100話 強き女性の弱った姿
エルが立ち入り審査を通過出来なかった事に、一度は混乱を見せた一行だったが、ユーリが気持ちを持ち直した事をきっかけに何とか復調の兆しが見え始めた。
そしてエルの為に米や魚を買い込んだ一行は、適当に選んだ食事処で今後について話し合いを始めた。
◇
「さて、これからだけど……」
大きなテーブルの上に頼んだ料理が出揃ったところで、ユーリは両肘をつき、顔の前で手を組むと、某特務機関の最高司令官のようなポーズで口を開いた――――が。
「ユーリさん、行儀が悪いですよ。テーブルに肘をついてはいけません」
「そうよ。それにあなたはアホなんだから、そんな真面目な顔は似合わないわよ」
「うぅふぅぁふぃ……! ふぁふぁうはえふぅ……!」
「えぇ……。みんなして酷いなぁ……。人がせっかく真面目な話をしようとしてるのにー。てかリリィはもう食べてるしっ……!!」
ユーリの行動が何故か総ツッコミに遭い、完全に調子を取り戻した一行であったが、やはり内心ではどこか物足りなさを感じていた。
「そんな事はどうでもいいです。それよりどうしますか? どのようにエル様と合流するつもりですか?」
そんな中、顔色一つ変えずに課題を持ち出すスカーレット。それに他の面々は思い思いの考えを述べ始める。
「門から外に出ようにも、門番がいるから出られないしなぁ。そういえばこの街って門以外の入口は無いのかな?」
「特に明確な入口などはありませんね。ですが、先程確認してきたところ、街の周りには壁なども無く、どこからでも出入り出来そうでした」
「スカーレットは、それをいつ確認したのよ……」
スカーレットの問いに答えるように、ユーリは門以外の出入りの可能性を探る。セリーヌはスカーレットの行動の速さに驚きを通り越して、若干引き気味であった。
「なら、門以外の所からこっそり外へ行って、エル君と合流出来ますね!」
「ふぉうふぁへ……! もぐもぐ……」
「残念クリン。それは無理クリン!」
スカーレットの話を聞き、門以外の所からでも外に出られると知ったリリィとボンズはそこからエルとの合流を図ろうとするも、突然リリィの胸元から顔を出したふにゃ丸が声を上げた。
「どうしてだい、ふにゃ丸?」
「どうしてもこうしてもないクリン! 揃いも揃ってお前らバカクリンか?」
ふにゃ丸の言葉に疑問を呈すユーリ。それにふにゃ丸は呆れた表情で皆にバカ認定を下した。
「この、魔物風情が……。リリィのペットじゃなかったら浄化してるところよ……!?」
「サド聖女は黙れクリン。だいたいおかしいと思わないクリンか? どこからでも入れる街なのに、門があるなんておかしいクリン!」
魔物であるふにゃ丸に馬鹿にされるなど、聖女であるセリーヌにとってはかなりの屈辱だったのだろう。早速彼女は怒りを露わにするが、呆気なくいなされる。
そんなセリーヌを他所にユーリは、ふにゃ丸の言葉にしっかり返答し話を進める。
「た、確かに……。門からしか入れないから、皆そこに集まるんだもんな……」
「そうクリン! じゃあ何で門以外からは街に入れないかわかるクリンか?」
ふにゃ丸にそう問われ、皆は思案し始めるも一向に答えが出ない。
そしてユーリ達が気付かないうちに、店内は更に賑わい始めていた。
◇
『いらっしゃいませー!』
「一人なんだけどー、てか、このお店タピオカあるー?」
『はい……?』
「えー無いのー? 置いた方がいいよー? タピオカ置くだけでマジ売上、超アガるからさっ! …………てか。アレって……?」
◇
店内でそんなやり取りが行われている間にも、ふにゃ丸に出された"何故門以外から街に入れないのか"という問いに、ユーリ達はとうとう答えを出せなかった。
「はい、時間切れクリン。答えは簡単クリン。結界クリン」
「結界?」
「そうクリン。この街は強固な結界で覆われているクリン。それによって門以外からは出入り不可能クリン! ――――それじゃあオレは寝るクリン。お前らバカと話していると疲れるクリン」
ふにゃ丸はひとしきり説明を終えると、辛辣な言葉を吐き捨て、再びリリィの服の中へと消えていった。そして次に、ふにゃ丸の説明を聞いたスカーレットが口を開いた。
「私達が門を離れる際に、門番の男が扉に結界を張っていたのは気付きましたが、まさか街全体まで覆っていたとは……」
「もう八方塞がりじゃない……! どうするのよ!?」
「うーん……。日が昇るのを待つしかないのか……?」
「そんな事していたらエル君が空腹で倒れちゃいますよ……!」
「ふぁーふぉ! ふぉーふぁ!」
やはりエルがいないと話がまとまらないのか、一向に糸口が見えないまま、刻一刻と時間だけが過ぎて行く。加えて、テーブルの上にあった料理も次々とリリィの小さな身体に飲み込まれていく。
そして、追い込まれたスカーレットは恐ろしい方法を口にし始める。
「やはり、結界を破壊するしかなさそうですね……」
「ば……! 何言ってるのよ、スカーレット……!? そんな事したら外から魔物がわんさか入ってきちゃうでしょ!?」
「ならもうどうすれば良いのですかぁぁぁ……!!」
スカーレットの恐ろしい計画は一瞬にしてセリーヌに却下された。そして遂に追い込まれ過ぎたスカーレットは号泣し始めてしまった。
「え……スカーレット、泣いてるの……?」
「え!? ちょっと……泣かないでよスカーレット!」
「は、初めて見ましたね……。スカーレットさんの弱ったところ……」
「ス、スカーレット……!? 落ち着いて……! きっとエルは大丈夫だから……! エルはちっちゃいくせに強い子だから……!!」
「ううっ……わかってますけどぉー……! うわぁぁ〜ん」
突然号泣を始めたスカーレットを皆は慌てた様子で何とか慰めようと躍起になる。するとそこへ一人の女性が現れ、あろう事か号泣しているスカーレットの背後から彼女の胸を鷲掴んだ。
「え〜い……!!」
「――――ひゃっん!?」
「「「「…………っ!?」」」」
突然、胸を揉まれたスカーレットは色っぽい声を上げる。その一部始終をしっかりと見ていた他の面々は驚愕し、言葉を失っていた。しかし当の本人は胸を揉みしだくのを止めない。
「やっばぁー……。超やわらかーい! てか何かこのおっぱい揉んだ事ある気がするんだけど……誰だっけ……?」
それどころか、ご丁寧に感想まで添えてしまう始末であった。しかしいくら号泣中とはいえ、流石はスカーレット。揉まれっぱなしで黙っているような彼女ではなかった。
「いつまでやっているのだ――――ロクサーヌ……?」
「ふぇっ……? 赤髪にこのおっきなおっぱい……。それにその男っぽい話し方と、あーしを呼び捨てにする感じ…………。あっ……! スカーレットじゃん!!」
敬語も敬称をつけるのも止めたスカーレットは、背後にいる彼女の名前を言い当てる。そして驚きつつも、様々な要因からロクサーヌも彼女がスカーレットである事を認識した。
そして二人は互いの顔を至近距離で見つめ合う。
「へ……? 二人……知り合いなの……?」
そんな二人に問い掛けるようにユーリが口を開いた。
「そもそも知り合いじゃなかったら、この状況がおかしいですよね……」
「いや、知り合いでもおかしいわよ、こんなの……」
ユーリに続いてボンズとセリーヌも二人の関係と、今の状況に的確にツッコミを入れる。
「ふぁうあ……うぁふぁったっふぁ……ごはん……」
そしてリリィは一人でテーブルの上の料理を平らげてしまった。
そんな中、何も気にせず未だスカーレットの胸を揉み続けるロクサーヌ。それと同時に、スカーレットは大量の冷や汗をかいていた。
(どうしましょう……。色々取り乱していたせいで、ついロクサーヌの名を口走ってしまいました……。さて……どうやって誤魔化しましょうか……)
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