座学とか嫌だし遠足で置いて行かれるのはもっと嫌だ
駄文!
拝啓オタクの皆さんへ。異世界に行っても勉強はあるし、何なら元の世界の方が楽でした。
煌也は、遠い目をして布団に寝っ転がりながら、世のオタクたちに異世界転生の罠を想像で、手紙にするくらいに疲れていた。
なぜこんなに疲れているかというと、ステータスを確認した後。全員の職業の滅茶苦茶細かい歴史や能力を教えられたのだ。だが、クラスメイトや雄太郎はケロッとしていた、なぜ煌也だけがボロボロなのか。
理由は簡単、完全記憶のせいだ。
完全記憶は名前の通り覚えたいと思ったことを完全に記憶できるのだが、脳への負担が大きいのだ。
だから煌也だけがボロボロになった。それはもうチーレムにボッコボコにされた悪役位にボロボロに。
ガララララ
今頃だがこの世界の窓は何故か引き戸式である。襖にガラスをはめ込んだ感じの引き戸である。
中途半端に和洋折衷してるのもこの世界の特徴だ。
「だから~! なんで窓から来るんだよ!?」
「お疲れ~」
「無視かこの野郎!?」
煌也は疲れを忘れたように立ち上がって怒鳴る。それをどこ吹く風の様子で聞き流した雄太郎が真顔で煌也に追い打ちをかける。
「これからずっとこんな感じだぞ?」
結果から言おう、煌也は崩れ落ちた。それはもう綺麗に。
別に完全記憶使わなければいいじゃんと思うかもしれないが、そうでもしないと覚えられない情報量なのだ。具体的に言うと英単語100語位。
「……もう寝る」
少しでも回復するために煌也は早く寝ようと布団に入る。
「お、そうか。お休み~」
そう言って雄太郎は窓から戻る。なんで雄太郎は窓から来るんだろうか? と煌也はしばらく考えていたがすぐに眠りに落ちてしまった。
時間が経つのはあっという間な物でこの世界に煌也たちが来てから既に5か月が経っていた。
5か月間煌也達は座学と兵士との実技訓練を繰り返して着々とレベルを上げていた。
一番レベルが高いのは鈴木で71だが。レベルの最高が1000あるのでまだまだだ。
そして今の煌也と雄太郎のステータスがこれだ。
名前 茂村煌也(男) レベル68
種族 人間
筋力 50
魔力量3000
耐久20
俊敏力20000
職業 工作士・錬金術師
特技 工作・錬金術・茂村中二流
スキル 自動翻訳・高速移動・縮地・完全記憶
名前 北原 雄太郎(男) レベル70
種族 人間
筋力12000
魔力量5
耐久16000
俊敏力60
職業 解体士
特技 解体
スキル 自動翻訳・全ステータス倍化
煌也はレベルが上がってるはずなのに筋力が下がっている。
この世界のステータスはレベルが上がればステータスも上がるRPGのような感じではなく、ステータスが上がりレベルが上がるという方式だ。
もちろん鍛えればステータスは上がりレベルも上がるが。鍛えないとだんだん衰えていきレベルも下がる。
また、職業も上達によって変化したり増えたりするのも一般的なRPGと違う所だろう。
このステータスの増減や職業の設定はは煌也達の小説と同じだ。これを知った二人は、ワンチャンここ俺らの小説じゃね? と言っていたがそれは無いと言うことで決定した。
しかし座学で習ったこの世界の歴史が完全に小説の設定と一致した。本編で書いたことや本編で書かなかったこと、挙句の果てには没設定までもが。
これによって、二人はこの世界が小説の世界だと確信した。だがそれは何のアドバンテージにもならなかった。
煌也達が使えた魔法は他のクラスメイト達にも使え、しかも小説の時間軸のおよそ1000年ごと予想される世界。
色々な設定も1000年経てば変わっていくだろう。結局は煌也達も情報面ではクラスメイトと同じスタート地点だったのだ。
唯一、ステータスのスタート地点が違ったのは幸運だったのだろうか。
そのスタート地点から走る事5か月。クラスメイト達とのステータスの距離は縮まっていた。
ステータスの一部が1万を超える者も少なくなく、煌也に至っては俊敏以外すべて負けている相手もいるのだ。
ステータスがある程度高くなったのを見計らってか。
5か月間煌也達の実技訓練を教えていた"ガンギス・グルゴリ"騎士団長が、実技訓練中に煌也達を集めて言い放った。
「2日後に実際に魔物と戦ってもらう! そのために天空迷宮塔に遠征する! 全員準備しとけ!」
魔物。魔物は魔人族が退化した姿だと考えられている獣だ。魔が付くとおり魔法が使えるため手強い魔物が多い。だが基本的に迷宮と呼ばれる場所にしか生息しないため、一般人が出会うことはそうそうない。
天空迷宮塔は、名前の通り天高くそびえ立つ迷宮の塔で。現在214階層まで踏破されており。予想では1000層以上あると考えられている物理法則を完全に無視した建物だ。
ハッキリ言って煌也は面倒臭いと思った。
最近ただでさえ俊敏以外でステータスが勝った鈴木とその取り巻きに絡まれることが多くなり、返り討ちにしてるとはいえ疲れるのだ。完全記憶は脳が慣れてきたのかは分からないが常時使っても疲れることはなくなった。
だが無慈悲にもガンギス団長は遠征を中止することはなかった。
「ハァ……怠いわぁ……」
「煌也……目が死んだ虫みたいになってるぞ……」
光が無く。見ていると全て吸い込まれそうな目をした状態の煌也。
それを心配する雄太郎。ここ1か月でお馴染みとなってしまった光景の一つだ。
他には、鈴木が煌也に、当たらなければどうと言うことはない理論で返り討ちに会う光景だろうか。
もちろん。鈴木はそれで懲りるはずはなく。遠征中一回目の野宿で煌也に仕返しをするのだが……。
「……朝起きたら誰もいない、か……置いて行かれたのかよ……どうせやったのはあいつだろうしなんかイライラするから叫ぼう……クタバレ鈴木ィィィィィィィィ!!!」
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