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転生ショタ魔王、世界平和の為に家出する〜チートを持ったお人好しによる世直し旅〜  作者: 青 王(あおきんぐ)
第六章 ジャペン編

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103話 スカーレットの過去①


 エルの現状を教えようとしないスカーレットに対し、マゼンタは頬を膨らませむくれていた。



「何をむくれている? エル様を捨てたのはお前だろう?」


「まぁ……!? 捨てたなんて人聞きが悪いなぁ〜。預けただけよ〜?」


「それが十年も続けば、捨てたのと同じだろうが。まったく……やはりお前は昔から何も変わっていない。自分勝手で奔放なままだ」


 のほほんとしたマゼンタの態度にスカーレットは不快感を露にし、鋭い目付きで言い放つ。


「そう〜? 私的にはぁ〜変わったと思うんだけどなぁ〜?」


「ふんっ。思い出してみろ、昔のお前は――――」


 スカーレットはマゼンタの言葉を鼻で笑うと、昔話を始めた。



 ◇◇



 五十年前――――



 若かりし頃のスカーレットは魔王城の長い廊下を歩いていた。そこへ上司である一人のサキュバスが、掃除道具を手に持って声を掛けた。


 

「スカーレット、この廊下の掃除を今日中に終わらせておきなさい」


「ハッ……! ヤダよ、バーカ! 自分でやりな!」


「あ……! こら、スカーレット……!! 待ちなさい……!!」


 上司の指示を聞かず、暴言を吐き捨てたスカーレットはそのまま廊下を走って逃げ出した。



「ったく……。何で私が掃除なんかやんなくちゃならねーんだっての」


 走りながらそんな独り言を呟くスカーレットは、適当に入った部屋で追っ手をやり過ごす。そう、かつて彼女は"問題児"であった。

 

 加えて超がつく程の自信家でもあった彼女は、部屋の中にあった姿見の前に立ち、自らの姿をまじまじと眺め始めた。


「ふふ……。やっぱ私、いい身体してる。出るとこ出て、凹むとこは凹んで。顔もいいし、髪も綺麗。おまけに戦闘においても超一流。どこをとっても誰も私には敵わない……!」


 鏡に映る自分の姿を見て自画自賛。だがそれは、あながち間違いというわけでもなかった。

 

 持って生まれた戦闘センスと魔法適正の高さ、そしてサキュバス固有スキルの扱いに対する才能は、齢十歳(人間で言うところの五歳程度)にして他の者を圧倒する程だった。

 

 加えて、なんと言ってもその美貌。四十歳(人間で言うところの二十歳)を超えて、すっかり成長したグラマラスな体型に端正な顔立ち。誰もが振り返り、羨むその美しさは、魔王の次期嫁候補の筆頭だった。

 


「あらぁ〜? あなた、私のお部屋で何をしてるの〜?」

 

 姿見の前で一人、様々なポーズをとりながらニヤケ顔を浮かべるスカーレットの背後から、一人の女性が声を掛けた。


「うぉ……!? な、何だお前!? 驚かすんじゃねーよ……!!」


「何だって何よ〜? あなたが勝手に入って来たんでしょ〜?」


「誰だお前は!? ここで何してる……!?」


「私はマゼンタ〜。何してるって、自室でくつろいでいただけよ〜?」

 

 驚いた様子で声を上げるスカーレットに対し、ゆっくりとした口調で話をする部屋の主マゼンタ。スカーレットは慌てて落ち着きを取り戻すと、一度咳払いをしてから口を開いた。


「コホン……。で、今お前はこの部屋を"自室"と言ったか?」


「うん〜そうよ〜? ここは私の部屋〜」


「何でお前にそんなものがあるんだ……!? 私ですら一人部屋が無いというのに……!」


 スカーレットは鬼気迫る表情でマゼンタに詰め寄った。

 それもそのはず、魔王城に住む配下達には一人部屋など与えられる事はなく、種族ごとに用意された大部屋で生活するというのが一般的だった。たった一つの特例を除いて――――


 

「だって私〜、魔王様のお気に入りだもん〜」


「は……?」


 魔王城に一人部屋が与えられるたった一つの特例――――それは魔王に気に入られる事。

 魔王城にはいくつかの一人部屋が存在し、そこにいるのは魔王に認められた四天王や、次世代を担うであろう強者が数名だけだった。

 だがマゼンタはそんな者達に割って入り、見事一人部屋を獲得していたのだった。



「何でだ!? 匂いでわかる……お前はサキュバスだろ!? 私より強いサキュバスなんて存在しないはずだ! なのに何でお前が……!?」


「知らないってば〜。それに私〜戦闘タイプでもないし〜? んふっ……もしかしたらぁ〜。私の夜這いがよっぽど良かったのかも〜?」


「よ、よば……!?」


 スカーレットの問いに、マゼンタは妖艶な笑みを浮かべて答えた。すると途端にスカーレットの顔は赤くなり動揺を見せ始める。そんな彼女に対し、マゼンタはニヤリと笑うと更に追い討ちをかけるように口を開いた。

 


「あらぁ〜? あなたサキュバスのくせに夜這いを知らないの〜? 夜に〜気になる殿方の寝床に潜り込んで〜情を通じることよ〜?」


「そ、そんな事はわかっている……!!」


「ならどうしてそんなに顔が赤いの〜?」


「そ、それは……お前の話があまりにもハレンチだからだ……!!」


 スカーレットが顔を真っ赤にして涙目になりながらそう叫ぶと、マゼンタはクスクスと笑い始めた。


「ふっ……ふふふ……」


「な、何がおかしい……!?」


「いやぁ〜だって、私達サキュバスでしょ〜? まさか純潔を貫いている子がいるなんて思わなくて〜。それに〜サキュバスの中で一番強いって言うあなたがなんて……ふっ」


「キッ……!!」


 マゼンタの放った言葉は全て真実だった。

 サキュバスとは、生まれ落ちた段階ですぐに生きる源――――即ち"精力"を求めて彷徨う種族。

 赤子の時は母親が精力を分け与えて育てるが、成長してからは自らの身体を使い、他の者から精力を奪い生きていく。つまり、サキュバスとして生まれた者は、数年足らずで純潔を散らすのだ。


 だが、幼い頃からなまじ固有スキルの扱いに長けていたスカーレットは、情事に及ばずとも手軽に精力を奪えてしまった。そんな経緯から、彼女は四十歳を超えた今でも純潔を貫いていたのだった。



「どうしたの〜? まさか図星だったぁ〜?」


「う、うるさい……!! そういうのは、本当に好きになった人とするもんだろ!? 誰彼構わず股を開くなんて、女のすることじゃねぇ……!!」


「何言ってるの〜? 誰彼構わず股を開かないサキュバスなんて、サキュバスじゃないよ〜」


「くっ……。こ、この……ハレンチ女ァーー!!!」


 ニヤニヤと笑いながらマゼンタに正論を浴びせられ続けたスカーレットは、情けない言葉を言い残し部屋を飛び出して行った。


「ふふっ……。面白い子〜。これからもあの子とは仲良くしたいなぁ〜」


 部屋に残されたマゼンタは、そんな事を呟いていた。



 ◇



 そしてマゼンタの部屋を飛び出し、廊下を走っていたスカーレットは誰かにぶつかってしまう。涙を拭いながら夢中で走っていたせいか、目の前にいた人物に気が付かなかった。



「いってぇな……。こんなとこでボーッとしてんじゃねーよ!!」


「あ……ご、ごめんなさい……」


 自分でぶつかっておきながら、暴論を吐き散らすスカーレット。被害者の彼女は怯えた様子ですぐさま頭を下げた。


「あん……? 謝ってんじゃねーよ! 自分が悪くないなら、謝る必要なんてねぇーだろうが……!!」


「え……は、はい……?」


 しかし次は彼女が謝った事に対し、怒りを露わにする無茶苦茶なスカーレット。彼女は戸惑いを隠せない。


「しかも、そんなヒョロっこい身体しやがって。そんなんじゃナメられるだろうが! 魔族なら、もっと強くなれよバカが……!! まぁ……強くても……処女じゃ意味ないけどな……うぅっ……!」


 そして訳の分からない理屈と暴言を並べたスカーレットは、再び涙を流しながら廊下を走って行った。残された彼女は顔を上げ、走り去るスカーレットの背中を見つめ口を開く。


「か、かっこいい……!」


 何故かはわからないが、あれ程までに暴言を吐き捨てられたのにも関わらず、彼女はスカーレットに憧れを抱いた。

 そんな彼女が、後に五芒星の一角であり"壊し屋"の二つ名を持つゴラムなのだが、この時のスカーレットはまだそれを知らない。



 ◇



 その後も泣きながら廊下を走り続けたスカーレットは、とある部屋の前で立ち止まった。そしてノックもせずに扉を勢いよく開けると、部屋の中にいた女性の胸に飛び込んで行った。



「うわぁーーん……!! アイリスぅーー……!」


「えっ……!? ちょ、スカーレット……!? 何があったのよ!?」


 スカーレットが泣きながら飛び付いたのは、まだ五芒星になる前のアイリスだった。

 

 スカーレットは己の強さに自信があったが、そんな彼女を初めて負かしたのはアイリスだった。

 それ以降、スカーレットはアイリスにとても懐き、何かあれば直ぐに彼女の部屋に来ていたのだった。

 

 そしてアイリスは戸惑いつつも、泣きじゃくるスカーレットの頭を優しく撫でて話を聞く事にした。


 


ここまで読んで頂きありがとうございますm(_ _)m

これからも本作品をよろしくお願いします!


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