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のじゃのじゃ転生譚 ~のじゃ語尾チート少女のあんまり冒険しない冒険者生活  作者: 七井
第四章 冒険者見習ののじゃのじゃ少女
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資料室は楽しいのじゃ

こんにちは。

本日も一話更新です。よろしくお願いします。


「失礼します。室長はおられますかー?」

「お邪魔するのじゃー!」

 おお! 今生でこんなに書物や資料があるところを見たことがないのじゃ。結局神殿の書庫もまだ入っておらぬしの。

 かなり広い部屋なのじゃ。鎖で棚と繋がれた皮や青銅の豪華な表紙のついておる本もあるのじゃが、簡単に紙を束ねただけの本や資料もあって様々な書棚や書類棚が並んでおるのじゃ。棚には羊皮紙の巻物もあるの。紙が流通しておるゆえ羊皮紙の巻物は逆に珍しいのじゃ。

 書見台も幾つも並んでおって、読みやすいように光明の魔法具が配されておるのじゃ。

 うむ、楽しいのじゃ。


 何人かおった職員や見習いの一人がメーレさんに返事をして奥の方へ室長を呼びに行ったのじゃ。まあ探しておる書類の書式に関してはメーレさんに任せておけばよいのじゃ。

 わらわはわらわで魔物の資料なぞを探そうと思ったのじゃが、手間を省くためこちらを見ておる女性職員の一人に話しかけることにしたのじゃ。

「済まぬのじゃが、ジープラント王国内の魔物や討伐対象となる獣の情報や分布のわかる資料はどこになるのか教えてくりゃれなのじゃ」

「はい。冒険者登録はメーレさんと来てるんだし済んでるかな」

 そう言われてわらわは登録鑑札のついておる革紐を引っ張り出して見せたのじゃ。この革紐ももうちょっと上等なものにすべきかも知れぬの。

 ちなみに職員さんは色気も素っ気もなく黒髪をアップにまとめた細身の女性なのじゃ。窓口嬢と違って接客せぬゆえか化粧っ気もないのじゃ。


 冒険者鑑札の他、商業組合と神殿の鑑札と警邏隊の通行証がじゃらじゃらとついておることに一瞬固まったのじゃが職員さんは鑑札を確認すると流れるように説明してくれたのじゃ。よく訊かれる内容であろうからの。

「こちらがマインキョルト周辺の魔物と獣の基本情報でこちらが最新の情報、これは近海の海の魔物の本。こちらが国内の全体的な情報ね。そして二年前の大氾濫以降の魔物の動向調査の資料がこっち。各地域の詳しい情報は別になるから必要になったら訊いてね」

 とりあえず全部無料で読める開架なのじゃな。冒険者が知りたがる基本的な情報は開架と言っておった気がするのじゃ。


 早速パラパラと流し読みするのじゃ。気になるものはしっかり読むにしろ今日はメーレさんのお仕事について来ておるだけなのじゃ。メーレさんは白髪の年のいった職員と話をしたあとその職員と奥の書庫に行ってしまっておるのじゃ。あれが室長であろうの。

 ふむふむ、魔物の基本情報なぞは莫迦でも、失敬、冒険者でも解るように懇切丁寧にしかし易しい文章で書かれておるのじゃ。冒険者協会の資料は親切なのじゃな。流石に動向調査の資料は易しく書き下されてはおらぬのじゃがの。

 海の魔物の本はもはや絵本に近いのじゃ。これはこれで楽しいのじゃ。


 筆記用具を使うてよいものか職員さんに訊いてみた所、資料を汚さぬようにとだけ言われたのじゃ。適当なものじゃの、とは思ったのじゃがありがたく気になった部分やらあとで更に詳しく調べようと思うた点なぞをメモするのじゃ。国内の地誌や歴史なぞ読みたいものは沢山あるのじゃが、次はなにを読むかのう、と考えながらメモをしておったらメーレさんが戻ってきたのじゃ。

 木札や羊皮紙の束を抱えておるゆえ探しておったものは見つかったのじゃろう。


「首尾は如何であったかの」

「上々よ、あとは下で書式を写して手続きね。ミチカちゃんは面白いご本はあった?」

 なにか、メーレさんにはすごい子どものように扱われておる気がするのじゃ。まあよいのじゃが。

「うむ、有意義であったのじゃ。そう言えばなのじゃが、あの先ほどロビーにおったような見習いの子ども等は読み書きできるのであろうかの?」

 メーレさんはわらわの問いに暫し考えるのじゃ。

「うーん、私が手続きした子等だと自分の名前をちゃんと書ける子が半分より何とか多いくらいだったわね」


 識字率は余り高くはないようなのじゃ。マーリィが教育を司っておった孤児院は参考にはならぬゆえ、この辺りの平均的な教育度は解らぬのじゃが。

「魔物の基本資料や海の魔物の本は子ども向けにも読みやすいゆえ、こう言ったものを教材に読み書きを教えることは出来ぬかの」

「えっ、確かに読み書きできた方がいいけど」

 メーレさんはちょっと驚いて考え込んだのじゃが、横から声が掛かったのじゃ。

「素敵な考えです! 是非しましょう!」

 資料室の職員さんなのじゃ。仕事柄、と言うよりは本が好きで仕事の方を選んだのかの、この人は。勢いに押されるまま読書人口を増やしたい気持ちを滔々と語られてしまったのじゃ。

「う、うむ。読み書きが出来れば仕事の選べる幅も増えるしの。見習いの見習いならば他の職業を考えることも出来るのじゃ。わらわもギルマスに言っておくゆえそなたもなんぞ提案書か何かをあげておくのじゃ」

「わかったわ」


「そうね。そうするといいわ。じゃあ、戻りましょう」

 うむ、了解なのじゃ。職員さんに礼を言って少し疲れた風のメーレさんと退散なのじゃ。

「はいなのじゃ。世話になったのじゃ!」

「失礼しますねー」

 資料でメーレさんの手がふさがっておるゆえ帰りは手を繋がず戻るのじゃ。資料を半分持とうかとは言ったのじゃが断られたのじゃ。


「ミチカちゃんが書いたり署名したりするところもあるからね」

 ロビーに帰り着いてカウンターの向こう側に回ったメーレさんはそう言うと書類を広げだしたのじゃ。主任が探しておった必要書類はすでにデスクに積みあがっておるのじゃ。書式を写して必要事項を各種書類を参照して書き込んだあと裁可を受けねばならぬようじゃの。

 覗き込みながらそう思っておると書類を抱えた見習いが所内便らしき木札をメーレさんに届けていったのじゃ。


「えーっと、さっきの面会依頼、ギルマスがすぐ会うそうよ。ギルマスの執務室まで行けるかしら」

 木札を確認した後ちょっと困ったようにメーレさんがそう言って木札を差し出してきたのじゃ。

「どの辺りか聞いておけば行けるであろう。それはいいとしても普通は面会依頼して三日かそこらは待たされると思うのじゃがの。しかも忙しいとか言っておったしの」

 ギルマスの執務室に入るときに執務室の受付に渡すらしい木札を受け取りながら疑問をぶつけたのじゃ。

「そうね。普通は三日くらい、忙しいとそれ以上先の約束になるわ。と言うよりその為に秘書が予定の時間割をしてるわよ」

 最後の方はちょっとお怒りが秘められておるのじゃ。


「うむ、それくらいはかかるものよな。なにやら商業組合の組合長も神殿のリーディンも行けばすぐ会えておったゆえ、わらわの方が間違っておるのかと少し心配になっておったのじゃ」

「……」

 なにやらメーレさんからじと目で見られたのじゃ。わらわとしては変わった人物が多いと思っておるのじゃが、わらわの方に原因があるとメーレさんは考えておるのではなかろうかの。あらぬ疑いなのじゃ。


「……。えっとギルマスの執務室は最上階の五階で結構遠いから案内させるわね」

 目と目で語り合ったのじゃが流されたのじゃ。メーレさんは書類や伝言の類をあっちの部署からこっちの部署へと運んでおる見習いの一人に声を掛けてわらわをギルマスの執務室に案内するよう頼んだのじゃ。

 建物の中で迷うほどのこともなかろうとは思うのじゃが折角ゆえ案内してもらうのじゃ。おっとそうなのじゃ。

「昼前の約束ゆえまだ来ぬとは思うのじゃがオルン等と約束しておるゆえもしわらわが戻るより早く参ったら少し待つよう言付けをお願いしたいのじゃ」

「わかったわ。こっちは書類を書いてもらうところを残して仕上げておくわね。いってらっしゃい」

 よし、ではギルマスとのお話なのじゃ。

お読みいただきありがとうございました。

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