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のじゃのじゃ転生譚 ~のじゃ語尾チート少女のあんまり冒険しない冒険者生活  作者: 七井
第四章 冒険者見習ののじゃのじゃ少女
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ギルマスの奢りでお昼なのじゃ

こんにちは。

今日も一話更新です。よろしくお願いします。


「問題はミチカさんの登録鑑札なんです」

 ギルマスはそう言うのじゃが、ジーダルたちも首を傾げておるのじゃ。

「見習いの見習い、なんて呼んでますが十二歳より前に振り出している鑑札は十二歳になるときに渡す見習い鑑札とは別物、と言うか本物の冒険者登録鑑札なんです」

「すまぬのじゃが、よく分からぬのじゃ」

 ギルマスは当然という風に頷きしゃべり出したのじゃ。

「そうですね。そもそもから説明していきましょう」


「おい、そろそろ昼時だぞ」

 朝から登録に来て、もうそんなに経ったのかえ。いやさ確かにいろいろあったのじゃ。

「あらっ、ギルマスの奢りでお昼だなんてうれしいわね、ミチカちゃん」

「はいはい、分かりましたよ。確かに座って話したいですしね」

「年だしな。それとな、ミチカ。冒険者の重要な心得だ。ひとつ、ギルマスに飯をたかる機会は逃すな」

「心得たのじゃ!」

「信じないでくださいね」


 そんなやり取りをしながら階段を二階に上がるのじゃ。ついて行くと結構広い食堂に着いたのじゃ。冒険者も使えるのじゃが大体は職員だけしかおらぬそうなのじゃ。酒がないゆえであろう。

 メニューは定食のような感じじゃの。パンと雑穀粥が選べる程度なのじゃ。パンと温野菜のサラダ、塩漬け肉とキャベツのスープ、そして洋ナシを剥いたものが二切れなのじゃ。

 前世でコーンドビーフとキャベツを煮た料理を食べたことがあるのじゃが、あれに似ておるのじゃ。まあどうでもよいのじゃ。


「ありがたく頂戴するのじゃ。食餐にありて神々を讃え、日用の糧を戴き諸神に感謝を奉るのじゃ」

「どういたしまして。いただきましょう」

「お、おういただくぜ」

 つい身についた習慣で食前の祈りまで口に出してしまったのじゃ。まあ良いのじゃ。セイジェさんとベルゾも食前の挨拶をして食べ始める。

 まあ普通の味なのじゃ。大量のキャベツと共に煮ておるゆえ塩漬け肉の塩辛さも薄まっておるのじゃ。ただ、やはり膨らんだパンはおいしいのじゃ。うむ。


「しかし、ロビーから行ける酒場ではないのじゃな」

「あー、そうですね。それの説明はまたあとで」

 食後にはなんと茶が出たのじゃ。茶とは言ってもこの香味は茶葉ではなく河原決明かなにかなのじゃ。悪くないのじゃ。

 脳内お買い物リストに記載しておくとするのじゃ。

「では、改めてお話しします。十二歳の見習い年齢前に鑑札を発行するのは特例です」

 まあ当然なのじゃ。


「しかし、特例でも出来ることなら他の、商業組合なんかもしてるはずでしょ」

「支部長、おそらくミチカと前提が共有できていないです」

 わらわがいまいち分からなかったらベルゾがちゃんと対応してくれたのじゃ。

「ミチカは特例で珍しいと思っているのでしょうが、最近は大量、とまでは言いませんが相当数発行しているはずです」

「ほう、確かにちょっと驚きなのじゃ」


 ベルゾの説明によると国情の違いが影響しておったのじゃ。ストールベリ王国では神殿が孤児院を運営しておったのじゃが、この国では神殿にその資金と人力があらぬのじゃ。この広い城市に公的資金が僅かばかり支給されておる孤児院が二つあるのみで、孤児院としてはしっかりしておる孤児に関しては十二歳を待たず冒険者協会に送り出すしかないそうなのじゃ。

 この背景にはジープラント王国が北方諸国群における奴隷制廃止の旗手的立場にあることもあって、廃止前であれば人買いに商品として養育されていたものが今は孤児になっておる、と言うことなのじゃ。


「それは王国なり行政府なりが責任を持たねばならぬのではないかの」

「間違いなくそうです。個人がそれぞれに対応しても手に余る事案ですので。しかし、去年に総督さまが代わって少しはましになっていはするのですよ。これでも」

「孤児院の運営をしている人等はチンピラになるくらいなら冒険者にって言ってくれてるんだが、ミチカが絡まれたような奴らに捕まるとチンピラの手下になるのと変わりはしねえ」

 ああ、そっちと繋がる話なのじゃな。

 職人が徒弟見習いを前提として養い子にしたり、家政婦匠合の合長が同じく養い子にしてメイド教育を施したり、と言う事例に対して実質奴隷ではないのかと取り調べる前に子どもの受け入れ先を広げるべきなのじゃ。


「ちなみにさっき言ってました直営酒場はそう言う見習いの見習いとして受け入れた子どもたちの生活を支えているんです。第一義は街の一般の人に迷惑をかけないため、ですがね」

 第一義は荒くれ者に過ぎない冒険者が街の酒場で問題を起こして苦情が来るより自前で安い酒を出す酒場を運営した方がましだ、と言うことらしいのじゃ。酒も肴も安いが不味い、と言うスタンスで金回りが良くなった冒険者は余所に行くのじゃが、金があるなら問題を起こしても自分らで解決できるであろうと言う訳なのじゃな。


 そして子どもたちのため、というのはまず上が宿になっており三段になった棚の寝床、ベッドとは呼べぬが三段ベッドじゃな、が一部屋に四つ詰め込んであって一番上段は銅貨一枚、他は二枚で泊まれ、毛布は別料金で銅貨二枚で貸してくれるのじゃそうな。もの凄い安さなのじゃ。

 宿屋組合との協定で冒険者鑑札を持っているものしか泊めないと決まっておるそうなのじゃ。

 そして酒場で朝夕の食事がそれぞれ銅貨二枚で食べられるのじゃ。これも安いのじゃ。まだざっとしか市場を見ておらぬのじゃが大都会であるマインキョルトは食料品がお安くはないのじゃ。


 酒場の残り物などをまとめて煮込んだような食事は味は兎も角量はあるとのことゆえわらわの育った孤児院よりましかも知れぬの。まあ酷かった記憶ばかりなのは地上げの所為なのじゃが。

 そして酒場は飲食店協会から認められておるゆえ冒険者以外も飲み食いに来たりするそうなのじゃ。認められておるのは他のまともな酒場は冒険者酒場の安い酒と食べ物を求めるような連中に来て欲しくないからなのじゃろう。

「他の飲食店から睨まれたら困るんで冒険者酒場の食べ物を改善しようとしたりはするなよ」

「ほう、ミチカは料理が上手なのですか」

「まあそのあたりは商業組合にも顔を出すゆえ場合によってはあっちでルセットを売ったりなんだりする事になろう。香辛料や調味料で手に入れたいものもあるしの」


「なんにせよ、あの酒場があるおかげで見習いが猫洗いやちょっとしたお使いのお駄賃程度の報酬で食べ物と寝るところを確保できるわけね。ミチカちゃんのような女の子の宿泊場所としてはお勧めはできないけど」

「なるほどのう。それで成り立っておるのに破落戸の手先として危険なことを強要しようなぞ、ろくでなしがおるものじゃの」

「ですが、冒険者協会で受け入れることが出来る人数には当然限りがありますし、抜本的改革が必要なのも間違いないです」


 ふぅ、もともとは何の話であったかの。結構話し込んだのじゃ。

「で、ミチカの冒険者登録鑑札のことですね」

「ああそうでした」

 そうだったのじゃ。ついでにお茶をお代わりしてくるのじゃ。

 茶菓子がないのは残念なのじゃ。スコーンをベーキングパウダーでなくパン種で焼くことは出来るのかのう。やったことはないのじゃがそれっぽくは出来る気がするのじゃ。


「ああ、そう言えばちゅろす、すっごく美味しかったわ。ありがとうね」

「うむ、あれは美味であった」

 セイジェさんも同じ様なことを考えておった様なのじゃ。ベルゾも感慨深そうにチュロスの美味しさを述べる。まあ気に入ってもらえて良かったのじゃ。

「調理する場所が確保できたらまた作るのじゃ」

「うふふ。お裾分けを期待しておくわ」

 石窯を確保することを考えるべきかの。少なくともクッキーはそれで作れるようになるのじゃ。


お読みいただきありがとうございました。

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