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のじゃのじゃ転生譚 ~のじゃ語尾チート少女のあんまり冒険しない冒険者生活  作者: 七井
第四章 冒険者見習ののじゃのじゃ少女
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老リーディンと話すのじゃ

こんにちは。

センター試験の季節ですね。受験生には頑張ってほしいものです。


今日も一話更新です。


「この神殿の数少ない収入源なんだがのう。海の日に港湾協会、剣の日に城市の警邏隊との約束で祈祷治療をやっとるんだわ。しかし神殿に人が来るようだと完全に手が回らんのよ」

 この老リーディンの他は生活魔法の伝授をこなせないリーダと通いのマードが二人かえ。それはきついのじゃ。しかしのう。

「残念ながらわらわは治癒治療の類の祈祷は知らぬのじゃ。祈祷書を読ませてもらえるとは聞いておるのじゃが」

「うむ、人寄せに他の国より制限が軽くなっておって聖使でなくとも布施次第で祈祷書をいくつか出せるようになっておるが、流石に『癒しと慰めの祈念詞』は解放されておらん」

 しかしな、と老リーディンは続けたのじゃ。

「儂が祈祷するのを見たり聞いたりしても手伝いであれば問題ないし、もし祈祷が使えるなら資格があるものとして働いてもらっても構わんのう」


 それはなんというか願ったり叶ったりの条件なのじゃ。

「しかし、それでは対価としてどれほど働けばよいのか分からぬのじゃ」

 老リーディンががははと豪快に笑ったのじゃ。何事なのじゃ。

「見取りで祈祷をれることを簡単に余人に言うものではないぞ」

「そういうものなのかえ。正直わらわはそう言う作法にも疎いのじゃ」

 わらわはちょっとむっとして言い返すのじゃ。それを少し面白そうに笑って老リーディンは続けるのじゃ。

「まずな、魔法陣を相手に見えんようにするのは大事だの。儂は戦闘魔法の実践なぞしたことはないんじゃが、なんの魔法を使おうとしているのか相手に分かるのはありがたくないのだろうのう」

 それは確かにそうじゃの、と同意したら一番良いのは頭の中で構築してしまうことなのじゃがと言いつつ魔法陣に別の模様を被せて読めなくする手法と手や袖で隠す手法を実演して見せてくれたのじゃ。

 ありがたいのじゃ。


 相手に魔法を読ませないことと盗らせないことを踏まえた手法なのじゃな。まあ基本は脳内構築なのはよいのじゃが、魔法使いというかここ最近見ることもある魔術師の服装が袖が広くひらひらしておった理由も分かって満足なのじゃ。

 ついでに魔法発動上のテクニックを何手か教えてもらったのじゃ。実践派ではないと言いつつ年の功はあるのじゃ。侮れぬ話なのじゃ。

「これでまあ今日の分のお手伝い賃だの。今日は剣の日で昼食の後は怪我人が来ることになっとるんじゃわい」

 こう言うところも侮れぬのじゃ。


 老リーディンはマードを呼んでわらわの分の昼餉も頼んだのじゃ。そのとき気づいてくれたらしく茶を持ってきてくれたのじゃ。ただ、渋いのじゃ。ゴドノローア卿の屋敷から回収した茶葉も渋かったゆえ中央風なのかの。盆に一緒にジャムの小さな壷がのっておったゆえ入れると丁度良くなったのじゃ。

「中央風じゃの」

「儂等は皆中央で学ぶ期間を持つからのう。神殿で出るのは大概こうじゃな。ただ、正確には南方茶らしいぞい」

 茶を喫しながら老リーディンが答えるのじゃ。

「ほう、そうなのかえ」


 茶話もよいのじゃが、良い機会ゆえ祈祷についていくつか訊いておくことにするのじゃ。

「以前、わらわの使つこうた祈祷の名が余のものには解らんようじゃったのじゃ。意味は伝わったようなのじゃが」

 ジーダルやオルン等が豚鬼オーク戦の話をするときあの魔法とか力が出る魔法なぞと表現しておったのじゃ。幾たびかそう言うことがあって名称が共有できておらぬことに気付いたのじゃ。

「そりゃ祈祷の正名は聖字だからよ。聖字を学んだもの、祈祷を使えるものでないと覚えることはできんわい。字に意味が押し込まれておるから聞くだけで意味は分かるがのう」

 わらわはマーリィから習ったとき、単に漢字のような表意文字じゃと思うておったのじゃ。そんな魔法的な文字であったとはの、ちょっと驚きなのじゃ。


「生活魔法の正名程度なら意味と言葉がほぼ重なるから共有できるんじゃがのう。と言うか、いったい何の祈祷を唱えたんじゃ?」

「あの時使うたのは<地回操循>と<賦活>であったかの。<雷弾>は共有できておった気もするのじゃがちょっと違う言い方であったかも知れぬのじゃ」

 正直に答えると老リーディンは目を見開いて固まったのじゃ。そう言えば昨日は冒険者協会のギルマスを固めておったのじゃ。これはあれなのじゃ、わらわまたまたなんとやらなのじゃ。

「くっくっく、全く面白いお嬢ちゃんだのう。<地回操循>なぞ実用に耐える祈祷ではないぞい。それに『生命の神々への賛歌』はもう陣を伝えるものがおらんってことになっておるわい」

 回復が早いのじゃ。しかし実用に耐えぬとは予想外の言葉なのじゃ。便利に使っておるのにのう。


「魔力の消費が大きすぎてまともに使える奴はおらぬと聞いておるのう。大地の神を中心に崇める教派の連中が大地の力の流れを感じ一体化する、とか言う目的で祈る儀式的な祈祷じゃとか」

 ここで言う教派は神学的思想哲学の話ではあらぬのじゃ。単に神殿に取り込まれた土地の古い信仰がそれぞれの土地で色濃く残っておるものを指す言葉なのじゃ。

「死期を悟ったその教派の高位者は<地回操循>で自分の墓を作りそのまま魔力を全て大地に捧げて自己埋葬をするとか聞いたことがあるわい」


「<掘土><埋土>の二つを再構築すると<操地>になると言われておったのじゃ。わらわはその宿題をこなそうとした結果<地回操循>になってしまっただけなのじゃ」

「要素の詰め込みすぎだのう。宿題の答えは書庫にあるはずじゃ、あとで確かめればよいわ」

 <操地>が書庫にあることを教えてくれたのじゃ。あとで確かめさせてもらうのじゃ。

「魔法陣の構成が多少違っても同じ祈祷になることもあれば同じ魔法陣でも祭文が違って効果が少し違う祈祷になる場合もあるのう。まあそんな大物の祭文を祈れて正名の聖字を拾えるとは大したもんじゃわい」

 褒めておるのか呆れられておるのか微妙なラインなのじゃ。まあ褒められておると言うことにしておくのじゃ。


「ふふん、わらわもなかなかやるのじゃ」

「なかなかどころかやり過ぎだのう。<賦活>は言ったように失伝しておるはずの祈祷じゃ。うかつに神殿関係者の前で使わんようにの」

 老リーディンはいいのであろうかのう。まあよいのじゃ。

「生命の神々は元々西方域の神々であったからのう。本来失伝しても西方域の神殿に魔法陣が伝えられておったはずなんじゃが西方域の神殿は大体壊されておるからな」

 なるほどのう。そして西方聖堂会絡みはわらわにはよく分からぬゆえ秘するべきなのじゃ。


「しかし、さっきは見取れと言ったがのう、<地回操循>を使いこなすという魔力ではやらかす可能性があるんじゃ。正式に教えるしかないが」

 うーむ、と考える振りをしたのじゃ。そして胡散臭い笑顔で取引を言って来おったのじゃ。

「どうだ、<賦活>の陣と祭文と引き替えに『癒しと慰めの祈念詞』をきちんと伝授してやろう」

「笑顔が胡散臭いのじゃ。だが、まあ正規に学べるのは悪い話ではないのじゃ」

「取引はついでに言ってみただけだが、そのまま見取るとやらかすのも事実じゃぞ」

 なにをやらかすというのじゃろう。よくやらかす身としては少し興味があるのじゃ。


お読みいただきありがとうございました。

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