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のじゃのじゃ転生譚 ~のじゃ語尾チート少女のあんまり冒険しない冒険者生活  作者: 七井
第四章 冒険者見習ののじゃのじゃ少女
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お茶問屋に行くのじゃ

こんにちは。

今日も一話更新です。

少しでも楽しんで読んで頂けるなら幸いです。


 さて、すぐ近所にあると言うリーダたちの実家の茶問屋でも覗いて行くとするかのう。神殿によく出入りすることとなると、この広場周辺の土地鑑があった方がよいのじゃ。

 まあ広場を挟んで正面の警邏隊の屯所を見逃さない程度にはの。

 かつては城市の中央広場だけあって彫刻や水場が配されたなかなか広い広場で、元々は城館であった警邏隊の屯所が南の一辺、それと向かい合わせの神殿とその付属施設が北の一辺となる四角形なのじゃ。神殿の方は広場に入ってくる街路が東西二本分狭いのじゃがの。

 東西の面には古い商会風の建物が並んでおるが、城館の移転に伴って動いたらしく半分ほどは営業しておらぬのが物寂しいの。そこのあたりはもはや中央広場ではあらぬと言う風情なのじゃ。


 このあたりの旧市街地は城館が移転して行ったゆえかどちらかと言えば閑静な地区なのじゃろう。馬車の往来も激しくなく、小さいわらわも安心して歩けるのじゃ。マインキョルトの馬車の往来の多さとその脅威はイセンキョーとは比べものにならぬのじゃ。いや、イセンキョーも交易の隊商が出入りする辺りでは結構な往来があったのじゃが、ここマインキョルトでは御者の鑑札制度を敷いてなお城市中を馬車がかよっておるのじゃ。

 この辺りの商店は店先に販売台を広げるよりも店内での商売が主のようなのじゃ。わらわのような見て回りたいだけの一見さんには優しくあらぬのじゃ。

 何の店があるのかは看板を見て確認しつつ、さっさと目的の茶問屋に入店なのじゃ。


「いらっしゃいませ」

 歴史のありそうなお店に入店なのじゃ。そんなに透明度は高くないのじゃが板ガラスの嵌まった飾り棚には茶の箱や缶がおいてあったのじゃ。まあ、輸入品の茶も扱っておるという以上高級店に決まっておるのじゃ。

 店員の挨拶とともに感じるのは茶の匂いなのじゃ。うーむ、よい雰囲気なのじゃ。入店時の挨拶をしてきた女性の店員に後ろから声をかけ、恰幅の良いおじさんが前に出てきたのじゃ。少しリーダと似たところがあるゆえこれが店主だという父親であろうかの。

「いらっしゃませ、えーっと。私が店主のズークと申します。ご用件は何でありましょうか」


 うむ、正解なのじゃ。

 ズークは丁寧な礼とともに挨拶をしたのじゃが、少し歯切れが悪く緊張感もあるのじゃ。どうしたのであろうかの。わらわが幼く見えるゆえの不審だけとも思えぬのじゃが、心当たりがあらぬのじゃ。

「うむ。小商いで悪いのじゃが少しばかり茶をあがないたくての。リーダをやっておる息子さんから紹介されて来たのじゃ」

 そう応えてリーダから預かった書き付けを手渡したのじゃ。そうすると丁度裏に下がっておった女性の店員が盆に茶器を載せて戻ってきたのじゃ。


「あら、お義父さま。椅子もお勧めしないで」

 そう言うと店内の一角にあるしゃれた小さい丸テーブルへ盆を置きわらわをいざなったのじゃ。

「どうぞこちらへ、えーっと。その、こちらへ」

 何故か女性店員も先ほどのズークと同じく口ごもるのじゃ。なんであろうの。そしてこの店員さんはズークとのやりとりからして跡継ぎの長男殿のお嫁さんじゃな。リーダの義姉さんと言うことになろう。

「ありがたく頂くのじゃ」

 とりあえず疑問はあるものの折角淹れてくれたお茶を喫するのじゃ。小さい茶器に注がれた色を見てまず驚きなのじゃ。


「ほう、緑茶じゃの。香りもよいのじゃ」

 これまでに見たお茶は発酵させたものが主であったからの。前世由来の懐かしさも感じつつ口にすると味わいは大きく違うのじゃ。

「ふむ、程良い甘みじゃの。淹れ方も上手なのじゃ、神殿でマードに頂いたお茶も上手であったがやはり茶は茶屋よの」

「ありがとうございます。まだ義母ほど上手く淹れることは出来ませんが神殿の方に褒めて頂けて恐縮ですわ」

 ん、なんで神殿のものと言われるのじゃろうか。確かにマードに茶を淹れて貰った話はしたのじゃが。そう思ったのじゃが、深く考える前に店主のズークが話しかけてきたのじゃ。


「マーティエでしたか。マーティエとの出会いをえにしを結ぶ神に感謝し、そして諸神に祈りを。家のものがお世話になったようでありがとうございます」

 安堵したようにそう言うのじゃが、つまりわらわの呼び方に迷っておったのかの。

「其方に諸神の恩寵あるようわらわも祈りを。二人の手伝いがあって聖務を無事勤めることが出来たのじゃ。世話になったのはわらわの方じゃの」

「勿体ないお言葉です。どうも息子はしゃきっとせぬ方でご迷惑をかけていないかよく心配しているのですよ」

 まあ、人柄は兎も角のんびりしすぎておるのは事実なのじゃ。と言うかの、ズーク等がなにやら悩んでおったのはわらわの呼び方であったと推測は出来たのじゃがその理由が、……。


「ああーっ!」

「ど、どういたしました?」

「大声を上げて失敬したのじゃ。神殿でお借りした法服をそのまま着ておることに気づいておらなんだのじゃ」

 全く納得なのじゃ。通行人なぞは派手な服を着た子どもだ、くらいに思っただけであるのじゃろうが、信徒であるズーク等にとっては神殿の儀式用の法服を着込んだ女の子どもなぞどう扱っていいものかそれは呼び名から悩もうものなのじゃ。

「ああ、そんなことですか。家のものも法服で行き来しておりますし構わないと思いますよ」

 ズークはそう微笑んで新たに茶を注ぎ勧めてくるのじゃ。


 うむ、ほっと一息、一服して落ち着いたのじゃ。

「確かにあつらえるにしても次に聖務を手伝う海の日までに出来はせぬゆえこれを着ることになるのじゃ。そう考えると問題はなさそうなのじゃ」

 と言うか、なのじゃ、帰るとき外套を肩に掛けて着せてくれたマードが何も言っておらぬゆえそれでよいに決まっておるのじゃ。戻って問うのも面倒ゆえそう決めたのじゃ。

「よいお茶じゃの。しかし、一緒に食べるものにあわせて甘みを入れぬ茶だけにして喫するのも良さそうに思うのじゃが」

 わらわ的には前世基準の心で緑茶に砂糖は要らぬのじゃが、それをストレートに言っても通じるかどうか分からぬのじゃ。


「はい、マーティエの様にお茶の味自体を評価下さるお客さまもおられまして一般売りのザラメを混ぜたもの以外に茶葉のみのものも商ってございます。お持ち帰りになれるようお包みしますね」

 うむ、分かるものがおる様なのじゃ。重畳重畳なのじゃ。そしてなにか和菓子っぽいものが作れぬか考えてみてもよいのじゃ。

 茶や茶器についてなぞを暫し歓談したのじゃが、ズーク等の先祖はもともと中央から来た商人の家系で、この辺りに茶葉の加工技術を持ち込んだのがその先祖だと言う話なのじゃ。その技術は中央や西方の発酵させて作る茶の製法じゃの。

 製法の異なる、発酵させておらぬ緑茶は船荷の茶より一段落ちる扱いをされておる地元の茶葉を売るために試行錯誤しておる新しい茶とのことなのじゃ。伝統に胡座をかかぬ研究熱心な姿勢でよいことなのじゃ。


 しかし伝統に甘えはせぬが大事にはしておるようで、中央から来た先祖の伝統を守って神殿の信徒であり続けておると言うことなのじゃな。その点も納得がいったのじゃ。

 納得がいったゆえそろそろ宿に帰るかのう、と思ったのじゃが緑茶の代金を支払おうとしたらお近づきの印に、と受け取ろうとせぬゆえリーダともやったやり取りを繰り返したのじゃ。少しだけ面倒なのじゃ。

 では、と言うことであがなった緑茶以外に味見用の試供品として色々な茶葉の包みまで持たされたのじゃがこれまで断りはせぬのじゃ。気に入ったものがあれば次にはあがなう約束をして辞したのじゃ。


 えーっと、明日がオルン等と買い物の約束じゃったの。マインキョルトでの生活は色々と盛り沢山で大変なのじゃ。

 宿に帰り着いたわらわはそんなことを思いつつ、法服を宿のメイドに脱がせてもらってついでに<洗浄>なのじゃ。うむ、老リーディンよ、すまぬが冒険者だけでなく家政婦匠合や宿屋組合からも生活魔法を習いたいものがやって来るようになると思うのじゃ。

 便利じゃものなあ。


お読みいただきありがとうございました。

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