6.第2回戦
Dグループ第二回戦。
ブロック代表決定戦。 控室
試合開始まで控室待機だ。
俺は控室に入る。
控室に入って2分程でウェスザンスが控室に入って来た。
二人きりの時間が流れる。
椅子に座って出番を呼ばれるのを待つ。
控室に二人。重い空気が漂う。
気付くと手が震えていた。
緊張?不安?恐怖?興奮?焦燥?
優勝経験者を前に様々な感情が俺を襲い、手が震える。
ダメだ。落ち着け俺。
戦う前からこんな感じでどうすんだ。
深呼吸だ…。
落ち着け…。
気持ちを整えろ…落ち着かせるんだ。
ゆっくりと深い呼吸を一回。
アキナから渡されたミサンガをぎゅっと強く握り絞めて震えを和らげる。
ミサンガを触ると俺は1人じゃないと、そんな気になれた。
二人きりの時間が続き、5分程経っただろうか
「ハルナ選手、ウェスザンス選手。
準備出来ました。」
試合の準備完了の知らせを伝えにコロシアムの運営が控室に顔を出す。
出番だ。
その時が来たと思い、俺は立ち上がろうとする。
すると、ウェスザンスが俺の前に立ち塞がった。
そして、俺の目の前に立ち塞がったウェスザンスは低い声で言う。
「貴様は何故このコロシアムに出る。」
ウェスザンスが俺にコロシアム出る理由を問う。
シンプルな問だが、俺は直ぐに返答が出来ない。
喉に言葉が詰まった。あまりの恐怖に直ぐに声が出せなかったのだ。
ウェスザンスから放たれる圧倒的強者のオーラ。圧。
俺の体はビビり散らかす。
一瞬でも気を緩めたら小便を漏らしてしまいそうだ。
そのぐらい圧倒的で…、正直逃げ出したい。
ウェスザンスから問われて、7秒程間が空く。俺はやっとの思いで声を絞り出す。
「俺には…金が、いる。」
少し言葉を詰まらせながら俺は言う。
それを聞いたウェスザンスは表情を変えずに一言。
「くだらん理由だ。」
そう言って、ウェスザンスは試合会場へと足を進めようとする。
少しイラついた。
理由がくだらないだと?
俺はウェスザンスの肩を掴み試合会場へ向かおうとする足を止める。
「くだらないだと?
じゃあ、あんたは何で参加するんだよ。
一回優勝してるのによ」
「離せ」
ウェスザンスから今日一番の圧が放たれる。
離さないと殺す。そう言っているかのような。
怖すぎる。正直掴み止めたことを後悔している。
だが、俺は手を離さない。
ここで離したら俺はこいつに絶対勝てない。
そんな気がした。
「答えろよ。」
2秒程の沈黙。
たったの2秒。
その2秒が物凄く長く感じる。
また小便が漏れそうだ。
そして、ウェスザンスがゆっくりと口を開く。
「私は強者を探しに来た。
欲深き強き者を。」
ウェスザンスはそれだけ言って、俺の手を払い試合会場へと歩いて行った。
「し、死んだかと思った…。」
ウェスザンスが試合会場へ行き、1人になった控室で俺は呟いた。
今からあいつと試合するのかよ…。
試合会場行きたくねぇ…。
しかし、ウェスザンスが試合会場に行ってしまったので、いつまでもここに居るわけにいかない。
「よっしゃ!行くぞ!」
俺は自分の頬を叩き、気合を入れ直す。
控室の重い扉を開き。
俺も会場へと向かった。
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「Dブッロク代表決定戦、試合の準備が整いましたぁ!!」
司会者が叫ぶ。
観客も盛り上がりを見せる。
「では、二人の選手に登場して貰いましょう!!」
司会による選手紹介が始まる
「コロシアム通算4度の出場!
若き戦士ハルナぁぁぁぁ!!!」
その紹介と同時に俺は観客達の前に姿を出す。
「そして、大注目!
第30回王者が再びこの地へ!
ウェスザンス!!!」
とんでもない歓声と共にウェスザンスが再び俺の前に現れる。
絶対負けれない。
きっと。
いや、絶対に。
誰もウェスザンスに俺が勝つなんて思っていないだろう。
「では、両者準備はいいですか!」
やってやる。
起こしてやるぞ、超番狂わせ。
「試合開始です!!!」
試合開始の合図が聞こえる。
「先手必勝!」
試合開始の合図と同時に俺が仕掛ける。先制攻撃でまず一発、あいつにダメージを与えて少しでも有利に試合を進めたい。
そう思い、開始の合図と同時にウェスザンスに向かって魔法を発動させようとする。
が、気づくと既にウェスザンスの姿が消えていた。
俺の目の前から、俺の視界から消えていたのだ。
「は?」
ありえない。
一瞬でも目を離したつもりはなかった。
気を抜いたつもりもなかった。
じゃあ、何故?
何故俺の前からウェスザンスがいなくなっている?
「『魔法撃』」
そうウェスザンスの声がしたかと思った瞬間。
背中に強い痛みと衝撃が走り、吹っ飛ばされる。
何が起こった分からなかった。
「うっ…!」
背後に回られてた?いつ?
どのタイミングで?
「弱いな。」
いや、今はそんな事考えなくていい。
考えてる時間が勿体ない。
考えるより一手でも多く攻撃を仕掛ける。
俺は両手にファイアボールを1つずつ生成する。
「stage1の魔法など私には効かんぞ」
「やってみないと分かんねーだろ!」
今出せる最大火力のファイアボールを2発。ウェスザンに撃ちこむ。
が、ウェスザンスは俺のファイアボールを素手で簡単に弾く。
想定内…、いや、やっぱ想定外だ。
切り替えろ。
ファイアボールが無理なら、あれだ!
「『岩石クラッシュ』!」
俺が地面に触れると地面が揺れる。
そしてウェスザンスの足元の地面が二つに割れて、ウェスザンスを挟み潰す。
これは特訓で覚えた新たに覚えたstage3の魔法。
「よし!決まった!」
今回はファイアボールの時より手ごたえを感じた、これは決まったんじゃないか?!
「弱い。」
その声と同時に俺の魔法を破壊。
ウェスザンスは無傷の状態で現れた。
衣服すらノーダメージ。めっちゃ綺麗な状態だ。
「嘘だろ…。これもノーダメかよ…。」
俺はやけくそになって魔法を連続で発動する。
しかし、俺の魔力が減っていくだけで、ウェスザンスには一ダメージも与えられなかった。
「弱過ぎる。」
圧倒的、実力差。
こんな奴に俺は…、勝てるのか?
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