101話 エルの行方
突然のロクサーヌの登場に、スカーレットは珍しく取り乱し、冷や汗をかいていた。
(どうしましょう……。色々取り乱していたせいで、ついロクサーヌの名を口走ってしまいました……。さて……どうやって誤魔化しましょうか……)
するとそんなスカーレットの様子に気が付いたのか、ロクサーヌは彼女の耳元でコソッと言葉を発する。
「大丈夫だよスカーレット。悪いようにはしないから。それにスカーレットが人間と一緒にいるのには、何か理由があるんしょ?」
ロクサーヌの問いにスカーレットは黙って頷く。するとロクサーヌは続けてユーリ達に向かって話を始めた。
「みんなビックリさせてごめんねー! あーしの名前はロクサーヌ! スカーレットとは久しぶりに会ったからつい、飛び付いちゃったんだー!」
「そ、そう……。それについって……。人違いだったらどうするつもりだったのかしら……?」
突然始めたロクサーヌの自己紹介に、セリーヌは未だ怪訝な表情を浮かべている。それは他の面々も同様だった。
「まぁまぁそんな怖い顔しないでさ! それより君ら、エルピの事、探してるんしょー?」
「ピ…………?」
ロクサーヌからエルの名前が出た事に驚きつつも、それよりその敬称が気になってしまうスカーレット。そんな中、ユーリが真剣な表情で口を開く。
「お姉さん……確かロクサーヌって言ったっけ」
「うん! そーだよー!」
「ロクサーヌはエルの事を知っているのかい?」
「知ってるも何も、さっきまで一緒にいたしー?」
「…………!?」
ユーリは珍しく慎重に、そして探るようにロクサーヌへ質問した。だが、ロクサーヌはそんなものはお構い無しといった様子であっけらかんと答えた。その事実に皆は動揺を隠せないでいた。
「え、エル君と一緒にいたというのは、ほ、本当ですか……!?」
「一体どこにいるの!?」
「まぁまぁちょい、落ち着けしー! 順を追って説明するし、とりま聞きなよー」
ボンズとセリーヌは慌てた様子でロクサーヌに詰め寄った。するとロクサーヌはひとまず皆を落ち着かせてから、エルと出会った経緯を説明した。但し、エルやスカーレット、そして自らが魔族である事は伏せて――――。
◇
「――――とまぁ、こんな感じでエルピとの出会いはこんな感じー」
「ううっ……エル様……。おひとりでさぞ心細かったでしょうに……うぅ……」
「エルきゅん可哀想……スンスン……」
ロクサーヌの話が終わると、スカーレットとセリーヌは心配のあまり泣き出してしまった。
「それで、エルは今どこにいるの……? リリィ達が知りたいのはそこだよ」
すると食事を終えたリリィがきわめて冷静にロクサーヌに問うた。すると彼女は両手を顔の前で合わせると申し訳なさそうに口を開いた。
「ガチごめん……! それはあーしもわかんないだ。突然家から飛び出しちゃってどっか行っちゃったんだよね」
「そうか……。いや、ロクサーヌが謝ることじゃないよ。ありがとう、教えてくれて……」
ロクサーヌが申し訳なさそうにしていると、ユーリは落胆しつつも彼女を気遣い声を掛けた。そして皆は、漸く掴みかけたエルの行方をまたしても失い肩を落としていた。
「まぁそんな心配することないって! エルピなら大丈夫! そのうち帰ってくるって!」
ロクサーヌはそんなユーリ達に必死に声を掛けるも、あまり響かず、彼らは俯いたままだった。するとロクサーヌはスカーレットの手を引き立ち上がらせる。
「ちょっとごめん。一瞬だけスカーレット借りるし、みんなはここで待っててくんない?」
「……? わ、わかった」
強引にユーリの許可を取り付けると、ロクサーヌはスカーレットの手を引き店の外へと出た。
◇
「スカーレット、マジ久しぶりじゃーん!」
「はぁ……。何だ、私を外に連れ出して。何の用だ?」
「キャハ……! その男っぽい口調も変わんないねー! おっぱいも相変わらず柔らかいしー?」
「チッ……。用がないのなら私は戻るぞ。お前の与太話に付き合っている暇は無いのでな」
外へ連れ出した割に、何も話そうとしないロクサーヌに呆れたスカーレットは早々に店の中へと戻ろうとした。しかしロクサーヌはそれを後ろから抱き締める事で制止する。
「ちょっと待ってってば! 話があんのはガチだから!」
「何だ鬱陶しい……! ならばさっさと話せ! エル様が今もおひとりでいらっしゃる以上、一分一秒も無駄には出来ないのだ」
「スカーレットも変わんないねー。どんだけショタコン、こじらせてんのさー」
「ほっとけ。――――で? 話とは何だ?」
スカーレットが呆れつつもそう問うと、ロクサーヌは彼女から手を離し、真剣な表情で口を開いた。
「スカーレット、それにエルピも……。人間達と一緒に何してんのさ?」
ロクサーヌの問いにスカーレットは答えあぐねる。
(ロクサーヌはこんな見た目だが、一応は五芒星の一角。ここで私が下手な事を口走れば、エル様の目的の邪魔になってしまうかもしれない。何と答えるべきか……)
スカーレットが必死に考えを巡らせていると、それを見抜いたのか、はたまた天然か。ロクサーヌは続けて口を開く。
「大丈夫。あーしも、エルピの真意はちゃんと理解してるつもりだから。それにスカーレット達がやろうとしてる事がわかれば、エルピが何処に行ったのか何となくわかるんじゃないかなーって思ってるだけだからさ!」
「そ、そうか……。ならばロクサーヌ。お前はエル様の真意を理解した上で、反対はしないという事だな?」
「もち! てか、元からあーしは同じ考えだし、エルピに協力すんのは当然っしょ!」
ロクサーヌの言葉を聞き、スカーレットは若干の疑念も抱きつつ、エルの真意を含め今までの出来事を詳細に説明した。
但し、語られたのはあくまで、スカーレット視点から見える話であり、エルの真意とは少々異なる部分もあった。
◇
「――――というわけだ。つまりエル様は、人間達を無傷で捕虜とし、魔族の為に働かせるおつもりだ。それに伴い、五芒星からはアイリス様と岩……ゴラム様。旧四天王からはふにゃ丸様がこちら側についているといった現状だ」
スカーレットの話を聞き終えたロクサーヌは目を丸くしていた。
(え、何、どゆこと……? スカーレットが言ってる事、エルピが言ってた事とまるで違うじゃん!? まぁ確かに人間を傷付けないというとこは一致してるけど、それだけだし。それじゃ、人間を支配しようとしてるのには変わりないじゃん……! てかこの事、エルピは知ってんの……?)
「ん……? 何だ? ロクサーヌはエル様の真意を理解しているのだろう? 何をそんなに驚くことがある?」
ロクサーヌはエルとスカーレットの話に微妙なズレを感じ、戸惑っていた。するとそんな事を知る由もないスカーレットは怪訝な表情を浮かべた。
「あ、いや別に……。てかアイリスもゴラムも取り込むなんて流石エルピだね! じゃあ次はあーしが話す番だね」
そして次はロクサーヌがジャペンにいる理由を話し始めた。但し、エルとロクサーヌが望む種族間の争いが無い平和な世界の件は、伏せて――――。
「――――てな感じー。とりまあーしはエルピの命令通り、死人ちゃん達を回収しなきゃなんだよねー。スカーレットは今の話でエルピが何処へ行ったかわかったー?」
「いや、正直全く見当がつかない。ただロクサーヌとエル様の最後の会話……。"魂の操作"について。コレに何か手掛かりがあるのかもしれないな」
ロクサーヌの話を聞き、スカーレットは顎に手を置き思案し始める。
「魂の操作かー。あーしが死んだ人間を蘇らせる事が出来るよーって言ったら、エルピの顔色が一瞬で変わったんだよねー。その後すぐ飛び出してっちゃったしー?」
「その後は何か言っていなかったか?」
「うーん。確か、人工的に作り出した物に魂を移せるかとか、依代がどう……とか?」
「人工的に作りだす……依代……。そこへ魂を……。エル様は一体――――っ!!」
ロクサーヌの話を手掛かりに、必死に考えを巡らせるスカーレット。
そして暫く考えた後に、何かに気が付いた様子で口を開いた。
「なるほど、エル様……。そういう事ですか」
「何!? 何かわかったの!?」
「恐らくな。この考えが正しければ、エル様を心配する必要は無さそうだ。それよりロクサーヌ。お前はエル様の命令を早く完了させないか」
「えー? あーしにもエルピの考え教えてよー?」
「お前も関係していることだ。時期にわかるさ。私は中の者達にひとまずエル様の無事を伝える。お前もさっさと行け、ロクサーヌ。じゃあな」
そう言うとスカーレットは店の中へと戻って行った。
「えぇ……。ガチで行っちゃったよ……。てか、スカーレットよりあーしの方が偉いはずなんだけど? 一応五芒星だし? まぁスカーレットの方が強いのは間違いないんだけどさ。――――はぁーあ……。じゃあ死人ちゃん達を回収に行きますかー!」
こうしてスカーレットはユーリ達の元へ戻り、ロクサーヌは死人の回収へと向かった。
果たして、スカーレットが気付いたエルの考えとは一体。
そしてそれと同刻――――彼女達の他に、別の思惑を持った魔族達がここジャペンで動き始めていた。
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