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10.帰れない

 デカい。


 改めて王宮の大きさに驚きながら長い廊下を歩く。

 床には真っ赤なカーペットが敷かれている。

 真っ赤なカーペットの上を歩いていると自分が有名人にでもなった気分になる。


 目をキョロキョロさせて王宮の内装を楽しみながら女王の後を付いて行くと、とある部屋の前で足が止まる。


 「ここにしましょう。」

 

 女王はそう言って、その部屋の扉を開く。

 そして俺は、その部屋の中へと案内される。

 部屋の中に入ると何やらリラックス効果でもありそうな香りが漂っていて、とても落ち着く感じがした。 

 

 用意された椅子に腰を落とし、手前のテーブルには温かい紅茶が出される。

 匂いからして如何にも高級そうな紅茶だ。

 まぁ、金ないから安い紅茶すら買えなくて飲んだことないけど…。


 「じゃあ、早速いいかしら。」


 人生初めての紅茶を楽しんでいると女王が言う。


 「はい。」


 一旦、紅茶をテーブルに置いて話を聞くことにする。


 「まず、初めに。

  あたが強制転移魔法で送られて来たこの国の名はハルサメ国。

  あなたがいたエクレア王国からは約10,000キロ離れた所に位置するわ。」

 「10,000?!」


 とんでもない距離。

 驚きで声が裏返った。

 でも仕方ない。だって想像してたよりずっと遠くに飛ばされていたのだから。

 

 おいおい。

 ウェスザンスの野郎どんな所まで飛ばしてくれてんねん。

 ガチでふざけんな。

 マジウンコ野郎。


 「距離も問題だけど。やっぱり黒煙組ね。」

 「何なんですか。黒煙組って。」


 サラは紅茶を一口飲み、口を潤す。


 「黒煙組ってのは組織の名前ね。」


 黒煙組。全く聞いたことがない名前だったけど、組織の名前だということが分かった。


 俺が知らないだけで結構有名な組織なのか?


 「黒煙組は1年前に突然この国に現れた。

  そして、こう言った。

  我々の目的達成のために国を出ることを禁ずる。」

 「国を出るな?何のために?」

 「分からないわ。」


 意味が分からんかった。

 国を出るな?何のためなのか見当もつかない。


 「そんな訳分からないこと聞く必要ないでしょ。」

 「私達も最初はそう思っていた。

  仕事なんかで国を出る必要がある人もいるから、別に国民にも気にせず国の外に出て良いと言ったわ。

  でも、考えが甘かった。」


 女王は歯を食いしばる。


 「何かあったんですか。」

 「殺された。国を出ようとした人は殺されたの。」

 

 部屋のろうそくの火が消えかかる。


 「あいつらは言うことを聞かない人間を、国民を殺す。」

 「ただの噂とかじゃないんですよね?」


 嘘をついているようには見えない。

 しかし、エクレア王国ではこういった事件は聞いたことがないのでつい疑ってしまう。


 「えぇ。もう何人も被害にあってるわ。

  解決策として組織破壊を考えられたけど、奴ら全く姿を現さないのよ。

  だから、黒煙組に攻撃したくても攻撃出来ない。」

 「じゃ、じゃあどうすれば…。」

 「だから今は大人しくしておくしかないの。

  国を出ようとしなければ殺されはしないし、何かされることもないわ。」

 「でも俺、エクレア王国に帰んないといけないんです。

  あっちで俺のことを待ってる人が居るんですよ」


 手首のミサンガをぎゅっと握り絞める。


 「エクレア王国の方角教えてください。」

 「それを聞いてどうするの。」

 「この国を出て、エクレア王国に帰ります。」


 俺は帰らないといけない。

 アキナが待っているあの国に。


 「ダメよ。

  宿はこっちが手配するから、あなたにもこの国で大人しくしといて貰うわ。」


 女王はそう言って近くの兵士に宿を取るように命令する。


 「何で!」

 「みんな国を出るのを我慢している。

  あなたの勝手な行動で、もしこの国の国民に被害が出たらあなた責任取れるの?」

 「…!」

 「正直あなたの命なんてどうでもいいわ。

  でもね、あなたの勝手な行動でもし、この国の人間に被害が出たらどうする?

  今は国を出ようとした人間にしか被害は出てないけど、次もそうかは分からない。

  もしかしたら、関係ない国民も殺されるかもしれない。」


 言い返せない。


 「勿論もしもの話。

  だけど、この国の女王として。

  国民を守る立場の人間として。

  1パーセントでも国民への危険が増える可能性があることなら、私は止めさせて貰うわ。」


 この人は俺に意地悪を言ってる訳ではない。

 この人はこの国の女王として、国民を守る立場として当たり前のことを言っている。

 国民への危険は出来る限り回避する。

 当然だ。当然の判断。

 だから何も言い返せない。


 「宿の手配完了しました。」


 1人の兵士がそう言いながら部屋に入って来る。


 「ありがとう。

  じゃあ、ハルナ・ファーシナル。私は他にやることがあるから。」


 女王はそう言って部屋を出た。

 女王が居なくなっても部屋にはまだほのかに香水の匂いが残った。 

 部屋には宿の知らせをしに来た兵士と俺の二人。

 兵士は俺の横に来て言う。


 「宿に案内してやるから来いよ。」


 金髪に長髪。

 チャラそうな見た目。

 俺より少し年上ぐらいの若い兵士だった。

 

 「ほれほれ、早く立ちな。」


 兵士は俺の腕を持って無理矢理俺を立たせる。

 そして、俺は王宮の外に連れられて宿に向かうことになった。

 

 

 

 

  



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