109話 エルの野望
――俺はこの世界に転生してから色んなものを見てきた。そして魔族による被害で命を落とした人の話も沢山聞いた。
そんな中、俺は女神様にこう頼まれていた。
『人間と魔族の争いを止めて欲しい』――――と。
だが、実際はどうだ?
ひとたび魔王である俺が、争いを止めろと言えば、配下達は曲解して、更に士気を高める始末。
なら、人間達はどうだ?
魔王を討伐すべく、集められた勇者パーティー達は中身や外見こそ良い奴らなのは認めるが、果たして魔王である俺に太刀打ち出来る水準に達しているだろうか?
否。断じて否である。
だが、人間達の事を考えれば、勇者達に魔王が倒されるのは悲願であるはずだ。
ならば俺がユーリに殺されるのも、やぶさかではない。この世界の平和を確実に実現する事が出来るのならば、公共の利益の為に俺は喜んで死を受け入れよう。
だが、"争いは争いを生むだけで、何の解決にもならない"とはよく言ったもので、たとえ俺が皆の前で死を選んだとしても、種族間の争いが止まる事は無いだろう。
もし本当に俺がユーリに討たれる様な事があれば、俺を大切に想ってくれているはずの、スカーレットやゴラム辺りが本気で人間達を滅ぼしに行くのは明白。火を見るより明らかだ。
◇
ならばどうする?
どうやって争いを止める?
そもそも、この二つの種族は何の為に争っている?
事の発端である二人の王は死に、俺が修行を続けていた十年間。そして新たな勇者ユーリが旅立つまでの十年間は、誰が誰に、どんな指示を出して争いを続けて来た?
答えは"誰も何も指示していない"だ。
つまり、現在の二種族は、互いに"同胞を殺された"、"攻めて来たから応戦した"だけなのだ。
ならば試しにと魔族の攻撃を止めてやる。
するとどうだ? 俺が横入りした形で魔族を退けた王都やメテック、ウォルトスやブリジアは平和になった。
だが、これだけでは世界が平和になったとは言えない。
"人間達は魔族を嫌悪し、魔族達は人間を見下す。"
ここが変わらなければ、争いは決して無くならない。
例えば人間の領土に魔族を一人放り込んだとしよう。
どうなると思う?
人間達は一人の魔族に対し、総攻撃を仕掛け排除しようとするだろう。
ならば逆はどうだろうか?
魔族領に人間を一人放り込めばどうなる?
魔族達は一人の人間を瞬殺、若しくは馬車馬のように働かせ短い命を弄ぶだろう。
つまり、心の内が変わらなければ、種族間の争いは無くならないという事だ。
そこで俺は再度考えた。
人間達は魔族の何を嫌い、何を憎むのか。
魔族達は人間の何を蔑み、何を嘲笑うのか。
推測だが、これに俺は一つの答えを出した。
人間達は魔族に大切なものを奪われたから嫌い、憎む。
魔族達は魔族こそが至高の種族だと疑わない。だから短命であり貧弱な人間を蔑み、嘲笑うのだと。
魔族側に関して言えば、魔王である俺に対して絶対的な忠誠心を持つ配下達に、俺の真意をしっかりと伝え行動を示すことは容易。
最初はこれが出来なくて家出したわけだが、今となっては理解してくれている配下達も増え自信がついた。
あまり気乗りはしないが、暴力や権力を振るい配下達に人間とは尊い種族なのだと教える事を約束しよう。
ならば残すは人間側だ。
大切なものを奪われた悲しみは決して埋まらない。
どれだけ気持ちを込めた謝罪をしようが、どれだけ時間が経とうが解決する事は決して無い。
何故ならば、そんな事をしても失ったものは二度と戻らないからだ。
だが、俺はゴラムとロクサーヌという力を持った二人と出逢い、とある可能性を見出した。
◇
魔法や魔族、勇者に魔王。現代のサブカルチャーでよく観た雰囲気の街並みや人々。
そんなファンタジー全開なこの世界において、唯一無いもの。それは――――蘇生魔法。
いくらファンタジー世界だからといっても、人間の命はイコールで一回なのだ。
だが、そんな人類の理を超越する者達がいる。それは死人。
彼女らは死して身体が朽ちて尚、その身に魂を宿し続けている。
そして俺はロクサーヌと出逢い思った。"彼女は生きている"――――と。
勿論一度死んでいるのに変わりはないが、魂さえそこにあれば彼女達は、熱い物は熱いと感じ、美味い物を食えば美味いと感じ、好きな物には好きと言えるのだ。
つまりこれは生きているのと同義なのではないか?
身体なんかは最早何でも良くて、それよりも中身が"自分"である事の方が重要なのではないか?
確かに、ロクサーヌの様に外見を派手に――――などと外側に対しアイデンティティを持つ者もいるが、本来それは幸福の上にある贅沢だ。
だが、その贅沢が当たり前にあった人間達にとって、それが無い生活など考えられない。
だから死んだ人間を死人として蘇らせたところで何も意味は無く、幸福ではないのだ。
ならば、死んでしまった人間を幸福にするにはどうすればいいのか?
答えは簡単。贅沢と幸福の両方を与える事である。
ただロクサーヌの能力だけでは、魂を呼び戻し蘇らせたとしても、ゾンビや動く骸骨くらいが関の山。
だが、俺は知っていた。外見だけでいえば人間と遜色ない物を作り出す事が出来る人物を。
◇
そこで白羽の矢が立ったのがゴラムだ。
ゴラムは崩れた瓦礫や土、岩などをゴーレムの固有スキルの能力で組み合わせ、見事な家を再構築する事が出来る。
そして極めつけはゴラム自身の姿を変えた【変身合体】だ。
これを使ったゴラムは、ただの棒人間だった姿から、俺好みの褐色美女へと変貌を遂げた。
しかもそれに使ったのは土や岩のみ。
これを使わない手は無い。
ゴラムとロクサーヌ。この二人の力を合わせれば、魂を呼び戻し、死んでしまう前の姿や自分がなりたい姿として蘇る事も可能になる。
これが実現出来れば、人間達の憎しみも薄れ、争いを続けようと思う者も減るだろうと俺は考えている。
確かに、蘇ったところで魔族から受けた仕打ちは消えないし、トラウマが残る者もいるだろう。
果たして上手く人間達が心を変えてくれるかは疑念が残るところだが、そこは祈るばかりだ――――
◇
「で? エル様は俺達に何をさせようってんだ?」
「それはだな、ロクサーヌの"魂操作"とゴラムの"変身合体"を組み合わせた新技術"リアルアンドロイド生成"だ……!」
「何だそりゃ!?」
戸惑うゴラムに対し、俺はこれまで考えていた事を全て話し、説明した。
本当に全てを理解してくれたかどうかはわからないが、ひとまずは協力してくれるようだ。
と言うよりも、何故か俺の事をかなり尊敬しているゴラムは盲信的に何でも乗っかってくれている節がある。
「まぁ、エル様の言う事なら大丈夫だろ! あのアホと一緒ってのが引っかかっるがな……」
「まぁ良いではないか。それに、新しい身体を手に入れてゴラムにも立派な胸が出来た事だし、もしかしたら気に入られるかもしれないぞ?」
「それはもっと嫌だぜ……。てか、エル様……俺様の身体をそんな目で見てたのかよ……!?」
「は……!? ば、馬鹿な事を言うなっ……! 配下である貴様のむ、む、む、胸など……み、み、見てないわっ……!!!」
ゴラムはそう言うと自分の胸を漸く隠した。そう。彼女はまだ全裸だった。
俺はそんな褐色美女なゴラムの問いに、死ぬ程動揺してしまった。
「めっちゃ言い淀んでるし……。だが、エル様にならそんな目で見られても……ぽっ」
そう言ったゴラムは腕で器用に胸を隠しながら頬を押えて赤くなっていた。
――"ぽっ"じゃねーよ……!!
可愛いな、ちくしょう!!
それを見た俺は心の中で一人、ゴラムの普段とのギャップに悶えていた。
その頃、スカーレット達の元へ俺の母親であるマゼンタが、とんでもない野望を抱き、俺を探して訪ねて来ていたとは夢にも思っていなかった。
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