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のじゃのじゃ転生譚 ~のじゃ語尾チート少女のあんまり冒険しない冒険者生活  作者: 七井
第四章 冒険者見習ののじゃのじゃ少女
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魔力印章なのじゃ

ハッピー節分(挨拶)。

今日の更新です。よろしくお願いしますね。


 見習いさんの先導で一階のロビーまで戻ってきたのじゃ。なんとなく道筋は取れたゆえ次には一人で行ける気がするのじゃ。

「おかえりなさい、ミチカちゃん」

「ただいまなのじゃ、メーレさん。この協会の建物は大きい上に複雑なのじゃのう」

 迎えてくれたメーレさんにギルマスから預かった木札を渡しつつ挨拶をして座るのじゃ。

「キョルトが合併したときに協会の支部も合併したんだけど、そのときに改築したらしいわね。一気に建設したんじゃなくて通常の業務をやりながら増築していった所為でごちゃごちゃしてるって先輩から聞いたわ」

「なるほどなのじゃ」

 計画性のない建築なのじゃ。


「では行く前にやっておった書類の続きなのじゃ」

「はい、準備は出来てるわよ。この印章は所内便でここに届くからそれで完成するわね」

 メーレさんは印章の受け取り用の木札を確認しつつそう言ったのじゃ。

 黙々と書類に記入していくのじゃ。わらわ個人が冒険者協会に提出する書類、冒険者協会と修道会の間で取り交わされる書類、同じく神殿との確認書類、収税に関連するので冒険者協会と修道会から市政庁舎と総督府に提出する書類、うむ、面倒くさいのじゃ。しかも控えを手で書く必要もあるのじゃ。コピー機がないゆえの。

 メーレさんとギルマスと話した内容などを話しつつ、しばし書類と格闘なのじゃ。うむ、今度メーレさんにも差し入れを持って来ねばならぬの。


「リーディンはここの神殿で登録すれば問題はあらぬと言っておったのじゃが、変なあやを付けられぬよう王都の神殿にも修道会を立ち上げた報告書と言うか挨拶状程度を送っておきたいのじゃ」

「うん、ここで書いて大丈夫よ。あとでここから王都に送る書類と一緒に駅逓で出せるようにしておくわ」

「感謝するのじゃ」

 これは自分で全部書く必要があるのじゃ。書き書き、なのじゃ。

 しかし、ジープラント王国内では郵便的なものがきちんと運用されておってよいのう。


 おそらく同じような書類仕事を商業組合でもせねばならぬのじゃ。神殿の登録書類にも印章を追加せねばならぬし、書類関係でもやるべきことは多いのじゃ。面倒くさいのじゃが、人任せにして逃れることも出来ぬゆえ覚悟しておくのじゃ。

 そうしておると小さい皮の袋が所内便で届いたのじゃ。

「あら、印章が届いたわよ」

「ありがたいのう。では早速書類を完成させていくかの」

「ほう、ちゃんとした正規の印章ですね」

 皮袋から小さい石柱状の角型印章、丁度書道で使う篆刻印の様じゃの、を取り出したところで背後から声が掛かり、吃驚したのじゃ。

「ベ、ベルゾ。いつの間に来たのかや。驚かせるではないのじゃ」

「今来たところですよ。実家に顔を出していたのでジーダルたちと別行動なんです」


 何というか、ベルゾは気配が薄いゆえ気づきにくいのじゃ! まあ言いがかりなのじゃがの。

「ほう、其方等も別行動しておることがあるのじゃな。で、正規の印章とはなんぞや」

「おや、ご自分で注文されたのではなく?」

「ギルマスからの贈呈品なのじゃ」

 意味もなくえっへんと胸を張るのじゃ。

「それはまた高い貢ぎ物を巻き上げましたね。正規の印章は魔漿石製ですよ。皮の袋に入っているのは皮が魔力を通さないからです」

「なんと!」


「大丈夫よ、ミチカちゃん。公費の使い込みじゃなくてちゃんとギルマスの私費から出てるから」

「そこかや!」

 ちょっと固まったわらわであったのじゃが、メーレさんの謎のフォローにつっこみを入れずにはおられぬかったのじゃ。

「それは兎も角、魔力を流して押印すれば印影が残ります。最初に魔力を流した者の魔力で印章が固着してそれ以外の人には使えません。正確には使おうとするには魔力を注ぎ込んで自分の魔力に書き換えることになりますが、それを行うと印章が乱れます」

「なので魔力を通さぬ皮の袋に入れて管理されておるわけなのじゃな」

「そうね。ミチカちゃんの年齢だと魔力印章なんて使ったことがある訳ないから先に説明しておけば良かったわね」


「普通の商家、商会ではインクで押す印章を使っていますし、役所でも部局の長以上でないと正規の印章なんて使いません。年齢に関わらず見たことない人の方が多いと思いますよ。貴族だけはどんな貧乏貴族でも持っていないとなりませんけどね」

「あはは。うっかりしてました。冒険者協会は魔漿石の独占的な取り扱いをしているんで結構魔力印章を使うんですよ」

 ほう、なるほどのう。そしてメーレさんの軽さは冒険者協会の事情に由来しておるのじゃな。

「ふーむ。興味深いものなのじゃ。しかし先ずは使ってみぬとの」

「そうね。じゃあ、この書類からお願い」


 メーレさんがさっと出した書類にペッタンなのじゃ。おお、すごいのじゃ。木札に魔法陣を転写するのと似た感じであるのじゃ。

「なにやら楽しいのじゃ」

 ペッタンペッタンと印を押すのは面白いのじゃ。

「これは修道会の印章なのじゃが、個人でも印影が必要になるようならこの魔力印章で作るのじゃ!」

 うむ、これなら多少高くても気にならぬのじゃ。

「A級以上の冒険者は工作室に魔漿石持ち込みで依頼すれば割引で作ってもらえるわよ」

「え、それは初めて聞きました」

 ベルゾが驚いておるのじゃ。メーレさんも逆にえっと言う顔をしておるのじゃ。


「A級に上がったときに説明されなかった?」

「そのときの担当はメーレさんでしたが?」

 メーレさんは目を逸らしてあらぬ方を見ておるのじゃ。

「あ、あれ。そうでしたっけー」

「そう言った優遇措置なぞについても規約と同じく資料室で調べればきちんと見れるのかや?」

「まとめられてるはずだわ。うん」

「ちゃんと自分の目で確認しておいた方が良さそうですね」

「そ、そうかなー」

 うむ、流石に擁護できぬのじゃ。


「話を戻すと、ミチカは魔力の流しすぎに注意した方がいいですね。魔力が強すぎると紙に穴があくことがあります。羊皮紙は皮の特性で魔力にある程度強いので大丈夫ですけど」

「きちんとした書類が未だに羊皮紙を使っておる理由もあるものじゃな」

「そいうことね。あ、ベルゾさん、D級の書類には魔力印章が必要になりますよ。三人とも持ってますか?」

「私は持ってますが、二人はどうですかね。それこそ協会で頼むよう言っておきます」

「あ、協会の工作室で作ると見た目はすっきりとした角型になるわ。格好のいい彫刻とか入れたいならちゃんと街の細工屋で頼んだ方がいいわね」


「D級への昇級は決まったのかえ? 決まったのなら祝わねばならぬの」

「申請が通るかは支部長が行く大会合で決まりますね。魔鉄札になるD級への昇級は重要な案件の扱いと聞きます。まあ祝ってくれようと言うことには感謝します」

 ほう、なるほどなのじゃ。

「級が数字から文字になるAと鑑札が魔鋼材に変わるDはちょっと特別なのね。なので申請が通っても最終審査があったりするわ」

 押印の済んだ書類を確認したり、提出部署に仕分けしつつメーレさんが注釈を入れてくれるのじゃ。

「ほう、大変なのじゃな」

「魔鉄以上の鑑札は人数も少ないですしね。でも実績的な問題はないですから大丈夫だと思いますよ」


 わらわの分の書類仕事は終わったゆえ働くメーレさんを横にベルゾと印章の話なぞを続けたのじゃ。

 見せてもらったのじゃが、ベルゾの印は蔦の巻き付いた石柱風に彫刻されておって印章の反対側、つまり石柱の上部には宝玉風に加工されて球状になっておるのじゃ。そう大きくない印によくこれだけの細やかな彫刻が施されておるものなのじゃ。

 印章自体は交差した剣と杖を蔦で囲んだで兼業戦士らしいシンプルなものになっておるのじゃ。

「外見に拘りがあるなら外注するだけの価値があるのじゃな。大した細工なのじゃ」

「こう言った印章を作る細工師は先程言ったように大きな商会の商会長や貴族相手の商売なんです。なんで細工は見事で当たり前ですよ」


「なるほどのう。ジーダルは簡単な角型で良いと言うか、派手なドラゴンの彫刻か何かを付けたがるか、どっちであろうの」

「子どもっぽいところがありますからねえ」

 そんな話をしておったらロビーに騒がしい声が入ってきたのじゃ。

「あっ、ミチカみっけー!」

「わーい、ミチカちゃん久しぶりー。あ、ベルゾのおっちゃんもいた!」

 サーデとマーセなのじゃ。三日ぶりゆえ久しぶりとは言えぬのじゃが、っと走り込んでくる速度が速いのじゃ。


お読みいただきありがとうございました。

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