2.やべーゴミ捨て場
翌朝。
日の光がボロボロの屋根の隙間から差し込み。
俺は目を覚ます。
まだ朝早い。
少し肌寒い空気が俺の肌に触れる。
その場で体を伸ばして
隣で気持ち良さそうに寝るアキナを起こさなさいよう、静かに物音を立てないようにして俺は馬小屋を出る。
俺が早起きしたのに理由があった。
その理由は特訓だ。
今回のコロシアムは負けてしまった。
が、また1年後にはコロシアムが開催される。
そこで勝つために、そのために特訓を始めなければならない。
朝の新鮮な空気をいっぱいに吸い込んで俺は特訓場所に移動する。
俺が特訓場所にしているのは街からも俺が寝泊まりしている馬小屋からも離れた所にある草原。
ここには滅多に人が来ないので特訓には最適な場所だ。
「まずは魔法の特訓だな」
この世界には魔法というものが存在する。
魔法は魔力という特殊な力を使って発動する。
意識を集中させ、体の中の魔力を感じ取る。
そして直径15センチ程の炎を生成させる
「よしよし、今日もいい感じだ。」
生成した炎をお手玉のようにして遊び。
適当な所に投げておく。
一時間程魔力コントロールおよび魔法の特訓を続ける。
そして10分だけ筋力を鍛えたら、朝練は終了。
「今日も帰る前にあそこに寄って行くか。」
朝練を終えたらいつも向かう所がある。
それは街の高級住宅街にある
「今日も来てやったぜ、やべーゴミ捨て場!」
ゴミ捨て場だ。
ここはただのゴミ捨て場ではない。
金持ちの家に挟まれたゴミ捨て場だ。
たまに新品の食料や日用品が捨てられ、ここに置かれているのだ。
ゆえに俺はここをやべーゴミ捨て場と呼んでいる。
「今日は何かあるかなぁ~」
首を左右に振って周囲を確認。
誰も見ていないことを確認して、ゴミ捨て場を漁り始める。
すると漁り始めてすぐに、袋に梱包されたパンを4つ見つける。
「ラッキーラッキー!賞味期限も切れてない上物だ!」
めちゃくちゃ美味そうなパンをゲット。
持って帰ればきっとアキナも喜ぶだろう。
他には何かないかとさらにゴミ捨て場を漁ってみると、今度はボロボロの本を見つける。
だいぶ古そうな本だ。
俺には別に本を読む趣味はない。
しかし、この時は何となく気になった。
そして、何となく手に取る。
表紙には題名のようなものが書かれているが、表紙の文字は消えかかっていて、なんの本なのかは分からない。
「なんだこの本…。えっちな本ではないよな…?」
べ、別に?
俺はえっちなことなんかに興味ないけど?
まぁ一応?確認はしといた方がいいよな?
小さい子供が間違えて見ちゃう可能性だってあるし?あぶねーもんな?
えっち警察ハルナ!出動!
無意識に鼻息が荒くなる。
本を開くとびっしりとページ一杯に文字が書かれていた。
しかもそれが、1ページ目から最終ページにかけて全てのページが、空白が出来ないくらいの文字で埋まっていた。
見た事ない程の文字数。
あまりの文字数で何か…、グロかった。
ずっと見ていたら食欲が失せそうだ。
「うげぇ…。なんじゃこりゃ。
全然えっちくねーじゃん。」
文字ばっかりで全然えっちくない。
少しはえっちくあれよ。馬鹿。
そんな感じで少し残念な気持ちになっていると。
ゴーン。ゴーン。
街の時計台が朝8時を知らせる鐘を鳴らす。
「やべ!アキナが起きちまう!」
俺は4つのパンと全然えっちくないボロボロの本を持って、俺達が寝泊まりしている馬小屋まで急いだ。
馬小屋に戻るとアキナは涙目で丸まっていた。
まるで捨てられた子犬のような感じだ。
「お、おはようアキナ!」
俺は笑顔で朝の挨拶をする。
するとアキナは俺に近づき俺のことをポカポカと叩いて来る。
痛くはない。
「何で朝起きたらいないの!」
「ご、ごめんって。
特訓してたんだ」
「起こしてくれれば良かったじゃん!言ってくれれば私も付き合ったのに!」
確かに起こす選択肢もあった。
でも、アキナが超気持ち良さそうに寝ていたから起こせなかった。
まぁこれを言っても色々言われそうなので素直に謝るのが最善か。
「一人で行ってごめんな」
「ふんっ。
謝ったって許してあげませーん。」
アキナはお手本のような拗ね方をする。
「でも…。ほらアキナ」
「ん?」
俺はさっきやべーゴミ捨て場で入手したパンを出す。
流石にパンだけじゃキツイか…?
パンを出した時にそう思ったが
「パンだぁー!!」
パンを見たアキナは、目をキラキラとさせて言う
「許してくれるか?」
「許す許す!ほら早く食べよ!!」
チョロかった。
アキナと二人でパンを美味しく食べる。
パンはモチモチとした食感で、ほんのりと甘い味がした。
美味だ。
そして俺はパンを食べながら、一緒に持って帰って来たボロボロの本を出す。
「持って帰って来たはいいけど、字読むの苦手なんだよなぁ…。」
ただでさえ読むのは苦手なのに、このグロイ文字量。最悪だ。
俺が本を読むのに苦戦しているとアキナが俺の隣に来る。
「何してんの?」
もぐもぐとパンを口に含みながらアキナが言う。
「いやー、さっきこの本拾ったんだけどさぁ」
俺はボロボロの本をアキナに見せる
「すっごいボロボロだけど、何の本?」
「んー。字読むの苦手だからよく分かんねーだよ。」
「貸してみて」
アキナはそう言い
俺の手からボロボロの本を取る。
「私意外と字読めるのよ」
ドヤ顔で俺にそう言って本を開き
中身を読み始める
そして、15分程経ち。
「ふむふむ。なるほどねぇ~」
アキナが呟く。
「何が書いてあるんだ?」
「んー、何か魔法のこと?やり方みたいな?」
魔法のやり方?相当古い教科書みたいなやつか?
「stage5の魔法だって。」
「それ本当か!?」
stage5。
俺はそれを聞いた瞬間、興奮のあまりアキナ肩を掴み顔を近づける。
「ハ、ハルナ…。ち、近いよぉ…」
アキナは顔を赤らめて俺を遠ざける。
口でも臭かったか?
少しショックを受ける。
「んで、それ本当に書いてあったのか!」
「ほ、本当だけど?」
「マジかよ…。」
魔法にはstageという階級が存在する。
stageは1~5まで存在し
stage5が一番強力で習得が一番難しいとされている。
stage5を使える者は今確認出来る限りで世界に7人しかいないと言われている。
でも、何でstage5の魔法が記載されてるんだ?
魔法の本や教科書なんかには最高でもstage4までの魔法しか載っていないと何処かで聞いたことがあった。
それなのに…。
まぁでも…。
「こりゃいい拾いもんしたなぁ」
俺はこの本に書かれたstage5の魔法を習得することを決意する。
てか、やっぱあのゴミ捨て場やべー。
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