96話 ギャル講座
ロクサーヌの思わせぶりな態度や仕草に翻弄され、俺の心は乱されていた。だが、彼女はそんな事はお構い無しといった様子で、鼻息を荒くして俺の"ギャル講座"の開始を待っていた。
「わかったわかった……。今から俺が、ロクサーヌをちゃんとギャルにしてやる」
「マジぃ!? やったー! 超アガるんですけどー!」
――めっちゃ喜んでるな……。
ていうか、ギャルを教えるって一体何を教えればいいんだ?
俺は別にギャルに詳しいわけでもないしなぁ……。
あ、そういえば前世のバイト先に丁度いいギャルがいたっけか……。
金髪ロングで、ロクサーヌみたいに頭の上で団子みたいにしてて。
そういや、年齢も同じくらいの、確か…………一六歳だったかな。
生意気で学校もろくに行ってないような子だったけど、三五歳でフリーターだった俺にも気さくに話しかけてくれる優しい子だったな。
ある日突然バイトに来なくなったけど、今頃どうしてるのかね。
まぁ凡そ彼氏が出来たとかそんな理由で辞めちゃったんだろうけど。
そういえばあの子、名前なんて言ったっけな……。
ダメだ……全然思い出せない。
まぁとりあえず、あの子をイメージしながら教えていくか。
そうして俺は、元バイト先の歳下ギャルを思い浮かべながら、ロクサーヌにギャルを教え始めた。
「教えるのはいいけど、俺の知識と想像が入り交じる感じになると思うぞ? それでもいいのか?」
「全然いいよー! なんならウチを僕ちんの理想のギャルにしてくれてもいいんだよー? キャハッ!」
――くっそ……可愛いな、まったく……。
どうしてこうも、俺の配下達は可愛いヤツらばっかりなんだ……!
「とは言っても……ロクサーヌは既にちゃんとギャルではあるんだよなぁ……」
「えー? そー? ウチなんて全然だよーっ!」
――全然って事はないだろ……。
まぁ気になる点はいくつかあるし、それを順番に言っていくか。
「とりあえずその"ウチ"っていうのをやめて、"あーし"に変えてみるのはどうだ?」
「あーしぃー?」
「そうだ。"ウチ"っていうのは何か違う気がする。"あーし"の方が何だかギャルっぽい……!」
「へぇー! そうなんだー! じゃあウチ……じゃなくて、あーしはこれからあーしって言うことにするー!」
――俺、何言ってんだ……?
まぁロクサーヌが喜んでるからいいか。
「後はそうだな……。その団子にしている髪型。それは気に入っているのか?」
「えー? うーん、昔ママがしてた髪型真似してんだけどー、ギャルっぽくないかなー? 確かにちょっと飽きてきた気もするしー」
そう言うと、ロクサーヌは鏡で頭の上の団子をツンツンといじりながら、首を傾げている。
――そうか。この団子ヘアーはママの受け売りだったのか。
それにしてもロクサーヌは、本当にママが好きなんだな。
「一度ほどいてみたらどうだ? 少し印象が変わるかもしれないぞ?」
「んー? わかったー! やってみるねっ」
ロクサーヌはそう言うと、団子を崩し頭を数回横に振った。すると長い金髪が解けて、少しクセのついた髪が露わになる。
「おぉ。下ろしているのもいいじゃないか。後は髪型についてだけど……。インナーカラーっていうのが最近の流行りらしいぞ?」
「いんなーからー?」
「あぁ。所謂、髪の内側に色を入れる事だな。外側は今のままでいいとして、内側に少し色を入れるのはいいかもしれないな」
「マジ……!? じゃあーどんな色にしようかなー? 僕ちんは好きな色とかないのー?」
「ん……俺か? えーっとそうだなぁ……」
――こういう時って本当に俺の好きな色を答えたらいいのか?
でも、もう既にロクサーヌの中で大体のイメージが出来上がっていたらどうする……?
俺が見当違いな色を言って、余計に迷わせたり、困らせたりしないか……?
もし本当に俺が好きな色を言って、ロクサーヌが嫌な顔をしたら俺は耐えられるのか……?
「ちょっと……! おーい! 僕ちーーん?」
「あ、あぁ……! ごめんごめん。ちょっとボーッとしていた……」
――やべぇ……。
女の子からそんな話題を振られた事がなかったから、つい童貞ムーブをかましてしまった……。
やる前から頭の中で色々と考えるのは悪い癖だぜ、まったく……。
「えぇー? こーんな可愛いギャルを目の前にして、ボーッとするとか有り得ないんですけどー!」
「ごめんごめん。――――と、とにかく。インナーカラーをどうするかだけど、ロクサーヌはピンクが好きみたいだし、ピンクがいいんじゃないか?」
「ピンクかー! いいかも! で、そのピンクはどーやって入れんの?」
「え? 染髪料とかないのか?」
「せ、せんぱ……? 何それ?」
――マジか……。染髪料が無いのか、この世界。
そらそうか。異世界で髪を染めるとか聞いた事ないもんな。
「じゃあロクサーヌのその金髪はどうしているんだ?」
「コレは地毛だよ? パパとお揃いっ」
――てことは遺伝か。
よかったな、ママに似なくて。
ママは日本人。地毛は絶対に黒だからな……。
「てか、それって超ラッキーだな!」
「それな!」
「…………。ロクサーヌ、今の俺の言葉の意味わかってる?」
「えー? わかんなーい。でもママが、相手が何を言ってるかわかんない時は、とりあえず"それな"って言っとけばいいって言ってたんだよねー。だから言ったー。キャハッ……!」
――ロクサーヌママよ。
あまり人の家庭にとやかく言いたくはないが、恐らく教育の仕方が間違っているぞ……。
「とりあえず、その金髪は残してインナーカラーを入れるってことでいいんだな?」
「そだねー。それでやってみよっかー!」
「わかった。なら染髪料は俺が用意してやる」
「マジ!? 神じゃん!!」
「神じゃない。それとも何か? "髪"と"神"をかけてるのか?」
「何言ってんの僕ちん。つまんないよ」
「いきなり冷たい目すんのやめろし」
「それな」
「………………。――――【ピンク色の染髪料 発現】」
そして俺は言霊の能力でピンク色の染髪料を発現させた。勿論泡カラータイプだ。楽だからな。
「今からこれを染めたい箇所に塗っていく。塗り終わったら暫く放置して、洗い流すこと。あ、それとパッチテストもしておくか? もし頭皮に異常が出たりしたらやめておいた方がいいし。ロクサーヌは敏感肌だったりするのか?」
「何言ってるの僕ちん。…………肌の神経なんてとっくに死んでるっつーの! キャハハハーッ!」
――あぁ、そうだった。
ロクサーヌはギャルだけど、それ以前にリッチーだった……。
ていうか肌の神経が死んでるなら、髪も生えて来ないだろ……!!
ってマジレスしてみたけど、そこはまぁ……お得意のご都合主義か。
「じゃあ、染めていくからなー」
「はぁーい! よろしくぅー!」
そして俺は、ご機嫌に座っているロクサーヌの髪に染髪料を塗り揉みこんでいった。
因みに髪を染めている間、ロクサーヌに若者言葉をいくつか教えたのだが、どう変わるのかも見ものだ。
その後、暫く時間をおいてからロクサーヌの水魔法で綺麗に洗い流してから、付属のトリートメントをつけて髪を乾かして完成だ。
◇
「よーし。こんなもんだろう。どうだ、出来栄えは?」
俺はそう言うとロクサーヌを鏡の前に立たせた。
我ながら上手く出来たと思うが、果たしてロクサーヌは気に入ってくれるだろうか。
そして、ロクサーヌは鏡に映る自分の姿を見て興奮気味に口を開いた。
「これ、ガチであーしぃー……!? めっちゃ鬼かわちぃなんだけど……!! 僕ちんマジ天才っ! ていうかあれだけの時間でこんなになるとか、マジタイパ良すぎて草通り越して森! 超あざまるなんだけど、この感動を上手く表現出来なくてまじぴえんだわ」
「ごめん、ロクサーヌ。俺が間違ってた。頼むから元の話し方に戻ってくれ……」
「それガーチャー? てかそんな暗い顔してないで、お茶入れたげるから一緒にチルしよ?」
「ごめんなさい。もう許して下さい。おじさんにはロクサーヌが何を言っているのかわかりません」
この後暫くの間、俺は変わり果てたロクサーヌの発する言語に苦しめられた。
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