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のじゃのじゃ転生譚 ~のじゃ語尾チート少女のあんまり冒険しない冒険者生活  作者: 七井
第四章 冒険者見習ののじゃのじゃ少女
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神殿で昼食なのじゃ

こんにちは。

いつの間にやら一月も下旬ですね。

本日も一話更新です。


 祝祷師について訊こうとしておると昼餉が出来たことを伝えにマードがやってきたのじゃ。食中か食後の話題になったのじゃ。

 食堂も立派で食卓は彫刻が施された見事な黒檀のテーブルなのじゃ。棚などの調度もそれに見合った格のものが揃っておるのじゃ。しかし、食器の皿や盆は安っぽいのじゃ。カトラリーは古いもののようで磨耗しておるが元はよい品であったのじゃろう。

 うむ、昔からあるものは上等なのじゃが、新しいものは神殿の経営状況なりなのじゃな。


 食事の内容はおばちゃんが作ったに相応しいご家庭の煮込み料理って感じなのじゃ。パンが船乗りのパンと呼ばれる酵母パンなのは少し贅沢なのかも知れぬの。

 柿のような果物を切ったデザートもあるゆえなかなかと言えるのじゃ。

「ほう、では其方はマードの息子さんなのかや」

「ええ、そうなりますー」

 食事の席でその生活魔法の伝授も出来ないと言うリーダの紹介も受けたのじゃ。なんとおばちゃんマードのおうちの三男坊なのじゃと。アットホームな神殿なのじゃ。

 ぼんやりとしておるが気が弱そうと言うか人の良さそうな雰囲気なのじゃ。やる気があったり優秀だったりするリーダは中央の神学校へ行ってリーディンとなる教育を受けるのじゃが、見るからにそう言うリーダではなさそうなのじゃ。


 食後は茶を喫しながらちょっとお話なのじゃ。

「現状を考えるならば生活魔法伝授担当で臨時雇いのリーダを雇うべきではないかと思うのじゃ」

「確かにのう。だが人がの」

「生活魔法を習いにきた冒険者の内、魔術師かなんかで小器用そうな奴を冒険者協会経由の依頼で頼むのはどうじゃ。生活魔法を習いにくる時点でこの国水準でなら信徒扱いしても構わぬと思うのじゃ」

 思ってもおらぬことを言われたらしく、老リーディンは茶をげほげほとやっておるのじゃ。歳ゆえ大事にして欲しいものじゃな。


「なるほど。確かに言われればそれでも構わん気がしてきたわい」

 少し落ち着いてそう言っておるのじゃ。

「事務方も必要になるかも知れんのじゃ。生活魔法を中心とした魔法具工房を立ち上げて、神殿と提携したいと言っておる商人がおるのじゃ」

「ほう、これ以上忙しくしてこの老骨に鞭打つ気かのう」

「ゆえに事務方が要るわけなのじゃ。まあそれは商会の方と話をして、なんなら商業組合に人の斡旋を頼んでおくのじゃ」

 額に手をやりながら老リーディンは唸るように言ったのじゃ。

「ああ、そのときになったら頼むわい」

 忙しくなる前に対策を提示しておるというのにわらわが厄介事を運んで来おったような反応なのじゃ。全く失礼なのじゃ。


「五つの鐘から治療じゃ。鐘が神殿ではなく市政庁舎で鳴らされるのは未だに慣れぬわい」

「うむ。なにやら変な感じがするのじゃ」

 老リーディンとわらわが頷きあっておるとリーダが不思議そうに訊いてきたのじゃ。

「はー、他の国ではそうなんですか? 庁舎で鳴るものとばかりー」

「うむ。この神殿にも鐘楼塔があるのが外から見えたのじゃ。使われてはおらぬようじゃがの」

「と言うかの。儂が赴任してきたときには既に鐘がなかったんじゃが、この国の他の城市ではどうなっておるのかは知らぬわい」

 他の国、と言う言い方に疑問を感じたようなのじゃ。


「詳しくはないのじゃが、西方聖堂会も聖堂で鐘を鳴らしておるはずゆえこの城市の事情かも知れぬのじゃ」

「刻の鐘を鳴らし暦を作ると言った時間にまつわることは未生神である卵に関連する聖務となるの。ゆえにむしろ聖堂会の方が重視しておるはずじゃわい」

「じゃあ、なんで鳴らさないのかよく分からないですね。ただの人手不足が原因かも知れませんがー」

 リーダの推測が当たっておる気がするのじゃ。


「ま、それはよいわい。正式に伝授したから嬢ちゃん、じゃなくて女祝祷師殿か。えーっとのう、マーティエか。マーティエにお任せするぞい。相手方とのやりとりや魔漿石を握らせたりとかはリーダとマードが分かっておるから任せればよいわ」

 なんと、丸投げして来おったのじゃ。この老人は。

 マーティエというのは女祝祷師の呼び方じゃな。司祭がリーディンと呼ばれるようなものなのじゃ。職位による呼び方のみで個人名を呼ばぬのが神殿の決まり事なのじゃ。


「<治癒>の祈祷をするくらい構わぬと言えば構わぬのじゃが、この格好のままでよいのかえ?」

 わらわは一張羅の裾を摘まんでそう言ったのじゃ。わらわの着るものは仕立屋に行くまで無尽庵で仕立てた自作のこの服しかないのじゃがの。

「ああ、倉庫にリーダ用の長衣の予備があるじゃろ。丈は長すぎると思うがまあそれは帯のあたりで上げて使うとよかろうのう」

「ふむ、今回はそれとして服飾規定の決まり事があるなら書き付けでも寄越すのじゃ。自分で丁度いい丈のものを誂えるゆえ」


 何となくスカートを腰の部分でぐるぐると巻いてミニにしておった前世のことを思い出すのじゃ。それは楽しい思い出なのじゃが、現実的にはずるずるのだぼだぼで間違いないのじゃ。

「本来は自弁じゃからそうするのがよかろう。神殿の紋章か卵の意匠が入っておれば他はそれっぽければよいわい。リーディンだと職位やら所属する閥やらで細かな不文律があって面倒なんじゃが、リッティやマーティエなら見窄らしくなければ大丈夫じゃわい」

 リッティが男性の祝祷師なのじゃ。まあ、力を入れて誂えたところでたまに神殿で着るだけになるゆえ型通りのものにするのじゃ。いや、この城市では神殿関連の『型通り』が通用せぬかも知れぬゆえ、刺繍の意匠やなにやは準備しておいた方がよいのじゃ。


「そもそも祝祷師とはなんなのじゃ。冒険者に混じっておる祈祷使いが祈祷師と祝祷師、と聞いてはおるが逆にそれしか知らぬのじゃ」

「ふむ。一応神殿に属しておる聖使に含まれるが、半聖半俗とされることもあるの。神殿に籠もるのではなく人間じんかんをあって祈祷し祝福を授けるひじりがそもそもの姿じゃな。下っては己の修行のためであったり神への感謝の表現であったり、あるいは布教のためであったりと理由は問わず野で祈祷するものをそう呼んでおるんじゃわい」

 ふむ、どちらかというと神殿に組織化されなかった土着宗教の流れを汲んでおりそうな話なのじゃ。


「祈祷師と祝祷師の等級付けは所属する修道会の管轄じゃが、ここには修道会がないゆえ儂が勝手に使える祈祷から決めてただけじゃの。神殿ではマーティエと呼ぶが別段自分でなんと名乗ろうが構わぬぞい。魔術も使うなら魔導師やら祈念師やらと名乗るようじゃわい」

 修道会に属しておれば所属の修道会による奉仕活動としての聖務や貢納金の規定があるのじゃがジープラント王国内で機能しておる修道会があらぬゆえわらわは自由なのじゃそうなのじゃ。


 ちなみに冒険者として活動しておる祈祷師は概ね十分の一税相当を納めておるらしいのじゃが、それは冒険者協会で登録しておけば天引きになり同じく引かれておる税金に関しての控除に入るらしいのじゃ。老リーディンもやっておらぬ業務ゆえあやふやなのじゃ。

 冒険者協会にはこの国ではやっておらぬ業務であっても他の国でやっておるフォーマットがあるはずゆえ後で投げておくのじゃ。老リーディンは好きなときに適当に喜捨をしておけばよいと言っておったがこう言うのはちゃんとしておいた方がよいのじゃ。


「はいはい。法服を持ってきましたよ」

 話をしておったらその間におばちゃんマードが倉庫から祭儀用の長衣と領帯なぞの付属品をまとめて持ってきてくれたのじゃ。気が利くのう、流石おばちゃんなのじゃ。

「おお、すまぬのじゃ。マードに感謝するのじゃ」

「まあまあ。帯だけでは大変だから簡単に裾上げするわね」

 倉庫にいつからあったものかは知らぬが<洗浄>されておってすぐに着れるのじゃ。だぼだぼの長衣を今着ておる服の上からかぶるとすぐにマードが帯を巻き、針と糸を持って裾を上げ始めたのじゃ。

 主婦とはすごいものなのじゃ。


「では私は先に行って相手方の担当者と話をしておきますので、マーティエは五つの鐘でおいで下さいー」

「うむ、よろしく頼むのじゃ」

 リーダは出来ないことが多いようなのじゃが、相手方との定型的やりとりでもそう言う交渉担当が出来るならば問題ないのじゃ。

 リーダを送り出し、裾を上げてもらい腰の飾り帯の他首からかける領帯なぞも身につけさせてもらってマードに礼を言っておると老リーディンがなんぞ持ってきたのじゃ。


「大怪我の場合は週一の治療会なぞ待たずにすぐ連れてこいと言ってあるゆえ大体は<軽癒>で間に合う怪我だけのはずじゃわい。なんでマーティエにはもの足りん仕事じゃろうがこれを貸してやるわい」

 そう言うと短杖を渡してきたのじゃ。いやこれは錫杖と呼ぶべきかの。卵形をした銀細工に魔漿石が嵌まった豪奢な笏なのじゃ。

「これが焦点具なのじゃな」

「うむ、治癒の権杖じゃ。貸すだけじゃからな」

 くどいのじゃ。


 軽く魔力を流すと魔漿石に刻まれた魔法陣と銀細工に組み込まれた魔法陣が二重に薄い光の円を描くのじゃ。魔力を見れねば分からぬものなのじゃが、なかなかの美しさなのじゃ。

「うむ、よいのじゃ。では行ってくるのじゃ」


お読みいただきありがとうございました。

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