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のじゃのじゃ転生譚 ~のじゃ語尾チート少女のあんまり冒険しない冒険者生活  作者: 七井
第四章 冒険者見習ののじゃのじゃ少女
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商業組合での会談なのじゃ

こんにちは。

寒いですね。風邪など召さぬようお気をつけ下さい。


「すいませんっ。少々お待ちを」

 窓口のお姉さんがわらわの預けた紹介状の束を持って上司の方へ小走りで去っていったのじゃ。

 鑑札はあるにしろ年齢のことがあるゆえ一応一筆貰おうとメーレさんに頼んだらギルマスの署名がある証文が出てきたのじゃ。それに加えて紹介状が六通を重ねて出したところ、商業組合の窓口嬢に逃げられるという事態に至ったわけなのじゃ。

 わらわは悪くないのじゃ。


「お待たせして申し訳ありません。こちらへどうぞ」

 戻ってきたお姉さんにカウンターではなく応接室らしきところへ案内されお茶が出たのじゃ。うむ、これは冒険者協会食堂の茶と違い真っ当な茶葉なのじゃ。淹れ方もよいの。

 お茶を飲みながら少し待つと恰幅の良い男が先ほどのお姉さんを連れてやってきたのじゃ。


「お待たせしました。組合長のバッフォル=ゾールトです。よろしく頼みます」

 年の頃は五十代であろうか。なかなか威厳のある男振りなのじゃ。

「いや、お茶を楽しませて貰っておったゆえ待ってはおらぬのじゃ。良い茶葉なのじゃ、そして淹れ方も良く感服したのじゃ。わらわはミチカ=アーネヴァルトと申す、こちらこそよろしく頼むのじゃ」

 茶を褒めると相好を崩したのじゃ。この組合長はお茶好きなのかの。

「マインキョルトどころか国内でも知られた商会からの紹介状を束で持ってきたのがこのような可憐なお嬢さんとは驚きですな。皆口を揃えて料理を褒めておりましたが」


 相手をわらわのようなお嬢ちゃんと言いながらも舐めたところが感じられぬのじゃ。やり手よの。甘く見てもらえた方がやりやすいのじゃが。

「うむ、その料理がらみでの。船荷で来おる香料や香辛料なぞをあがないたいのじゃ。料理が商売になるかはわからぬのじゃが、そのためにもあがなえる種類と量は押さえておきたいのじゃ。そう言うことを相談したくて来たわけなのじゃ」

「なるほど、しかし余り利用法が広まっていませんので胡椒以外はそんなに取引量が多くないはずです。利用法を広げてくれれば当組合や調理師匠合が喜ぶでしょう。それで取引が増えればそれを扱う商人もですな」


 ふむふむなのじゃ。

「ふむ、この城市に参るまでに一度ルセットを売っておるのじゃ。このような都会で通用するのかはわからぬが調理師匠合も交えて見て貰うのも良いと思ってはおるのじゃ」

「なるほど、それはよいですな。あれだけ紹介状に書かれている料理は是非私も食べてみたいものです」

 販売実績があることを含めて無償提供はせぬことを告げたのじゃ。向こうも想定の範囲内というところなのじゃ。

「それなのじゃが、石窯なぞを設置しても構わぬ倉庫か作業場を確保したいのじゃ」

「店でなくてよろしいのですか?」

「まだその段階ではないゆえの。食材を含めて荷物や材料を置けて、調理ができればよいのじゃ。調理に火を使うことを考えると倉庫は難しいかも知れぬが、店ではないゆえ場所は問わぬのじゃ」


「ふむ、お店は私たちに味を見せてから、と言うことですね。楽しみにしておきます。そう言った倉庫や作業場の物件情報をまとめておくよう頼みます」

 最後の頼みますは後ろに控えている窓口のお姉さんになのじゃ。しかしなかなかハードルをあげてくる奴なのじゃ。

「そして香辛料の類に関しては卸からも問題なく購入できるよう鑑札を出しましょう」

「香辛料の類は薬や染料として使われることもあるゆえ薬種問屋や染料問屋にも使えるよう頼むのじゃ」

「わかりました。しかし薬は量を買おうとする場合薬不足を招かないか調合師錬金術師匠合から調べが入るかも知れません」

「ふむ、それは道理じゃの。無論構わぬのじゃ」


 スパイスは大概そのまま漢方薬になるのじゃ。中でもターメリック、つまりウコンは染色にも使うし漢方薬にも使うのじゃ。漢方胃腸薬をカレーにかけると味が深くなると主張しておるものがおったが、スパイスを増やすという理屈は理解できぬでもないのじゃ。やらぬがの。

 ふむ、カレーを作れるほど香辛料が手には入れば嬉しいのじゃが、どうであろうかのう。


「ああ、そう言えば冒険者協会の買い取りカウンターでこちらの方が高く買ってくれるかも知れぬと言われたゆえ持ってきたものがあるのじゃが、ここの買い取りはどういう風になっておるのじゃ」

「組合に参加している各匠合や工房に持って行った方がよいものもあるのでまずは窓口で相談してください。組合も買い取りや季節ごとの競売への登録をしていますが。今回は私も目利きをしますのでどうぞここで」

 どういうものを持ってきたのか試されておる気もするがまあ仕方ないのじゃ。しかし競売にはちょっと興味があるのじゃ。面白い出物なぞあるのじゃろうかの。


「これは全く疵がありませんね」

「まあそう言う魔法で狩ったゆえの」

 同じところが気になるものじゃの。いや買い取り査定という同じ作業ゆえ当然なのじゃ。

「魔法についても紹介状に書いてありましたね。うん、いい品ですね。深暗の森の西は狼より熊が多い上に何年か前に南西で大氾濫があったのでそれで熊がかなり移動して今では王国内ではこれだけの狼の毛皮は手に入らなくなっています」

 ほう。と言うかそう言う情報を冒険者協会の資料室で調べておこうと思っておったのじゃがすっかり失念しておったのじゃ。


「しかし品薄であるからと言って需要があるとは限らぬ訳なのじゃが」

「そうですね。しかしこれだけの毛皮ならそのまま敷物にするだけでも充分需要があります。競売をお勧めしたいところですが、組合の買い上げでお願い願えませんか?」

「ふむ、構わぬのじゃが」

「総督さまに献上する冬の挨拶に良さそうです。では買い取りはこの程度で」

 なるほどのう。確かに広げると見栄えも良いのじゃ。

「すまぬがこの地方の相場がわからぬのじゃ。ゆえにそちらを信じて任せるしかないのじゃが」

「あっ。失礼しました。ではこちらで」


 出してきたお値段は確かに冒険者協会よりお高いのじゃ。満足して十枚全部買い取ってもらったのじゃ。

 そう、十枚中六枚売っておったので残りは十枚なのじゃ。無論収納空間内の在庫から補充しただけなのじゃ。

 お姉さんが男性職員を呼んできて毛皮を運び出してもらい、すぐに代金が机の上に置かれたのじゃ。即金即決でよいことなのじゃ。


「ニウストラ商会のエインさんから新しい魔法具工房を立ち上げるにあたって相談役に就いて貰うのできちんとした取引の出来る鑑札を出すように言われています。年齢的な問題は冒険者鑑札が正規のものですのでそれに対して出す、と言う形で問題はありません。冒険者協会のあの野郎、失礼支部長からの証文も来ておりますし」

 エインさんは本気なのじゃな。まあよいのじゃ。

「それで問題がなければこちら」

 と横に控えたお姉さんを指し示したのじゃ。

「ミルケに手続き等の説明を任せますがよろしいでしょうか」


「無論構わぬのじゃ。組合長の忙しい時間を頂き感謝いたすのじゃ」

「いえいえこちらこそ知遇を得られて幸いでした。料理の件楽しみにしております」

 握手を交わして組合長は退室なのじゃ。



お読みいただきありがとうございました。

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