら評価をお願いします!
下の ☆☆☆☆☆ ▷▶ ★★★★★ で評価できます。
最小★1から最大★5です。
★★★★★なんて頂けた日には、筆者のモチベーションがぐぐーんと上がります\( ´ω` )/
是非ともよろしくお願いします!




