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のじゃのじゃ転生譚 ~のじゃ語尾チート少女のあんまり冒険しない冒険者生活  作者: 七井
第四章 冒険者見習ののじゃのじゃ少女
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ギルマスの執務室にお邪魔なのじゃ

こんにちは。

一月最後の更新です。来月もよろしくお願いします。


「案内感謝するのじゃ」

 案内してくれた見習いさんに感謝なのじゃ。

 中庭はあらぬと思っておったのじゃが四階と五階には吹き抜けの中庭があったりと面白い構造の建物なのじゃ。見習いさんたちは所内便で書類や通達を持って走り回ることで建物内部の地図を把握するのがまず最初の仕事なのじゃそうな。言うだけあってなかなか複雑な経路になっておってわらわ一人では危なかったのじゃ。

 複雑な建物は火事が怖いのじゃが、そう言う安全思想はまだ発達しておらぬのかも知れんのじゃ。


 そしてギルマスの執務室なのじゃが、受付とはなんぞと思っておったのじゃがちゃんと受付があるのじゃ。

 執務室の前に控えの間なのじゃろう小ホールがあって、そこで秘書と事務員が八人ばかり仕事をしておるのじゃ。小ホールの入り口にはカウンターがあってそこが受付なのじゃ。

 案内してくれた見習いさんはそこに書類を渡し、逆にまた所内便を受け取ってすぐに駆けていくのじゃ。軽く手を振ると向こうも振り返してくれたのじゃ。


 見習いさんの用件が済んだところで今度はわらわがカウンターに木札を出すのじゃ。

 うむ、その耳に触りたいのじゃ。なんと受付の秘書さんはうさ耳の獣人なのじゃ。ギルマスめ、よい趣味をしておるのじゃ。髪の毛は明るい茶色なのじゃが、うさ耳は白く先端だけ茶色なのじゃ。

「こんにちは。今日のご用件は、はい、ああさっきすぐ会うって言ってた……。ええっと規則なので冒険者登録鑑札を確認しますね」

「こんにちはなのじゃ。すぐに会うと言われてわらわの方も驚いておるのじゃ。手数を掛けて済まんの」

 悪いのはギルマスであってわらわでないことを強調しておくのじゃ。言いながら胸元から鑑札を引き出し、うさ耳秘書に見せるのじゃ。


「はい、確認済みました。ミチカちゃんね。私は秘書のロージェよ、よろしくね」

 おざなりにせず、しっかり裏書きまで確認してからロージェさんはそう言ったのじゃ。ギルマスとは偉いものなのじゃな。

「こちらこそよろしくなのじゃ」

「執務室と応接室のどちらに通すのか解りかねますので訊いてき参ります。少しお待ち下さい」

 普通は面会に来た人や案件によって通す方がどちらか解るのじゃろう。わらわの予測では執務室なのじゃ。


「執務室へどうぞ、とのことです」

 すぐに戻ってきたロージェさんが微笑みながらそう言ったのじゃ。正解なのじゃ。うさ耳がぴょこぴょこ動くのがかわいいのじゃ。

「ありがとうございますなのじゃ。では行ってくるのじゃ」

「はい、どうぞ」

 他の秘書や事務員に黙礼しつつ小ホールを通り抜けて奥がギルマスの執務室なのじゃ。

「お邪魔するのじゃ」

 重厚な扉を抜けるとそこではギルマスと、ここにも更に三人ほどの事務員だか秘書だかもおって書類仕事をしておるのじゃ。

 なかなか大変な量の仕事をこなしておるのじゃな。これだけ大きい城市の冒険者協会を預かるというのは相当な重責であろうとは理解できるのじゃ。


「やあ、いらっしゃい」

 そう言うとギルマスは立ち上がって静かに歩いてきたのじゃ。分厚い絨毯で足音がせぬのじゃの。

 応接室ではないのじゃが、広い室内には衝立を立てた簡単な応接スペースがあってそこに連れて行かれたのじゃ。

「ふむ、食堂の豆茶とは違ってちゃんとしたお茶なのじゃの」

「あれはあれで美味しいのですが、ここにはまあ色んなお客さまが来ますのでね」

 まずは座って秘書が出してくれた茶を喫すのじゃ。西方風のお茶なのじゃ。茶器の置かれた応接セットの小卓は青貝細工で海と船が描かれておる、港町らしい一品なのじゃ。

 色んな客というのは要はお偉方も来ると言うことであろうの。その場合はここではなく応接室なのじゃろうが、この品を見ておると応接室の調度も相応のものであろうと推測できるのじゃ。


「ふむ、よい茶器なのじゃ。磁器は口触りよく茶を喫せるの」

 シンプルなのじゃが形の良い白磁のティーセットなのじゃ。磁器はあまり見ぬゆえ珍しいか高価かのどちらかなのじゃ。

「ええ、お気に入りなんですよ。使うことで風格が出てくる陶器の器もよいのですがね」

「よい趣味じゃの。そう言えば商業組合の組合長も茶にうるさそうであったがこの辺りでは茶会は重要なものなのじゃろうか」

 茶器を褒められて上機嫌であったのが組合長の話が出て厭な顔になったのじゃ。つかみ所のない人物じゃと思っておったのじゃが、特定の話題であればわかりやすいのじゃな。


「重要な話し合いの前段階として茶会をよく開きますね。茶葉、茶器、時には菓子を含めてもてなす側を値踏みしますからかなり重要です。そして上手に茶を淹れることの出来る執事やメイドは重用されます」

 淹れ方で言えば商業組合の方が上であったのじゃ。わらわがそう思っておることが分かったのかギルマスは少し苦笑したのじゃ。

「商業組合は取引のための会談や茶会の為に部屋を貸したりしますからね。その為に専属のお茶淹れの職人を雇っているはずです。こちらは秘書が事務仕事の合間に淹れているので」

 なるほどなのじゃ。確かにあちらのは金が取れる腕前であったのじゃ。


「業務柄、あっちはよい茶葉の販路もしっかり押さえていますしね。全く忌々しい」

「ふふ、其方等仲が悪いのじゃな。組合長もなにやら言っておった気がするのじゃ」

 組合長に対抗意識を燃やすギルマスが面白くて笑ってしまったのじゃ。双方ともよい歳のようであるのにのう。

「はは、お恥ずかしい。あいつとは結構昔からの腐れ縁でしてね」

「なるほどのう。まあそう言う相手がおるのも悪くないことなのじゃ」


 さて茶の味見もすんだし本題に、のその前に、なのじゃ

「そう言えば前回昼餉を馳走になったの。その礼なのじゃ。作り置きのもので悪いがの」

 そういいながら作り置きして収納空間に置いておったチュロスの紙袋をさも肩掛け鞄から取り出したように展開して出すのじゃ。茶を見てふと思い出しただけなのじゃ。

「ありがとうございます。これはお菓子ですか?」

「チュロスという菓子なのじゃ。独り占めせず皆で分けるがよいのじゃ」

 数は充分にあったゆえ控え室のスタッフまで行き渡るはずなのじゃ。

「僕は甘いものが好きなので一人占めにも惹かれってああーっ」

「ありがとうございます。お皿に入れてお出ししますね」

 ギルマスに最後まで言わせずお茶を淹れてくれた秘書のお姉さんがチュロスの紙袋を回収していったのじゃ。出来る女じゃの。


「美味しいですね。初めて食べたお菓子ですが食感が面白いですね」

「どういたしましてなのじゃ。そしてそろそろ来た本題なのじゃが、用件というより半分ぐらいは相談事なのじゃがの」

 茶をしに来たのではなく話に来たのじゃ。あまり無駄話をしておっては仕事をしておる人たちからの圧力が怖いと言うのもあるのじゃ。まあチュロスで少し懐柔できたと信じたいところなのじゃが。


お読みいただきありがとうございました。

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