9話 勇者パーティー
国王への謁見の最中、大量の魔物が進軍しているとの情報が入った。そして俺達は勇者パーティのメンバーと合流する為、別室へと来ていた。
◇
俺達が部屋の扉を開けると、そこには女性が二人、男性が一人、戦闘へ向かう準備を整えていた。
「あら? 貴方様が勇者ユーリかしら?」
そう声をかけてきたのは白い修道服に身を包み、綺麗で長い金髪を靡かせる青い目をした女性だった。
所謂シスターの様な見た目で先端に丸い石が付いた長い杖のような物を持っていた。
――おぉ……アニメによく出てくるThe聖女といった感じだ。
あぁ、本当にこの世界は最高だな。ほんっとに……ご馳走様です……!!
「そうだ! 見ての通り俺が勇者ユーリだ! これからよろしくな、みんな!」
何が見ての通りなのかはわからんが、ユーリは皆に嬉々とした表情で返事をした。
「やはりそうなのね! まぁ服装はアレだけど……顔立ちから気品が溢れているものね。私は、聖女のセリーヌよ。主に皆の回復を担当するわ。これからよろしくお願いしますわ」
やはり女性は皆、イケメンが好きなのだろうか。ユーリのボロボロの服にはあえて触れず、顔立ちを褒めたセリーヌは、可愛い顔で微笑み少しばかりのお辞儀をした。
すると次にセリーヌの隣に立っている体格のいい男が挨拶を始めた。
「お、オイラはボンズと言います……! パーティーではタ、タンクを担当する事にな、なると思います! よ、よろしくお願い……しまちゅ……!」
――あ、噛んだ……。
この男の名前はボンズと言い、顔付きは漢と書くに相応しいもので、身長は一八〇センチメートルはありそうな程の高さがあり、身体はガチガチの筋肉質で右手にナイフ、左手に大盾を装備していた。
その屈強そうな外見は正にタンクといった感じだ。
だが、そのオドオドとした態度は本当にタンクが務まるのかと疑念を抱いてしまう程に情けないものだった。
すると次にボンズの後ろから小さい女の子が顔を出した。
「私……リリィ……。リリィは……攻撃魔法……得意……。よろしく……。勇者ユーリ……。その横にいる……ちっこいのは誰……?」
このボソボソと話す小さい女の子はリリィというらしい。
長い黒髪は背中の真ん中まで伸び、前髪で左目は隠れていた。
話し方と全身を黒と青を基調とした魔法少女を彷彿とさせる服装のせいか少し暗い印象を受けたが、それらは彼女の細身で色白の肌と可愛らしい顔立ちをかえって際立たせていた。
――今、この子……俺の事をちっこいのと言ったのか?
だが、可愛いので許します。
「そうだった! みんなにも紹介しておくよ! この子はエル。俺の弟だ! 戦闘には参加しないけど旅には同行する事になるからよろしく!」
リリィの問いにユーリは何の打ち合わせもしないまま俺の事を弟と答え、俺の背中をポンと叩き前に押しやった。
――まったく、このアホは後先考えずに……。
俺の今の見た目は金髪イケメンのユーリとは似ても似つかない。
このままでは弟じゃないとバレるかもしれない。
なら、ユーリに対してもずっと続けて来た魔王ムーブも辞めた方がいいか?
うん、そうだな……。もう少し子供っぽくしてみるか……。
そして俺は一度深呼吸をし、心を落ち着かせてからぬっくりと口を開いた。
「僕の名前はエルと言います! お兄ちゃん、お姉ちゃん。これからよろしくね!」
「「「………………………………。」」」
――ま、まずい……!
子供っぽくしすぎたか……!?
「か……。か……! か…!!」
するとセリーヌが口元を手で押さえて何やら言いたげな顔をしている。
「な、何かな ?」
俺が顔をひきつらせていると、セリーヌは目にも止まらぬ速さで俺に抱きついて来た。
「可愛過ぎるぅぅぅーー!!!! 短い黒髪に黒い目、それにこのギザギザした歯!! ユーリ! この子私に貰えるかしら!?」
「はぁ……!? い、いや、何言ってるの!? ダメに決まってるでしょう!?」
セリーヌの言葉にユーリはいつものアホさを忘れる程に鋭くツッコミを入れた。
そして俺はというと――――セリーヌの柔肌に酔いしれていた。
「あぁ……! セリーヌだけずるい……。リリィもエルを可愛がる……」
そう言うとリリィも俺の元へと近付き、頭を撫で始めた。
「お、オイラも子供好きなんだよね。だって子供は恐くないから。小さくて可愛いね、エル君」
そしてボンズまでもが俺の頭を撫で優しい顔を見せた。
――おいおい、この感じ……。
これからは、この子供ムーブを継続しなくちゃいけないやつか?
俺中身四〇歳だぞ……。
まぁでも上手く信じ込ませる事が出来たしこのままいくか……。
ただお姉ちゃん、お兄ちゃん呼びはさすがに恥ずかしいので辞めにしよう。
「セリーヌ、リリィ、ボンズ! これからよろしくね!」
俺は精一杯の笑顔を三人に向けた。
(((きゅーーーーーーん♡♡♡)))
その笑顔に三人が心を撃ち抜かれていたのは言うまでもない。
「なぁエル? 何かキャラ変わってない? いつもの貴様呼びはどうしたのさ?」
俺はユーリの服を引っ張り顔を近付けさせると、彼の耳元で小声で囁く。
「うるさいぞユーリ。貴様……粛清されたいか? 俺は貴様の都合に合わせてやっているのだ。感謝しろよ……?」
「……っ!? う、うん、わかった……。ありがとう……! へへ」
するとユーリは顔を引きつらせながら、微妙な顔をした。
全員の自己紹介も終わる頃には、俺を愛で続ける勇者パーティーの面々はもう既に、勇者であるユーリの方を誰も向いていなかった。
そんな時――――
ウーーーーー!ウーーーー!!
『スタンピードが到着するまで、あと五分です……!』
再度魔物の襲来を知らせる警報が鳴り響いた。
すると、セリーヌ達は俺を愛でるのを止め、武器を手に取った。
「よし! みんな! 行こう!!」
ユーリが三人に号令をかけると、俺達は全員で勢いよく部屋を飛び出した。
◇
王都門前
俺達が門前に到着した頃には既に、沢山の騎士や衛兵達が集結し、戦闘態勢に入っていた。
そして俺達はその集団の先頭に立ち、魔物を迎え撃つ体制に入った。
「エルは俺達の後ろでじっとしてるんだぞ……?」
「そうよ。何かあったらすーぐセリーヌお姉ちゃんを呼ぶのよ?」
「エルは……リリィが守る……!」
「お、オイラがエル君の盾になるからね! あ、安心してよ!」
――コイツら……。良いヤツらじゃないか。
俺を守ろうとしてくれているのか。
まぁ今攻めてきている魔物達の大ボスは俺なんだけど……。
それに多分だけどみんなより俺の方が強い。
だが、こんな奴らでも死んで欲しくはないな……。
よし、ここは一つ全員の士気を上げておくか!
「みんなありがとう!! 頑張ってね!!」
((((きゅーーーーん♡♡♡♡))))
そして俺がそう言ってやると勇者パーティーの面々の顔付きが変わった。
すると遠くから土煙を上げ、大量の魔物達がこちらへ向かってくるのが見えた。
「来たな……! みんな! 魔物を撃退するぞ!!!」
「えぇ! 任せなさい!」
「うん……! 皆殺しにする……!」
「お、オイラが皆を守る……!」
ユーリの宣言の後、勇者パーティーの初陣が幕を開けた。
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