5.第1試合
試合開始の合図。
「行くぜぇぇぇ!!」
それと同時に、ダーバンは鞘から剣を抜き
勢いよく俺に向かって距離を詰めて来る。
大きな歩幅に、強い脚力。
気付くとすぐ目の前までダーバンが迫っていた。
「いきなりかよ!」
開始早々に仕掛けて来やがった。
少しの動揺。
しかし、俺は直ぐに自分を落ち着かせて冷静になる。
ダーバンが剣を振るう
その攻撃を上半身を捻って躱す。
ギリギリだ。もう少し反応が遅れてたらいきなりやられてた。
攻撃を躱すことによってダーバンに少しの隙が生まれる。
生まれた隙を逃さずに、俺はダーバンにファイアボールを食らわせ、見事に綺麗なカウンター攻撃が決まった。
「グッ!!」
ダーバンは舌打ちをして
一旦俺との距離を取る。
「クソが!これならどうだ!」
ダーバンはそう言いながら懐をゴソゴソとする。
そして、ダーバンの懐からは13センチ程の長さをしたナイフが8本出て来る。
そのナイフを俺に向かって投げ飛ばす。
「おりゃよっと!!」
勢い良く投げ飛ばされたナイフは一直線に俺に向かって飛んで来る。
だが、避けれるスピード。
「流石に当たらねーぞ」
俺はそのナイフ攻撃を余裕を持って避けることに成功。
しかし、ダーバンの本命はナイフ攻撃ではなかった。
俺はそれに気づかなかった。
俺はナイフに気を取られ。
ほんの少し。
ほんの一瞬。
俺は目線をダーバンから外していた。
「アホが!本命はコッチだ!」
ダーバンは俺がナイフ攻撃に気が取られている間、自分から目を離したことを確認すると
俺の背後に回り、俺との距離を詰めていたのだ。
俺に向かって剣は振り下ろされ
痛みと同時に俺の背中からは血が流れるのが分かった。
服に血が滲む。
「ガハハ!どうだ俺の剣の味はよぉ!」
「クソが…。」
「うきゃきゃきゃ!!」
アドレナリン出まくりで興奮状態のダーバン。
左右の眼球をグルグルと物凄いスピードで回す。
何かグロい。グロいぞ!
「まだまだ行くぜぇ!!」
勢いついたダーバンの攻撃はまだ終わらない。
ダーバンの怒涛の攻撃ラッシュが俺を襲う。
その攻撃を避ける度に背中の傷が痛む。
出血も止まらない。むしろ体を動かしているため傷口が広がって出血量は増えていく一方だ。
このまま避けるだけだと俺が先に倒れちまう。
「ひゃひゃひゃ!!どうしたどうした。
苦しそうな顔しちまってよぉ?!」
ダーバンの剣がじわじわと俺にダメージを与えていく。
「クソ!」
焦るな。冷静を保て。
焦ってもいい結果は生まれない。
落ち着いて、相手をよく見ろ。
相手の隙を。
隙を見つけるんだ…。
出血のせいであまり時間をかけてると俺がもたない。
隙を見つけて次の一撃で仕留めてやる。
ダーバンの高速連続攻撃。
俺はダーバンが隙を作るのを待つ。
「おいおい!!反撃して来いよ!雑魚ぉ!!」
挑発に乗るな。
ここは我慢しろ。
我慢だ。
背中の傷がジンジンと痛む。
出血も酷く、頭がぼーっとしてくる。
「ひゃひゃひゃ!!」
まだだ…。
まだ反撃するな…。
ダーバンの攻撃のキレは上がっていく一方。
ダーバンの剣は着々と俺の体力を削っていく。
「反撃してこねーなら!」
まだ…。
まだだ…。
「終わらせてやるよ!」
ダーバンはそう言い。
剣を大きく振り上げる。
大きな動作だ。
大きな動作をすれば必ず
「今だ!」
隙が生まれる!!
俺はダーバンのアホみたいに開いた口に手を当てて、そのままファイアボールをダーバンの口内へ打ち込む。
口内にファイアボールを食らったダーバンは
白目をむいてその場で倒れた。
計画通り。一発で仕留めれたぞ。
「試合終了ぉぉぉぉ!!!
ダーバン選手戦闘不能により勝者ハルナ選手ぅぅぅ!!」
司会者はダーバンの元へと近づき、ダーバンの戦闘不能を確認し叫ぶ。
観客は沸き上がり。
俺への賞賛の声が響き渡る。
「まずは一勝…。」
この後、第二戦のライオン侍対ウェスザンスの試合が直ぐに始まる予定だ。
第2戦が行われてる間に俺はコロシアムの医務室に連れて行かれ、簡単な治療を受ける。
「痛い!もっと優しくやってくれよ、ハヤシ」
「いやぁ、いい試合だったよ~」
俺の治療をしてくれている緑髪の男、ハヤシ。
コロシアム専属の医者だ。
俺が初めてコロシアムに参加した頃から世話になっている。
「おい!痛いって!」
「いやぁ、今回の君はいつもより気合が入ってる気がするからねぇ~。二回戦目も期待しちゃってるよぉ~」
包帯をぎゅっと強く縛る。
同時に強烈な痛みが俺を襲う。
「馬鹿アホハヤシ!!」
「ほら、そろそろ出番だよぉ~」
「え、もう?」
医務室に試合の映像が映し出され。
そこにはライオン侍が倒れるところが流れていた。
「冗談だろ、瞬殺じゃねーか。」
試合が始まって、1分?いや、1分もあったか?
「流石優勝経験者だよぉ~」
治療のために脱いでいた服を俺は急いで着る。
また控室に待機していないといけないのだ。
「じゃ、ハヤシ治療ありがとよ!」
「はぁーい」
ハヤシに治療のお礼を一言言って俺は医務室から控室に急ぐ。
ウェスザンスに勝てば予選通過。本選出場だ。
負けられない。
俺は気合を入れ直した。
面白ければ、評価、ブックマークお願いします。