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3.元王者

 11か月。


 stage5の魔法が記載されているボロボロの本を拾ってから、11か月という時間が経った。

 あっという間だ。


 次のコロシアム開催まであと1か月と迫る。

 あれから毎日特訓に励み。

 俺は今日もいつも通り特訓に励んでいた。 


 「はぁはぁ…。」


 呼吸が乱れる。

 残りの魔力もほぼ0に近い。


 「最初の頃に比べたら結構形にはなってきたね。」


 アキナが俺に言う。

 俺には本の文字が読めない。

 だからアキナにも特訓を手伝って貰っている。


 「今日はもう日も暮れるし続きは明日にしよ。

  どうせもう魔力もないでしょ?」

 「あぁ。悔しいけどほぼ0だぜ」


 もう少し続けたい気持ちはある。

 しかし、あとコロシアムまで1か月。

 今無理をして調子を崩すわけにはいかない。


 俺はアキナの言う通りにして、今日の特訓をここまでにする。


 アキナに肩を貸してもらいながら馬小屋まで戻る。

 帰り道にやべーゴミ捨て場を覗いてみたが今日は何も捨てていなかった。


 馬小屋に着くと俺は仰向けに倒れ込む。

 ボロボロの屋根をボーっと見つめる。


 次のコロシアム開催まであと1か月。

 もう1か月しかない。

 

 stage5…間に合うか?

 多少形にはなって来ているが、完璧には程遠い。

 早く習得しないと、また負けちまうぞ。

 焦りと不安が俺を襲う。


 「ハールナっ!」

 

 アキナがニコニコして、何か後ろ手で隠しながら俺の隣に来る。


 「なんだよ」

 「じゃじゃーん!!」


 俺が聞く。

 するとセルフの効果音と共にアキナがいかにも高級そうな生肉を出す。

 見た事ないぐらい上等な肉だ。


 「え!肉じゃん!しかもイイやつ!!」

 「すごいでしょ!!」


 ドヤ顔でアキナは胸を張る。

 肉なんて何年ぶりだろうか。

 流石にやべーゴミ捨て場でも肉は捨てられていない。

 だから、肉なんて最後いつ食べたのかも思い出せないくらいには久しぶりだ。

 でも、アキナはどうやってこの肉を入手したのだろうか。


 「スゲーけど、この肉どうやって手に入れたんだ?」


 「ふふっ。ハルナは気づいてないかもしれないけど

  私って結構可愛いって人気あるのよ?

  だから、ちょちょいとね!」


 「ちょちょいと?」

 「んー、まぁ、食べよう!」

 「お、おう」


 アキナはどうやってこの肉を手に入れたか詳しくは言わなかった。

 少し気になったけど、

 本人が言いたくないならしょうがない。

 無理矢理聞き出すつもりはない。 

 

 「焼いちゃうね!」

 「おう!」


 今はこの肉を有難く頂こうじゃないか。


 アキナが肉を焼く。

 肉が焼けるいい音といい匂いが俺の体を幸せにする。

 

 「き、きもちぃぃぃぃ!」


 肉が焼き終わり、俺とアキナはせーので同時に肉を口に頬張る。


 「「うみぇ~!!」」 


 一口食べて二人で叫ぶ。

 肉は超柔らかくて。

 頭が可笑しくなる程美味くて。

 あまりの美味しさから俺達二人、泣きながら肉を食べた。

 お陰様でその日は幸せな気持ちで眠りにつけた。


 肉を食べて力が湧いて来た俺は、それからの残りの1か月。

 雨の日も風の日も毎日特訓に励み、コロシアム当日を迎えることになる。


 そして、コロシアム当日。


 「あー、緊張するぅ。」

 「大丈夫だよ、あんだけ特訓したんだから」


 アキナはそう言いながら俺の手首に何かを結び付ける


 「これはお守り代わりのミサンガ。

  ハルナが無事に帰って来ますよーにって、パワー籠めといたから。」

 「お~!」

 「私も後から会場行って応援するからね!」


 参加者は先にエントリーなどの手続きがある。

 だからアキナより先に俺はコロシアムに着いていないといけない。


 「じゃ、いってくる!」

 「いってらっしゃい!」


 俺はアキナと一旦離れ、コロシアムに向かった。

 コロシアム当日。

 街はお祭り騒ぎだ。


 会場に着くともう既に参加者であろう人達が待機していた。

 

 「では、第35回一攫千金コロシアムエントリーを開始します!

  参加者はこちらに並んでください!」


 俺が到着して3分も経たないうちにエントリー開始のアナウンスが流れる。

 アナウンスに従い俺もエントリー希望者の列に並ぶ。 

 列はスムーズに進んで行き、15分程で俺の番が来る。


 「では、こちらの紙に登録名書いてください!」


 受付の人がそう言って1枚の紙を渡して来る。

 俺はその紙に登録名を書いて提出


 「はい、ハルナさんですね。

  ハルナさんの予選はDブロックになります。

  なので一つ前のCブロックが始まる頃には戻って来てくださいね!」

 

 俺の予選はDブロックか


 予選ブッロクはA~Lまであり、1つのブロック4人で構成されている。

 ブロック内のトーナメントに優勝すれば本選へと進む。

 本選への出場は各ブロックから1人で合計12人

 さらに運営の厳重な審査によりその12人の中から4人に本選1回戦免除が渡され、本選トーナメントを有利に進められる。

 

 俺が受付を終えると周りがざわつき出す。


 「お、おい。あれ見てみろよ」

 「あぁ、何で第30回王者がここに居るんだよ」

 「今回のコロシアムに参加するっぽいぞ」

 「俺ファンなんだよ!第30回王者、ウェスザンス!」


 周囲に騒がれながら姿を現したのは1人の男。

 白髪で長髪の男、ウェスザンス。

 第30回のコロシアムで優勝経験を持ち、数少ないstage5の魔法の使い手でもある。


 「マジかよ…。」


 ウェスザンスは受付へと歩きエントリーをする。

 ウェスザンスが受付を終わらせたのと同時にスクリーンに予選ブロックのトーナメント表が映し出される。


 俺はDブロックを真っ先に確認する。

 俺の1戦目はダーバンという奴だった


 Dブロック全体を確認する。


 「俺と。ダーバン。ライオン侍。ウェスザンスか…。」


 ん?なんか最後にとんでもないの居なかった?

 冷や汗が止まらなくなる。

 

 見間違えじゃないよな…?


 もう一度、Dブロックのメンバーを確認する。


 「み、見間違えじゃない…。」


 同じブロックに…


 「うぇ、ウェスザンスおるやんけ…。」


 終わった。

 アキナごめん。

 俺1戦目勝てても、2戦目で死ぬかも…。

 

  


 

 

 

  



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