95話 彼女の秘密
「私が死人になった理由はねー、事故ったからなんだよねーっ!」
「事故った……!?」
俺は再び、理解が追いつかないスパイラルへと誘われてしまった。
「事故ったってどういう事だ? トラックにでも轢かれたか?」
「とら……とらっく……って何? いや、そーじゃなくてー! ウチが一七の時にさー、ママと喧嘩して街の外に出ちゃった事があってさー?」
――何が何だかわからないけど、突然話が始まったな……。
でもとりあえず、この話を聞けば彼女の素性を知る事が出来そうだ。
「うん、それで? 街の外で何があった?」
「んでー、ウチは街の外でボーッとしてたんだよね。そしたらさー、いきなり魔物が襲って来てさー! 普通に死んだよねー、ウチ」
「いや、話の流れが唐突だな……!?」
「いやぁ、アレはマジでビビったよねー。んでー、死んだウチはそのまま意識が無くなるんだと思ってたんだけど、なんか生きてたんだよねー。いや、死んでんだけどさ、意識だけっつーか何と言うか?」
「まぁ言いたいことはわかるよ」
――俺は前世で一度死んで、女神様の元へと意識が飛んだ。
彼女が感じた感覚は、まぁそれに似たものなんだろう。
確実に死んだという実感があるのに、意識が途絶えないというのは不思議な感覚だ。
「さっすがー! 僕ちんも一回死んでるだけはあるねー!」
「ん? 俺、君に前世で死んだ事を話したっけか?」
「いんやー? でもママの話の時、死んだかどうか聞いてきたからそーなのかなー? って!」
――このギャル……本当に鋭いな……。
まぁそれはいいとして……。
「君が死んだ経緯はわかった。でもそれだけじゃあ普通に死ぬだけだろ? どうして死人になったんだ?」
「そーそー! こっからがマジで事故なんだって! 聞いて!」
「いや、聞いてるよ……」
「でねー、ウチが死んだ時にさー。たまったま、偶然そこにリッチーがいたんだよねー」
――リッチー……。
もしかしてソイツがロクサーヌか……?
異世界人の娘である彼女を狙って……?
「そのリッチー……もしかして女か?」
「え? 普通におじさんだったけど?」
俺の問いに彼女はポカンとした様子で答えた。
――あれ、読みが外れたな……。
なら本当に彼女が死んだところに偶然、リッチーが居合わせたって事か?
「そ、そうか。それでそのリッチーによって君の魂は死んだ身体に戻ったってわけか?」
「そうみたいなんだよねー。そのリッチーはそこで死人生成の練習をしてたみたい」
――そんな所で練習すんなよ……!
馬鹿なのかそのリッチーは……!?
「なるほど……。それは確かに偶然が色々と重なった――――事故だな……」
「そうっしょー? マジで事故だよねー。んでー、そのリッチーに色々と聞いたらーどうやらウチ、不老不死になっちゃったみたいでさー? 自分じゃ死ねないんだよねー」
そして彼女はヘラヘラとした様子で、自分が不老不死である事を打ち明けた。
「いきなりトンデモ発言だな、おい……。まぁ死人だし、実際そうなるのか」
「そー。んでー、ウチはとりあえず家に帰ったよねー」
「え、帰ったの!?」
「そりゃあ家があるなら帰るっしょ? 何言ってんの?」
――何言ってんのはこっちのセリフだ……。
ギャルっぽい口調のせいで軽く聞こえるけど、この子一回死んだんだよね?
「いや、だって……君、死んだんだろ? 普通に気付かれるだろ……」
「でもそれが気付かれないんだよねー。死んだ時の傷は死人になったから一瞬で治ったし、肌が青白いことと、体温が低いこと以外は別にバレる要素もないしねー。それに人間の頃より魔力総量が上がったせいか、死んでからの方が元気っ! みたいな? キャハハ?」
――なんちゅうポジティブシンキングだよ、それ……!?
死んでからの方が元気とか聞いた事ねーよ!
…………それでもまぁ。死んで何もかも消えてしまうよりかは、その方が幾分かマシなのかもしれないな。
「そっか。まぁ君が元気に生きてる……って言っていいのかわからないけど、それならよかったな」
「生きてるよっ! ウチは超元気! それからは、ママ達が死んじゃうまでずっと一緒にいて、その後はのらりくらり生きてきた感じかなー?」
「そうなのか。ママ達は君が死んだ事に一生気付かなかったのか?」
「そだねー! 『さーちゃんはいつまでも老けなくていいなー。ママは日に日にシワが増えてくし、マジガン萎えーって感じー』って死ぬまでよく言ってたよー! キャハハ!」
――いや、ギャル魂永久不滅か!?
ていうか……。
「君、"さーちゃん"っていうんだな」
「あ、そういえばウチ。名前隠してたんだっけ。まぁいいやー!」
「いいのかよ……。で? 君の名前は?」
「そーそー。ウチには名前が二つあってさー。一つはー、ママがつけてくれた名前でー。漢字で"二六三七"って書いて『フロサウナ』っていうんだー!」
――まさかのキラキラネーム……!!
しかも二六三七って……。
センス疑うわマジで……。
でも、こういうのって割とセンシティブな話だし、あんまり突っ込まない方がいいんだよな……きっと。
「そっか……。漢字、教えてもらったのか?」
「自分の名前だけねー! てかウチの名前、めっちゃ変っしょ? キャハハハーッ!」
「いや、ツッコんでよかったやつかよ……!! 俺の気遣い返せ……!!」
「キャハハハーッ! ごめんってばー! てかウチに名前が二つある時点でお察しじゃねー?」
――うっ……確かに……。
でも、何故だろう。
凄く馬鹿にされた気分だ……。
「…………。それで? もう一つの名前ってのは何なんだ?」
「それはねー、ウチが考えたんだー! ママがつけてくれた名前"二六三七"から取って、読み方と順番を変えてー……」
そう言うと二六三七は、紙に字を書き始めた。
「"六三七"……?」
「そ! 六三七と書いてロクサーヌ! 超可愛いっしょ!?」
――訳分からん当て字はともかくとして……。
やはりこの子がロクサーヌだったのか……!
「そうか……。やはり君が――――」
「それより僕ちん!! ウチは名前まで教えたんだからさ! ――――そろそろウチの条件……呑んでくれるよね……?」
俺が彼女にロクサーヌであることを確認しようとしたその時、彼女は強引に俺の言葉を遮った。そして何故か突然服の襟元を触り、上目遣いで見つめて来た。
「な、何だよ、突然……!?」
「さっき……ウチの条件を呑むって約束したじゃんね……? だから……早く……。ウチもう……我慢出来ないよ……」
――な、な、な、何ですかいきなり……!?
とんでもない色気を放ちやがって……!?
しかも、我慢出来ないだと……!?
コイツは一体俺にナニをさせるつもりだ……!?
「ねぇ……僕ちん……」
そう言いながらロクサーヌは四つん這いの体勢で、ゆっくりと俺に近付いて来る。俺は一歩、また一歩と後退りして行き遂に壁まで追い詰められてしまう。
「ま、待ってくれ……! 俺には心に決めた人がいて……! だからロクサーヌとは……!!」
「は……? 何言ってんの?」
俺はロクサーヌを止めるべく、無我夢中で声を発した。すると彼女はポカンとした表情で俺――――ではなく、その横の壁に掛かっていた見るからにギャルっぽい服を手に取った。
「え……?」
「『え……?』じゃなくて、早く! ウチにギャルについて教えて! てか、ウチをちゃんとギャルにしてっ!!」
「はぁ……?」
俺は肩透かしを食らった気分だった。
――何だよっ!?
紛らわしい事すんなよ……!
こっちは童貞なんだぞ……!? なめんな……!!!
別に期待してなかったから、いいんだけどー?
俺にはスカーレットという心に決めた人がいるから全然大丈夫だけどー?
俺の心は荒れていた。そして俺の目の前には、キラキラとした目で俺を見つめるロクサーヌが鼻息を荒くして、俺のギャル講座を心待ちにしていた。
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