11.宿。組織。
兵士に連れられて王宮を出た俺は、宿に向かうためにハルサメ国の街を歩く。
街を歩いてみて気づいた。
ハルサメ国はエクレア王国と雰囲気がどこか似ている。
人も多く、様々な店が街を盛り上げている。
大道芸をやってる人も見かけた。
「結構いいだろ、この国も。
あ、俺の名前はマーズだ。よろしくな。」
チャラそうな見た目をした兵士の名はマーズというらしい。
マーズは俺に手を伸ばし握手を求める。
握手を断る理由はない。俺も手を伸ばしマーズと握手を交わす。
「あぁ、エクレア王国に似てる。いい国だな。」
「おいおい、テンション低いな!」
「いや、まぁ…。」
こいつ、俺と女王が話してた内容知ってるよな?
ついさっき一生家に帰れないかもしれないってことを知らされたばっかの奴にテンションの指摘してくるか?普通。
てかこんな状況でテンション高かったら怖いだろ。
「んー。まぁテンション上げろってのは無理かもしんねーけどさ。」
ポンポン。っと
マーズが俺の肩を叩く。
「悪くは思わないでくれよ?
守るもんが人より多いだけで
女王陛下もお前に意地悪してる訳じゃないんだ。
そこは分かってくれよな。」
分かっている。
女王が意地悪言ってる訳じゃないってことは。
だから俺は何も言い返せなかったし、今大人なしく案内されている。
マーズに街を紹介されながら歩き、20分。
俺達は目的地の宿に着く。
「ここがこれからお前の寝泊まりする宿だぜ。」
「ここが…」
「いい宿だろ。」
宿を見て少し驚く。
マーズに案内された宿は立派な木造建築で建てられていて、見るからに新築って感じで、俺が想像していた宿より何倍も立派な宿だった。
てっきり、ボロボロのやっすい宿に泊めさせられるものだと思っていた。
「よし、ファーシナルの部屋は2階の207号室だ。」
宿に入り、階段を使って2階へと上がる。
部屋には必要最低限の物と一人用のベット、小さなテーブル、イスが一つ置いてあった。
「んまぁ、特に説明することはない。
この部屋はお前の好きに使ってくれていいぜ。」
マーズがそう言うと、時刻午後5時を知らせる鐘が鳴る。
「もう5時か、俺はこれから別の仕事があるから行くぜ。
あ、鍵はここ置いとくな。」
「おう」
マーズはテーブルに部屋の鍵を置いて小走りで部屋を出ていった。
と、思ったら再び部屋に戻って来る。
「どうした。」
「暇な時は遊びに来てやるよっ」
マーズはそう言って何の需要もないウィンクを一回。
今度こそ本当に部屋を出て行った。
いや、別に来なくていいよ。
と思いつつ。
俺はベットに体を沈める。
窓の外では太陽が沈み始め、月が昇り始めていた。
夜が始まる。
「どうしたもんかなぁ…。」
薄暗い部屋。
俺は1人で今後のことを考える。
部屋から見えたその日の月は少し黒いように見えた。
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ハルサメ王国。
とある廃墟の屋敷。
もう何十年も使われていないその廃墟では埃が舞い。強烈なカビの匂いが鼻に付く。
そんな屋敷の薄暗い部屋の中には5つの人影。
「我ら黒煙組の計画実行まであと1か月だ。」
黒髪の男が言う。
「もう直ぐその時が来るのね…。」
「お、ハナビ。
お前もしかしてビビッてのか?」
黒髪の女が言うと、スキンヘッドの男が女を煽る。
「ビビッてんなら今夜は俺が一緒に寝てやるよ。
俺のテクニックで気持ち良くさせてやるぜ?」
スキンヘッドの男が指をくねくねと動かしながら言う。
ゲス。ゲス男だ。
「は?キモイから喋りかけないでくれる?」
そんなゲス男にハナビはまるで汚物を見ているかのような目を向ける。
ハナビから向けられたその目を見て、男は鼻息を荒くし体を震わせる。
ゲス男は興奮していた。
この男は女性に軽蔑されることによって性的興奮を得る。
つまり変態だ。ド変態だ。
「ザザンガ。そういう話は別の所でしてくれないか?
気分が悪い。」
眼鏡を掛けた紫の髪の男がゲス男に言う。
ザザンガが舌打ちをする。
「今俺はハナビと話してんだ。
邪魔すんなよ、ノア。殺すぞ。」
ザザンガは血走った目でノアを威嚇する。
ハナビとの会話を邪魔したのが相当癇に障った。
ザザンガは元々物凄く短気。
些細なことでも気に入らないことがあったら許さない。この二人の喧嘩は日常茶飯事だった。
「うるせぇぞ。
まだ組長が話してるだろうが。」
赤髪の男が一言で、ノアとザザンガの二人をしずめる。
「計画に失敗は許されない。」
組長と呼ばれる黒髪の男がそう言うと、他4人の顔が引き締まる。
「1か月後あの月が黒く染まった時。
我々の計画は実行される。」
窓から月明りが差し込む。
「我らは黒煙組。
この国に。この世界に。
圧倒的な恐怖と絶望を与える者」
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