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のじゃのじゃ転生譚 ~のじゃ語尾チート少女のあんまり冒険しない冒険者生活  作者: 七井
第四章 冒険者見習ののじゃのじゃ少女
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一仕事終えて茶を一服なのじゃ

こんにちは。

今日も一話更新です。よろしくお願いします。


 はーっ、一仕事終わったのじゃ。

「後はリーディンに報告して終わりじゃな。二人もご苦労様なのじゃ」

「マーティエこそ治療に生活魔法の伝授までありがとうございますー」

「食堂でお茶を準備した後リーディンを呼んで参りますね」

 三人で礼拝所を後にするのじゃが、礼拝所が無人になるのじゃ。あと一人マードがおるらしいのじゃが今日は休みのようなのじゃ。おっても人手不足は間違いないのじゃが。


「うむ、ありがたく存ずるのじゃ。マードは茶を淹れるのが上手いのう」

 マードの淹れてくれた中央風の渋い茶にジャムを少し落として喫しつつそう礼を言ったのじゃ。

「まあ。ありがとうございます。ではリーディンを呼んで参りますね」

 マードはくすくすと笑うと退出していったのじゃ。なぜ笑ったのかが分からず首をひねっておるとリーダが苦笑して言ったのじゃ。

「神殿では世俗のことを余り言わないものだとは分かってますがー」

 分かっておるとは思わなかったのじゃ。わらわは内心失礼なことを思ったのじゃが、それに気づくはずもなくリーダは続けたのじゃ。

「うちの実家の家業ですー。茶の問屋ですねー。これは高級な船荷ですがこの近辺でとれるお茶も商っておりますねー」


「なるほどなのじゃ。淹れるのが上手で当たり前なのじゃな」

 己の商売のものをちゃんと扱えるのは商人やその内儀としては当然なのじゃ。出来ておらぬものもおりはするであろうがの。

「そう言えば冒険者協会で喫したのは河原決明、うーむ野生の豆のようなものを使った代用茶であったがその手のお茶も扱っておるのかえ」

「はい、扱ってますねー。そう言う豆茶や香草茶の方が数は捌けているようですー」

 今喫しておる中央風のお茶は総督府などが格式の高いお客さまに備えて買うぐらいで基本売れないのじゃが、仕入れないと怒られる面倒なものなのじゃそうじゃ。その仕入れ在庫から神殿に奉納しておるのを今頂戴しておるわけなのじゃ。


「ふむ、このお茶はここで頂くとして土地の茶やその豆茶をあがないたいゆえ実家のお店の場所を教えてくれぬかの」

「はいー。マーティエに差し上げるよう連絡しておきますねー」

「いやいや、マーティエとしてではなく私人として楽しむために欲しいのじゃ。売ってもらわぬと困るのじゃ」

 即答するリーダにあわてて訂正するのじゃ。えー、でもー、ではないのじゃ。何とか納得してもらって略地図と書き付けみたいなものを受け取ったのじゃ。

 そう言うやりとりをしておったら老リーディンがやって来たのじゃ。


「おう、大分働いて貰ったようで悪いのう。感謝するわい」

 考えてみたら別に生活魔法の伝授の方は頼まれていなかったのじゃ。構わぬ程度のことではあるのじゃが。

「治癒の祈祷もでしたが生活魔法の伝授は本当にすばらしかったですー」

「ええ、すばらしく、驚きでしたわ」

 母子コンビからは大絶賛なのじゃが、わらわはいまいち理由が分からず首を傾げたのじゃ。

 するとマードが一歩出て話し始めたのじゃ。


「生活魔法の祈祷の祭文をわかりやすい言葉で説明してくださり、その詞を胸に置いて誦するように、なんて何十年も生活魔法を使ってきましたが初めて聞いた説法でしたわ。私も心を新たに諸神への感謝の心を持って生活魔法を使いたく存じます」

 おばちゃんマードがきらきらした目でわらわを見ておるのじゃ。やめるのじゃ、わらわはそんなたいしたものではないのじゃ。

 否定しにくいのでリーディンの方を軽く睨む、この老人がちゃんとしておればこんな熱狂的な目では見られないで済んだはずなのじゃ。

 すると老リーディンは思いの外真剣な顔をしておるのじゃ。


「深く感謝するぞい、マーティエ」

 重々しく礼を言うのじゃが、なにゆえか分からぬのじゃ。

「中央の古語で書かれた祈祷の祭文を儂らは読めるが、それに傲っておったようじゃわい。知識を占有した立場に座して読めぬ者への思い上がりがあったのじゃろう。無意識なものとしてもじゃ」

 えーっと、そんなたいそうな話であったのかのう。わらわは呆れ気味なのじゃが老リーディンはやはり真剣な顔のままなのじゃ。

 追放されてインテリゲンチャであることを捨てた自由の地平で新たな智を得たつもりであったのに、己がインテリゲンチャゆえの傲岸から自由ではなかったことに気づいた、みたいな話であろうかの。頑張って考えた推測なのじゃが。


「儂もまだまだ修行不足であることよ。生活魔法を伝授した者を臨時雇いのリーダにせよ、と申しておったのは伝授にそれだけのことをする故であったわけか。納得じゃわい。流石はマーティエじゃの」

 持ち上げすぎなのじゃ。そして皆真面目すぎなのじゃ。


「しかし、リーダではなく其方の修道会の臨時雇いの祈祷師にするがよいわい」

「はっ?」

 わらわの修道会とはなんなのじゃ。そう思ったわらわに銀色の鑑札と羊皮紙一枚を差し出してきたのじゃ。祝祷師として登録されたゆえ鑑札は分かるのじゃ。しかし、『アーネヴァルト修道会』とは一体なんなのじゃ。

 真面目とか評価しておったことは取り下げるのじゃ。


「自前の神殿を持つなら修道司祭としての資格が要るがの、そうでないなら祝祷師が総長で問題ないぞい」

「いや、そのようなことを言っておるのではあらぬのじゃ」

 納得のいっておらぬわらわに老リーディンが色々と説明を加えてくれたのじゃ。ふむふむなのじゃ。

 わらわが上納金を冒険者協会の方で天引きしてもらおうと言っておったのじゃが、どうやらそれは修道会宛になるそうなのじゃ。ただ、ついでに諸事を修道会につまりわらわに押しつけようと言う企みの気配も感じるのじゃ。ぬう。

 色々疑問や思うところは残るのじゃが、まあ已むを得ぬのじゃ。


 貰った鑑札には聖印と『マインキョルト正神殿聖使 アーネヴァルト修道会総長 一等祝祷師 ミチカ=アーネヴァルト』の文字が仰々しく刻まれておるのじゃ。わらわは見ておらぬが裏方の仕事をする従僕が一人おると言っておったゆえその者が急ぎの仕事で作ったのか細工師のところにお使いに走ったのかどっちかであるのじゃろう。

 ありがたいかどうかは微妙な気分なのじゃが取り敢えず他の鑑札と一緒に首に提げるのじゃ。段々ジャラジャラになってきておるのじゃ。


 少し気を落ち着けた後は老リーディンと一応昼食後に話していたエインさんの魔法具工房の話や冒険者相手の祈祷治療の会は出来ぬかと言う話、全般的な人手不足の話なぞ色々と話し込んだのじゃ。まあ修道会に押しつけようと言うのに関しては、名義をどうこうしたところで神殿の仕事ゆえ無駄な足掻きなのじゃ。諦めるがよいと思うのじゃ。

 今現在は閉めておる元孤児院の建物や聖職者用の宿舎なぞを修道会が使うなら好きにしていいとか、益があるようなないような提案も頂いたのじゃ。あと書庫の祈祷書は好きに読んでもいいとのことなのじゃが、今日はなにやら疲れたゆえ後日にするのじゃ。


 と言うことでおいとまなのじゃ。

 おばちゃんマードがいつの間にかリーダから話を聞いておったらしく、神殿で使っておる中央風の茶葉を幾らか包んでおっておみやげに持たせてくれたのじゃ。ありがたい心遣いなのじゃ。


 なにやら濃密な一日であった気がするのじゃ。

お読みいただきありがとうございました。

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